【2020市民公開web講座】フレイルについて

みなさんこんにちは 国立長寿医療研究センターの荒井 です 今日はフレイルについてお話を させていただきたいと思います このスライドは これまでの 高齢者人口の割合を示しています 現在高齢化率は約29.4%となって おります この傾向はますます 進行いたしまして、2040年ごろには 国民の約4割の方が、65歳以上の高齢者 になるというふうに予測されています。 働く世代もどんどん減っていき ますし子供の世代も減ってまい ります すなわちますます少子高齢化が 進むということになります これからの変化としましては特 に75歳以上の高齢者人口が増える ということでありまして いわゆる前期高齢者の方は減少 傾向にあります 高齢化とともに介護を必要とする 方々の数も増えてまいりまして 2000年に介護保険制度が始まった ころには約200万強の方々が要支援 または要介護の認定を受けてお られ ましたけれども 現在では600万以上の方々が要支援 または要介護を受けているという 状況 でこの数もどんどん増えている ということであります こういった要介護要支援の方の 増加に伴って介護に 要するお金の額も増えてきております し我々が支払っている保険料も 高くなっているわけであります でこの介護になった要因を調べ てみますと 2000年に介護保険制度が始まった 頃には 脳卒中脳卒中が第1位であったわけ でありますけれども現在では認知症 が第1位、脳血管障害脳卒中が2位、 高齢による衰弱が3位 骨折転倒が4位、関節疾患が5位という 風になっているわけであります 特にこの3つの病態ですね 高齢による衰弱や骨折転倒そして 関節疾患は今日お話しするフレイ

ルという加齢に伴って起こってくる 虚弱状態に関連をしているという 風に考えて 考えています 認知症とか、あるいは脳血管疾患 についてもフレイルとの関連がある ということでありますので フレイルにならないように予防 することがすべての要介護の要因 の減少につながるという 風に考えて いただければ結構であります このフレイルというのはですね 要介護状態に至る前の段階ということ で非常に 元気な状態とも区別される状態 になっています すなわち加齢とともにさまざまな 臓器により能力が低下していく 中でストレスに対して 弱くなってしまうという状態が フレイルということであります 例えば感染症になったり手術で 入院をしたりということで 体力 が落ちてしまうと、その時に十分に 回復しない状態で退院していく とその中で色々な合併症が起こ ってきて要介護の状態になってしまう ということになるわけであります ですからこのフレイルというのは 非常に要介護になりやすい状態 でありますけれども一旦要介護 になってしまうとなかなか元に 戻りにくいわけで ありますが, このフレイルという 状態であればまた 健常な状態に再び戻すことはでき るんだという事で 可逆性という特徴があるとこういう ふうに御理解いただければ結構 です。 この 健常からフレイル、要介護として 進むのはまあ老化が一番 関係をしているわけであります けれども、様々な病気であったり 肥満であったり、お薬の 飲み過ぎであったり、視力や聴力 の低下、そしてサルコペニアという のは筋肉の衰えを意味しています けれども 筋肉の衰えであったり お口の健康が

悪化したり運動不足が続いたり、ある いは低栄養が続いたり 認知機能の低下があったり、そして 抑うつ気分になってあったり 独居孤立といった、社会的な問題 もあったりと、こういった様々な 要因でこの老いの坂道が段々段々 急になってきてフレイルになり やすくなるんだという風に 考えていただければ結構であります このフレイルの要素をまとめて みますと身体的な加齢変化による ものがあります。すなわち、骨のもろ くなる病気である骨粗鬆症であった り関節が ダメージを受ける変形性関節症 そして筋肉が衰えてくるサルコ ペニアとこういったものは主要 な要因になっております こういったものをまとめてロコモティブシンドローム という風に言っておりますけれども 身体的な 衰えというのは主にこういった 運動器に起こってくるということ でこういった運動器 における 加齢変化が その後のいろんな 結果につながっていくということ になります。あと心理精神的なフレイ ルに関しましては、 認知機能の低下や、抑うつ気分とい ったものが 加齢を進める、加齢変化を進める と、そして社会的フレイルとして 閉じこもりとか、あるいは独居、そして 経済的な問題や社会参加をあまり しないといったことも虚弱性を高める という 風に考えていただければ結構であります ので、いろんな要素があるということ であります。このフレイルという 状態になりますと当然要介護に 陥りやすく死亡のリスクも高いわ けであります けれども 認知症のリスクも高くなり転倒 骨折のリスクも高くなると そして、施設に入所したり、入院の リスクも高くなりますし、手術を 受けた後の合併症も 起こりやすくなるということであります あとはお薬の飲み過ぎとかいろん な病気との関連も知られている わけであります

