【トラウマ寸前】13歳の少女に漂う危うさ…/映画『ブロークン・ヴォイス』予告編
芸術と権威性の危うい関係、合唱団という共同体で起きた沈黙の構造を、被害者と加害者両面から描く『ブロークン・ヴォイス』予告編が解禁!
来日公演も行い広く知られていたプラハの名門児童合唱団「バンビーニ・ディ・プラーガ」で実際に起きた性加害事件から着想を得た、歌を愛するひとりの少女が沈黙するまでを描いた。
本作の基となった事件とは、1984年~2004年にかけて少なくとも49人が被害を受け、2004年に合唱団の指導者ボフミル・コリーンスキーが逮捕された衝撃の事件だ。
聖と俗、成功と妬み、大人と子供、数々の対比をもってひとりの少女を取り巻く環境を、被害者と加害者の両面から描く本作。芸術と権威性の危うい関係、合唱団という共同体で起きた沈黙の構造を真正面から描き、2025年のチェコ映画批評家賞でベスト映画賞を受賞。映画初出演となったカテジナ・ファルブロヴァーは撮影当時13歳、チェコ少年少女合唱団のメンバーでもある彼女は劇中曲も全て自身で歌唱した。歌はもちろんのこと、その演技も評判を呼び、2026年のチェコアカデミー賞では主演女優賞も受賞した。
歯列矯正器具をつけ、厚手のウールセーターに身を包んだカロリーナの佇まいは、あどけなさと大人びた印象が同居する危うさを強調し、意図的に『ロリータ』を想起させる早熟なイメージを立ち上げている。
本作は、#MeToo以後の価値観をもって過去を断罪するための映画ではない。そうではなく、なぜ声を上げることができなかったのか、なぜ沈黙が長く続いてしまったのかを、ひとりの少女の経験の内側から静かに問い直す作品である。歌うこと<声を揃えること>を求められた少女たちは、気づかぬうちに自分自身の声を失っていく。その喪失の痛みは、決して過去に閉じ込められたものではない。
監督が焦点を当てるのは、トラウマのその後や告発の行方ではなく、虐待が起こる「手前」の時間だ。現実世界に存在する暴力を、過剰な演出に頼ることなく、きわめて繊細かつ控えめに描き出すことで、本作はかえって鋭い印象を残す。少女にとって本来は守られるべき安全な空間が、いかにして少しずつ毒されていくのか。その過程を見つめる本作は、あらゆる「安全なはずの場所」に潜む危うさを、いまを生きる私たちに静かに突きつけている。美しいハーモニーの裏で、何が起きていたのか…これは告発の映画ではない。沈黙が生まれる瞬間を描いた映画だ。
『ブロークン・ヴォイス』は2026年9月19日公開
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