家康が正室・瀨名のことを繰り返し思い出しつつ、3人目の側室・於愛(広瀬アリス・28)とベタベタするのもしっくりこない。当時の価値観だと普通のことなのだろうが、この作品は1人目の側室・お葉(北香那・25)を同性愛者と思しき女性という設定にしたり、家康の子供を宿した侍女・お万(松井玲奈・32)に女性の政治参画の必要性を訴えさせたり、女性の権利や立場については現代の価値観も採り入れている。それなのに一夫多妻のような部分を昔のままにするというのは、2重基準で分かりにくい。
広瀬が演じる於愛はコメディエンヌらしいものの、あまり笑えない。登場したのは23話からだが、26話では榊原康政(杉野遥亮・27)を叱責。家康が信長をもてなし、それについて康政が不満を漏らしたためで、於愛は「そのようなことを言うではない!」と声を荒らげた。さらに「そなたに殿のお気持ちが分かるのか!」と説教した。
時代考証を軽視しようが、辻褄が合って面白かったら、それでいいだろう。「大奥」もそうだった。一方、「どうする家康」の時代改変はうまくいっているかというと、微妙ではないか。
ターニングポイントは家康の正室・瀨名(築山殿、有森佳純・30)による築山事件(24、25話)を創作したこと。瀨名を、無血革命の上で争いのない国を築き上げようとした美談の人に仕立て上げた。
31話のT層(13~19歳)の個人視聴率は1.3%。F1層(女性20~34歳)の個人視聴率は0.7%。かなり低い。T層は横並びで下から2番目、F1層は同最下位。松潤効果が感じられない。
一方で大河の岩盤支持層である50代以上を取りこぼしている。オーソドックスな大河とは大きく違うためだろう。新しいファンが思うように得られず、一方で旧来の支持者を失ったら、全体の視聴率は上がらない。
支持が高まらない理由をさらに掘り下げてみたい。まず家康の存在感が強く感じられない。ずっとそう。タイトルからも分かる通り群像劇ではないのだから、家康が目立たないと面白くならない。
前半の家康は武田信玄(阿部寛・59)、中盤までは織田信長(岡田准一・42)に圧倒された。現在は羽柴秀吉(ムロツヨシ・47)に押され気味。近く真田昌幸役で佐藤浩市(62)、石田三成役で中村七之助(40)が登場するから、今度は2人に押されてしまうのではないか。
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