でこのフレイルに関しましては ですね、そのリスクとして挙げら れているのは栄養でありまして 特に、このたんぱく質が減ります と、フレイルのリスクが2倍ぐらいになって くると、あとビタミンDの低下も 2倍以上になると。 あるいは、ビタミンE、C、葉酸といった こういった抗酸化性を持つビタミン が 不足してもフレイルになりやす いんだということで 栄養は極めて重要であるということ を理解していただきたいと思います それでは、どういうふうにこのフレイ ルという病態を診断をしていく のかという事で、まず 多くの方をスクリーニングして そこで引っかかってきた人に対して 診断を行っていくとこういう2段階 のステップで考えていただければ 結構であります。 まず、スクリーニングでありますけれども どこでも簡単 にできるような形の評価という ものが推奨されますけれども、ここに ありますのは 5つの質問を上げています。 6か月間で特に意図せずに2~3キロ 以上の体重が減ってきたらどう かと、減ってくれば1点がつける、立てる と以前に比べて歩く速度は遅くな ってきたと自覚して いる場合は1点がつきます。 ウォーキング等の運動を週1回以上して いなければ1点がつくと5分前の ことが思い出せ なければ1点がつきます。 ここ2週間持続的に理由もなく 疲れたような感じがするという ようなことであれば 1点がつくということで5点満点 で3点以上の場合フレイという形で 判定をされるという ことであります。 てこの5つの質問をですね、地域在住 高齢者に当てはめてみますと この最初の時点では皆さん要介護認定 を受けてない状態でスタートしています けれども そのグループを0点のグループ 1 点から2点のグループそして3点以上 のグループというふうに

分けますと3点以上のグループ で明らかに要介護認定のリスク が高くなっていたということがわかったわけであり ます。 すなわち3点以上の方は2年間で約 1/3の方が要介護認定を受けたと、一方で0点の方は、 ほとんど要介護認定を受けなかったという結果になっています。 で、これは、地域におけるその頻度を見ていますけれども、今の5つの うち3つ以上という形で、 判定をしますと、男性も女性も10%ずつ、いたということで10人に1人 が該当したんだということであります。 そして年代ごとの変化を見ていただきますと、 60代、70代前半は比較的少ないんですけれども、 75歳を超えたあたりから急にこの合併頻度が増えてくるということで 年齢に依存した合併頻度ということが言えるかと 思います そしてその診断に移りたいと思いますけれども、 診断につきましては、やはりその 客観的な指標も必要だということで、握力と歩行 速度を使いまして 1番目と3番目の質問は、先ほどと全く同じなんですけども 身体活動に関する2つの質問、軽い運動、体操をしていますか? 定期的な運動スポーツをしています かという2つの質問に、いずれもしていない と答えた場合に身体活動が低下しているという ふうに判定をします これも五つ項目がありますけれども、 1項目のうちで例えば握力が低下 していたり歩行 速度が低下していたり疲れた感じ がずっと続いているという いうことが三つ満たしますと、それでフレイという形で判定を されるわけであります こういったフレイルに対してどのように 予防あるいは治療していくのか ということですけども 重要なのは運動と栄養であります。 そして社会参加、できるだけ毎日 外出していろんな人と交わる ということも大事だと 思いますし、お口の健康も極めて大事だと、入れ歯は ちゃんと合っていますか あるいは、奥歯でちゃんと噛めますか?といった ことを確認していただく必要があります。 で、こういったことに問題があれば ですね、歯科の先生に見て頂く必要 があると思いますし、 定期的な歯科受診というものも勧めたい と思います。 現在コロナの問題が出ています けれども、感染予防をしっかりとやって いただくということ、 まあ医原性の原因これは例えば、 特にお薬の飲み過ぎということも

