BS-TBSで放送中のドラマ『心配無用ノ介 天下御免』(毎週木曜よる11時、再放送毎週土曜ごご5時)が、2026年8月20日(木)に最終回を迎えます。

本作は第48回日本アカデミー賞 最優秀作品賞を受賞した安田淳一監督の大ヒット映画『侍タイムスリッパー』(2024年)の外伝ドラマ。映画に登場した心配無用ノ介(演:田村ツトム)を主人公とした痛快勧善懲悪物語と共に、そのドラマ制作の舞台裏を斬新な仕掛けで描いています。

最終回に向けて、BS-TBSの制作チームからプロデューサーの安部眞太郎、黒木彩香、堤智愛(ちなる)による鼎談を実施。企画の経緯から撮影の裏側、最終回の見どころなどをたっぷりと語ります。(※写真左から、黒木彩香、堤智愛、安部眞太郎)

まずは、皆さんのプロフィールと『心配無用ノ介 天下御免』(以下、『心配無用ノ介』)における役割を教えてください。

安部 僕は2009年、BS-TBSに中途採用で入社しました。現在はコーポレート戦略局経営企画部に所属し、主な業務は財務、経営計画、新規事業の三つです。業務内容によって編成や営業、事業など別部署と協力しています。

『心配無用ノ介』には、プロデューサーとして携わっています。企画を立ち上げ、収支計画を立て、取締役会に提案し、制作スケジュールを立てるところまでが僕の主な担当業務でした。その後、撮影にも立ち会いましたが、現場をメインで回してくれたのは黒木さんと堤さんです。

黒木 私は2012年にBS-TBSの新卒1期生として入社しました。現在は事業局事業部に所属し、『心配無用ノ介』のプロデューサーを務めているほか、配信事業や出資案件、イベントなど放送外の領域に関する、さまざまな業務を進めています。

BS-TBSにはドラマ部がなく、ドラマを作るときに編成が主導することもありますが、今回のように製作委員会形式で作る場合は事業部が中心に進めています。ほかに、TBSグループのTBSグロウディア幹事の作品に弊社が出資することもあります。

今回の主な業務は、公開撮影の立ち合いとSNSの撮影でした。

撮影は京都府にある太秦映画村(以下、「映画村」)のオープンセットで行われましたが、ほかの担当業務もあるので京都に常駐はできず、私と安部さん、堤さんが順番で京都に通いました。そこでSNS用の写真や動画の撮影を担当し、撮ったデータの説明をメモにまとめ、それを宣伝部に投稿してもらっています。

堤 私は2020年に中途入社しました。営業を担当したあと、2025年10月から事業部に所属し、番組販売や出資案件に携わっているほか、今回初めてドラマのプロデューサーに挑戦することになり、日々勉強を重ねています。

私はこの企画に途中参加して主にSNS用の撮影を担当しました。当初1館のみの上映から始まった『侍タイムスリッパー』(以下、『侍タイ』)が全国350館以上まで広がったのも、SNSでの口コミによる情報展開がきっかけの一つと考えられるので、SNS運用に力を入れようという方針があったのです。実際、SNSは更新すると1分も立たないうちにリアクションしてくださる方がいるほど盛り上がり、ファンの皆さんの熱量を感じました。

続いて、企画の経緯を教えてください。

安部 企画の発端は、黒木さんから「めちゃくちゃ面白い映画がありますよ」と『侍タイ』を紹介してもらったことです。すぐに映画館で見たら本当に面白くて、ぜひ安田監督にお会いしたいと思いました。

この映画の配給会社であるギャガさんには、別作品で頻繁に伺っていました。そのご縁から、安田監督をご紹介いただけることになったんです。

ですが当日、安田監督がなかなかいらっしゃらなくて(笑)。連日、地元の幼稚園の卒園式の映像編集に取り掛かっていたため寝不足で、気付いたら寝てしまったそうです。当時すでに『侍タイ』が300館以上で上映され、興行収入も10億円を超えていたにもかかわらず、昔から大事にされている地元のお客様から頼まれたお仕事に取り組んでいて、その義理堅さや飾らない人柄に、瞬時に心を奪われてしまいました。

お話する中で、『侍タイ』のスピンオフ企画を立ち上げることに。安田監督がその場で映画村の南田圭一郎プロデューサーに電話してくださいました。南田さんはすでに安田監督が温めていた企画を把握されていて、「映画村50周年記念のリニューアルプロジェクトとして、お客さんを入れた公開撮影をしたい」と監督に提案されていました。

安部眞太郎

黒木 安田監督は、子どもの頃は映画村で当たり前のように公開撮影が行われていたのに、近年は情報規制の面からなくなったことを寂しく思っていたそうです。そのため「かつての活気ある映画村の姿を復活させたい」と意気込んでいらっしゃいました。

ちなみに監督は当初、『心配無用ノ介』を、YouTubeなどの配信で『侍タイ』ファンの皆さんに喜んでもらえるようなコンテンツとして映画村さんと作ろうとしていたそうです。そこへ我々が伺ったことで、テレビ番組としてご一緒できることになりました。

黒木彩香

BS-TBSが時代劇の連続ドラマを制作するのは武田鉄矢さん主演の『水戸黄門』(2017年)以来です。今回の挑戦にどんな狙いがありましたか?

