県内を襲う南海トラフ巨大地震の津波による被害が、より大きくなるかもしれません。その要因は、駿河湾で起きる海底地すべりです。地層や現場の記録が、津波の新たな脅威を物語っています。
焼津港のそばに一つの石碑があります。
今は内陸にある林叟院という寺があった場所が、海に沈んだと伝えています。
<静岡大学防災総合センター 北村晃寿 教授>「『大津波のため当地は巨海と化す』というのが残っている。津波が終わった後、そこの場所が海になっているということなので、海底地すべりで斜面崩壊が起きて、(寺の)跡地が海の中に水没したと、こう考えるのが理に適っている」
海に沈んだのは、室町時代の大地震による「海底地すべり」が原因だとみられます。
海底地すべりは、地震の揺れで海の中の急斜面が崩れる現象で、その衝撃で盛り上がった海面が津波となって押し寄せます。
<北村晃寿教授>「特に駿河湾内の所は、非常に海底地すべりの多発地域」
静岡大学の北村晃寿教授などの研究グループは、海底地すべりが津波の被害を大きくするという最新の研究結果を、8月31日公表しました。研究では、焼津市浜当目の地層に残る津波の痕跡などを調べてきました。過去5000年分の地層を分析し、駿河湾では、室町時代や平安時代などの地震で大津波が襲来したことが分かりました。このタイミングで海底地すべりが起きたとみられます。
<和田啓記者>「沿岸からすぐですね」
<北村晃寿教授>「こちらは那閉神社という場所です。もともとは沖合に突き出た洲崎の那閉崎に鎮座していた。それが波によって崩れてしまったので、今のこの場所に移したということが駿河記に書かれています」
<和田記者>「もともとはこの場所に無かったんですね」
平安時代の大地震による海底地すべりで、神社があった場所の地盤がえぐられ、陸地ごと海に沈んだとみられます。今回、北村教授が分析した地層から、大津波のあった年代が初めて確定し、海底地すべりが起きた証拠となりました。
<北村晃寿教授>「せり出した陸地は、外洋からの波を弱める効果がある。今、それを人工的に作ったのがテトラポット。それがなくなるので、そのまま波が弱まることなく陸上に遡上してくるため、マグニチュード8クラスの本体の津波に対しても防御するすべがなくなり、当然想定よりも津波の被害が大きくなる」
海底地すべりによる津波は、世界で繰り返し起きています。
2018年9月、インドネシアのスラウェシ島には10メートルを超える津波が押し寄せ、2000人以上が犠牲になりました。
2009年の「駿河湾の地震」です。この地震でも焼津沖で海底地すべりが起き、約60センチの津波が観測されています。
<和田記者>「(津波は)どのくらいのスピードで来る?」
<北村晃寿教授>「ここだと本当に秒単位。数分とかの概念ではなくて、すぐ目の前なので数秒で来ます。静岡県は急斜面の海底地形なので、地震動があると海底地すべりが起きやすい。次の南海トラフ巨大地震の時にも当然起きてもおかしくない」
津波のスピードだけでなく、高さにおいても想定を超える恐れがあるといいます。それが海底地すべりによる津波の脅威です。
#オレンジ6 9月2日放送

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