フレイルを進めるという風に考え られていますので、そういったことの 無いようにお医者さんや、 薬剤師さんでよく相談していただく ということは重要であるという ふうに思います フレイルに対する地域での 取り組みでありますけれども こういった形で自主グループ 皆さんに集まっていただいて、皆さん で体操をするというようなことが いろんな地域で行われています こういう形でも体操をしている ということですけども こういった自主グループの効果というものが 検証をされていまして、 実戦のほうが参加しているグループ 点線のほうが参加していない グループのデータでありますけれども 2年間ですね最初に年間あまり差はな いんですけれども 2年を超えた頃から参加している 方のほうが要介護に陥りにくくなる ということが示されています 。 すなわちこう、自主的にですね社会 参加をしていくと、自主グループ を作って参加していくと、 そこで運動をすることによって 体の機能も向上しますし認知的な 認知機能や精神機能も向上すると というこの正の循環が回りだす ということで、元気になる 方が多くなってくるということ かと思います あとこういったサロンですね、サロン という活動も重要だと思います ま、これは コロナの前の写真ですので、現在もこういう ふうに環境をとっていただきまして 少しスペース を空けた形での集まりということが 重要になってまいりますけれども こういった形 で、趣味の活動をしていただくということ でも、非常に効果はあるということが わかっています こちらはサロンに参加している人と 参加していない人で比較しています けれども 明らかに、参加しているの方の ほうが要介護の認定を受けにくいという ことが示されている わけであります

このようにそのフレール予防という のはですね、3つのことが重要である ということでありまして 運動習慣を持つこと、そして良い 食習慣もつこと、そして社会参加の 習慣持つことと3つの 車輪がきちっと整っていてですね それをしっかりと運転を継続することが できれば健康を 維持することができると、もちろんその 車を運転する際には車体のメンテナンス も 必要だということでそのメイン テナンスは家族であったり 医師や看護師などの専門書が関わると で様々な不健康な原因要因があります ので、そういったものをいかに減らす かということについては 行政であったり研究者が行うべき であるというふうに考えている わけであります。 さて最近、新型コロナウイルス 感染症が増えてまいりましたけ れどもこれは、第1波、第 2波の要素を示していますけれども 9月に入りましてだいぶと陽性者のかたも 減ってまいりましたけれども、引き続き 油断ができない状態であるということ かと思います。で この、新型コロナウイルス感染症COVID-19 よる死亡率を見ていただきます と明らかに 高齢者で多いということがわかって いまして 特に持病のある方で、死亡率が高い と、心血管疾患があったり糖尿病 があったり高血圧 だったり、慢性呼吸器疾患になったり 癌があったりと、こういう方では 死亡率が高いということ が明らかになっています。一方で あの日本で2月のように横浜に寄港しました ダイヤモンドプリンセス号におけるですね 70歳以上の方の死亡率は1.1% いう風になっておりますので、こう いったことを考えると極度に恐 れる必要もないのかな ということもいえるかと思います。 この新型コロナウィルス感染症、COVID-19 と高齢者との関係でありますけれども やはり、高齢者は、重症化リスクが高いということを理解する必要がありますし 感染を恐れて外出の自粛を行っている とそれよって体の機能が衰えて