安部 BS-TBSは現在、月曜日から金曜日まで『水戸黄門』を放送していることもあり、BS-TBSの視聴者様にとって、時代劇は親しみやすいジャンルだと考えています。

しかし、時代劇作品が作られる機会は減ってしまいました。それはストーリーのワンパターン化も、理由の一つと言われています。

今回は全6話で王道の時代劇だけでなく、時代劇を作るスタッフの奮闘を描いて映画『蒲田行進曲』(1982年)を彷彿させるメタ構造を描いたり、「襖がサッと開いて主役が登場するシーンがよくあるけれど、襖は一体誰が開けているの?」など時代劇のお約束にツッコミを入れてみたりと、遊び心を取り入れながら新しい視聴者層の開拓にもつなげたいと考えています。それぞれの回のどんな部分を面白く見ていただけたか、興味深いです。

企画が通るまで、特に苦労したことは何でしょうか。

安部 まずは、予算の問題です。時代劇の制作には費用がかかりますし、結果がついてくるかどうかは不透明でした。そのため、社内の説得に少し時間かかったかもしれません。

最終的に、映画村さんと東映さんの全面協力のもと、『侍タイ』の制作に携わった安田監督率いる未来映画社のスタッフ、東映京都撮影所の時代劇制作チームに参加していただくことができました。また、カメラなどの機材も安田監督にお借りしています。

黒木 本来なら監督、撮影するカメラマンさんは別の役割ですが、安田監督は『侍タイ』と同様に、撮影も兼任してくださいました。お一人でいろいろな役割を担ってくださったおかげで、制作に至ることができたと思います。皆さまのご協力に感謝しています。

安田淳一監督安田淳一監督

映画村での公開撮影は、いかがでしたか?

安部 BS-TBSとして公開撮影は初めてでしたので、2026年3月28日にクランクインするまでは正直、不安でした。この日は映画村が50周年を機にリニューアルして大々的なセレモニーイベントが行われ、公式アンバサダー「太秦サポーター」に就任した、なにわ男子の長尾謙杜さんがゲストに登場しました。数千人もの観客が集まることが予想されていたため、撮影中に混乱があり、お客様にけががあったらどうしよう、などと心配していました。

しかし、実際の現場ではそうした不安をはるかに上回る、作品ファンの方との見事な一体感がありました。撮影直前に「よーい」という掛け声がかかった瞬間、一斉に静まり返るんです。

堤 映画村の南田プロデューサーが「ここにいる人たちがカットがかかるまで“しーん”としている、今しかないこの瞬間がとても尊い」という話をされていましたね。

昨今のドラマはネタバレや守秘義務の観点から公開収録を行う機会はほぼありませんが、一般の方がドラマの撮影を見る機会はなかなかないと思うので、とても意義のある取り組みだったと思います。

『侍タイ』ファンの方もいらしていましたが、たまたま映画村に遊びに来ていたご家族や外国人の方もふらっと見学に来られていて「ドラマってこういう風に撮るんだ!」と楽しんでいただいたようです。

堤智愛

黒木 映画村での公開収録は約20年ぶりだったそうで、我々は不安な部分が大きかったのですが、ファンの方のご協力のおかげでスムーズに撮影が進行しました。本番前、自発的に「お静かに」と声を掛けてくれた方もいらっしゃったりと、ファンの方同士で連携してくれたのは、作品の力だなと感激しました。

制作現場は温かい雰囲気に包まれていて、お客様も含めてみんなで作品を育てているような感覚でした。

安部 ちなみに、ファンの皆さんは我々BS-TBSチームのことも認識されていて、話しかけてくださったことも。私たちは京都のスタッフだと思われていたようで、放送前に池袋シネマ・ロサで開催した舞台挨拶では「今日は京都からいらっしゃったんですか?」と声を掛けられました(笑)。

監督やキャストの皆さんの、現場でのエピソードを教えてください。

安部 まず、安田監督は「『侍タイ』を支えてくださったファンに恩返ししたい」という強い思いで撮影に臨んでいました。現場での一切妥協のない粘り強さに、並々ならぬ情熱を感じました。あとは、とにかくコーラとお肉が大好きで、疲れていてもコーラを飲むと少し元気になるそうです(笑)。

黒木 安田監督のこだわりには、圧倒されましたね。カットがかかると「OK!キープで」とおっしゃって、OKを出しながらもさらに撮影を重ねるんです。スタッフの方々は「まだやるの…結構長いな~(笑)」と言いつつも、皆さんニコニコ笑顔なんですよね。それは、安田監督に人を魅了する求心力があり、自然とついていきたくなる存在だからだと思います。

それと、安田監督自ら、子役のキャストに表情や所作を実践して演技指導されている様子は、とても和みました。

安部 白石和彌監督は、現場にとても早くなじまれていて驚きました。2話は白石監督が演出で、安田監督がカメラマンを担当していたのですが、おふたりの息がぴったりでどんどん撮影が進み、予定よりも早く撮り終わりました。ちなみに、襖を開けるシーンの演出は安田監督です。

撮影中に白石監督を含め、皆さんとお食事する機会があったのですが、「映画の仕事をやってみたい」と打ち明けたところ、「じゃあ明日、僕の横でモニターをずっと見てください。教えてあげますよ」と言ってくださり、感激しました。

堤 白石監督はバイオレンスな要素のある作品を多く手掛けてらっしゃるイメージが強かったのですが、とても物腰柔らかな方。見学にいらしたお客様ともフランクに会話されていたことも印象的でした。

安田淳一監督(写真右)と白石和彌監督(写真左)のタッグが実現した2話安田淳一監督(写真右)と白石和彌監督(写真左)のタッグが実現した2話

田村ツトムさん、おゆう役の沙倉ゆうのさん、善治役の井ノ上チャルさんはじめキャストの皆さんは、とてもすてきな方ばかりでした。私はドラマの仕事が初めてで、とても緊張していましたが、気さくにお話してくださいました。5月に約1か月撮影したときは連日、暑くて疲れていたはずなのに、映画村のお客様ともコミュニケーションを取ってくださっていたので、サービス精神の高さに驚きました。

黒木 JTBさんによる撮影現場見学&バックヤードツアーを開催しましたが、キャストの皆さんは撮影が終わってもファンの方のために衣装を着たまま快く待っていてくださいました。

また、沙倉さんは製作委員会の会議にも毎回出席してくださいました。『侍タイ』では出演しながら実際に助監督も務めていらしたので、その名残かもしれません。メインキャストの方が会議に参加されるなんて、かなり珍しいことだと思います。

田村ツトムさんが、スタッフに作ってくださったTシャツ田村ツトムさんが、スタッフに作ってくださったTシャツ

改めて、今回の制作を振り返っていかがですか?

堤 初めてドラマのプロデューサーを務め、衣裳や照明といった時代劇を作るスタッフの職人技を間近で見ることができ、とても感動しました。衣裳アドバイザーとして、ドラマ『SHOGUN 将軍』(シーズン1:2024年)も手掛けた東映京都撮影所衣裳部の古賀博隆さんにも参加していただきました。

プロのスタッフが集結して一つの作品を作ることで新たなアイデアが生まれ、企画が多角的に発展していくプロセスはとてもエキサイティングでした。事業部として他社と一緒に取り組めたことで、非常に立体感のある作品になったと思います。

日々たくさんの刺激を受けながら学ぶことばかりで、ドラマ制作の持つ魅力にすっかり引き込まれました。

黒木 今回は公開収録をしたり、そこで一般の方に撮影とSNSへの投稿を許可したりと、通常のドラマ制作に比べてかなりイレギュラーな取り組みでしたが、やりづらいと感じた部分はありませんでした。むしろ、「こういうやり方もできるんだ!」と新しい発見があったと思います。同じようにはできなくても、次の制作へのヒントになるかもしれません。

撮影現場では近くで見られなかったシーンもあったので、完成した映像を見ると「こんな風になったんだ!」と感動しました。監督の思い描いたものに、キャスト・スタッフにより命が吹き込まれて形になっていくさまを見てきたので、オンエアでは現場のいろいろな出来事を思い出し感慨深いです。SNSでは『侍タイ』のファンの方にも喜んでいただけているようで、とても嬉しいです。

ちなみに、時代劇特有の言葉は難しかったです。時代劇パートには普段使わない言葉もあるので、改めて「これってどういう意味だろう?」「使い方は合っているのかな」と悩んだこともありました。