しまうといった問題 が出やすいとそして 感染の恐れがあるからということ で病院を受診しないことによる 影響が非常に大きいと、 そして施設の入所者のケアにも 影響が出てくるということがわかっていますし、 在宅での療養支援のケアにも影響 が出てくるということが問題か 問題となっています。あとは認知症 の方のケアにも影響が出ている ということが報告をされ ています。 我々は、インターネットを使いまして 1月の状況と4月の状況そして6月 状況を比較しています これは何を調べたと言いますと、 1週間の身体活動の時間を 聞いていますけれども 全般的なデータを見ますと、一月 の活動量に比べて4月におき ますて、だいたい3割近くの 活動時間の減少を見ています。これは 緊急事態宣言が出たということも 関係しているかと思います 一方で、6月になりますと感染が治った ということで、活動時間を元に戻 っているわけで ありますけれども、よく見ていただきますと、 ここにあります独居で社会参加 をしていない グループというこういったグループ については、 1月の活動時間そのものも他のグループ に比べて低い、 少ないわけでありますけれども 4月に半分近くに落ち込んで 6月にもあんまり 回復しきれていないということが 示されていますので、まぁこうい ったグループに しっかりと目を かけていく必要があるということが 分かったということであります。 すなわち新型コロナウィルス感染症の中では感染制御はも ちろん大事だと 思います。 新規感染者を減らすことによって 医療サービスへの負担を軽減し 死亡率を下げるという ことも必要です。 ただ感染と制御だけを考えると どうしても自宅から出ないと

そういった高齢者におきまして、 活動自粛が起こってしまうと、それ によって社会的に孤立したり、医療サービスへのアクセス が低下をしたりということによって 身体機能や 認知機能が落ちてしまうと、そして フレイルになったり 要介護リスクが増えてしまう、といった ことが懸念されますので、こうい ったことにならないように、活動を 促していく必要があるという風に考えています。 そういった事で長寿医療研究センター では、こういったハンドブック 特に夏季におきまして、熱中症対策のための ハンドブックもホームページで公開をしています ので、 ぜひともご覧いただきたいと思います また、自宅でも、運動ができるような 在宅活動ガイドというのも出 していますので、これ もホームページにアクセスして いただければ無料で見ることができます。 また老年医学会からは、こういった メッセージを出していますので こういったメッセージも 参考にしていただければという ふうに思います。 すなわち新型コロナウィルス感染症 におきます感染下で、 高齢者として、気をつけたいポイントとして ですね、ここにありますように、 生活不 活発に気をつけてほしいということ。 そしてできるだけ運動しましょうと、 しっかり栄養をつけてパランス の良い食事をとりましょうと、 お口の清潔を保ちましょうと そしてしっかり噛んで、できれば 毎日おしゃべりをしましょうと 家族や友人との支えあいも大事だと いうことも強調させていただいております。 もし、その、こういったことが懸念 される場合にを当センターのロコモ・フレイルセンターで てロコモティブシンドロームやフレイルとい った病態についての詳しい検査 や治療を行っていますので、ぜひとも受診 いただければというふうに思います。 また地域の通いの場に関しまして、 どうしても自粛という動きもあると思います けれども、 こういった対策をとりまして安全 に、通いの場での活動を継続していただき たいと思います。 し、どうしてもその 集合をして

活動するということが懸念される 場合には、オンラインでの通いの場 というものもできるという風に考えていまして こういったアプリも我々開発しておりますので、 それもこういったアプリも 活用していただければというふう に思います でこのアプリはもうすでにフリー でダウンロードが可能ですけども 今後も コミュニケーション機能であった り健康状態の管理であったり 認知症のトレーニングだったり 食事注文・宅配機能であったり また買い物機能とこういったもの を随時アップしていく予定です のでぜひとも活用をして いただければと思います。 ご清聴どうもありがとうございました。

講師:国立長寿医療研究センター 理事長 荒井秀典

加齢とともに起こってくる様々な身体機能の変化の中で、老化によるものとしてどうしようもないものもあれば、生活習慣の改善によって機能がよくなるものがあります。そのよくなるものをどのように理解するかといったときに、講演でお話しする「フレイル」という言葉は大変重要な意味を持ちます。フレイルを正しく理解し、自らの疾病や環境と付き合っていくことで、今以上に体が元気になり、コロナ禍でも元気で長生きできるコツが含まれています。しっかり勉強してお役立てください。

健康長寿教室テキスト
https://www.ncgg.go.jp/cgss/department/frail/documents/chojutext_2020.pdf

WACOCA JAPAN: People, Life, Style.