安部 撮影に使用した時代劇専用のオープンセットは、リニューアル直後の新品であったため仕上がりがきれいすぎたり、本来の時代劇には映り込まないはずの物品が配置されていたりすることもありました。安田監督と白石監督は、そうした環境のなかで時代劇を作り上げるうえで、さまざまな試行錯誤を重ねていました。また、本作は時代劇というよりも「時代劇の撮影現場を描く現代劇」であるため、その点はしっかりとお伝えしなければならないポイントでした。

しかし何といっても、作品を映像化して視聴者の皆様の心に何かをお届けできるのは、ドラマ制作における最大の醍醐味です。実際に作品を見ていただき、その反響を実感できる瞬間に、大きなやりがいを感じます。

まもなく最終回が放送されます。全話を通した作品の見どころを含め、最後に視聴者へのメッセージをお願いします。

安部 まず、見どころは田村ツトムさん演じる心配無用ノ介のセリフです。悪人を斬る前のセリフもかっこいいですし、「心配ご無用!」という言葉は実に爽快感があります。

また、1~2話は特に監督のメッセージが強く表現されたストーリーだと思うので、ぜひ見直していただけると嬉しいです。ちなみに、2話では「大江戸米騒動」を描きましたが、放送日の7月23日は約100年前の1918年に富山県魚津町で米騒動が起きた日だそうで、たまたま一致して驚きました。監督は兼業で米農家をされているので、強い思い入れがあったのかもしれません。あのシーンでの心配無用ノ介の目力やセリフの言い回しにもインパクトがありました。

5~6話は山口馬木也さんや冨家ノリマサさんといった『侍タイ』のメインキャストのほか、竹中直人さん、本田博太郎さんもゲスト出演してくださいました。ぜひお楽しみにご覧ください。

『侍タイ』の山口馬木也さん、冨家ノリマサさんが出演!『侍タイ』の山口馬木也さん、冨家ノリマサさんが出演!

黒木 5話と6話は前後編でつながっているので、続けてご覧いただけるとより深く作品の世界観を楽しめると思います。エキストラの方々にもご参加いただき、まさに全員の力を合わせて作り上げた回となりました。個人的には本田さんの怪演が印象的です。本来はシリアスな場面ですが、思わず、にやりとしてしまうような圧倒的な演技は、さすがだなと感じました。

天空講の教祖、天雲斎役の本田博太郎さん天空講の教祖、天雲斎役の本田博太郎さん

また、殺陣のシーンも見どころです。メインキャストの皆さんの中には、実はあまり経験のない方もいらしたので、殺陣のプロである「東映剣会」や、斬られ役の諸先輩方が、かなり稽古をつけてくださいました。稽古のときはゆっくり流れを確認しながら練習するので、本番でどうなるのか想像がつきませんでしたが、公開収録ではとても鮮やかな動きで本当にかっこよかったです。お客様も、殺陣シーンの撮影ではとても盛り上がっていました。

堤 心配無用ノ介は殺陣のシーンではとてもかっこいいのに、ちょっと抜けているというギャップがあるので、愛されるキャラクターになったのかなと思います。そんなところも、見どころの一つです。竹中さんは一分ほどしか登場していないのに、とても面白い演技をされて印象に残っています。その爪痕の残し方に驚きました。

町人役で竹中直人さんも特別出演町人役で竹中直人さんも特別出演

このドラマは時代劇かと思いきや、現代のシーンもあり、時代を行ったり来たりする仕掛けが多い作品です。それが一般的な時代劇とは違うところで、『侍タイ』らしさを感じられると思います。一貫して安田監督が伝えたいメッセージが込められていて、最終話でしっかり受け取っていただけると思います。ぜひ楽しみにしていただきたいです。

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写真左から、黒木彩香、堤智愛、安部眞太郎

安部眞太郎
2009年BS-TBS入社。営業、広報、PRを経て、現在はコーポレート戦略局経営企画部に所属。これまで映画『アイミタガイ』(2024年)、映画『Step Out にーにーのニライカナイ』(2025年)などを担当。『心配無用ノ介 天下御免』ではプロデューサーを務めた。

黒木彩香
2012年BS-TBS入社。編成部、制作部、報道部、TBSテレビへの出向、BS-TBSに帰任して編成部、マーケティング部、営業部を経て、現在は事業局事業部所属。ドラマ『ゲームチェンジ』(2026年)や『心配無用ノ介 天下御免』のプロデューサーを務める。

堤智愛
新卒で映画雑誌の出版社に就職し、2020年BS-TBS入社。5年間営業部に所属し、現在は事業局事業部にて番組販売や出資案件を手掛け、『心配無用ノ介 天下御免』ではドラマプロデューサーデビューを果たす。

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