STUTS「タイラー・ザ・クリエイターが最近、Shazamした音楽に、Daichi Yamamoto君と作った「Breeze」という曲を挙げてくれた」

――レイチェルさんはいかがですか?アーティストがグローバル・レベルで成功するということについて。日本国内の立場からだと、まだその目標に対する明確な答えやツールを手にしている人はまだまだ少なくて、みんなが模索中である、とも感じます。

レイチェル: そうですね。でも、こんな時代はこれまでになかったと感じていますし、言語の壁も関係なくなってきているのかなとも思います。ヒップホップやラテン、そしてポップ・ミュージックにも、それが顕著ですよね。ただし、誰もがグローバルに進出できるわけではないとも思う。心に響くアーティストや曲というのは確かに存在すると思います。そして、私たちの心はどこにいても変わらない。その感覚や、人と繋がることができるのは、ムードやそれぞれの体験に関わるもので、言葉では説明しきれないものですよね。それが共鳴しあって、グローバルなヒットへ繋がるんだと思います。

――日々、音楽業界やテクノロジーも変化していますが、今一番ワクワクしている変化は何ですか?

レイチェル:境界や国境が存在しないことに本当にワクワクしています。今やどこからでもヒット曲が生まれる時代で、これはこれまでのポピュラー音楽ではありえなかったこと。まさに新しい世界だと感じています。

STUTS:先日、ちょうどライブを見せてもらったんですけど高中正義さんが世界中でライブをやって、言語も関係なく、世界中の音楽が好きな人にその魅力が伝わっているような状況はすごくワクワクするなと思っています。しかも、それがレーベルの力などではなく自然発生的に生まれている。こういう事例は、今後ももっと起こっていってほしいですね。高中さんの場合は、地域だけではなく年代も超えて多くの人に愛されている。70年代の日本の音楽もここ最近、再発見されて海外で聴かれていることも多い。すごくエキサイティングですよね。数年前に、タイラー・ザ・クリエイターがインタビューで「最近、Shazamした音楽は何ですか?」と聞かれた時に、僕とDaichi Yamamoto君とで作った「Breeze」という曲を挙げてくれていたんです。すごくびっくりして。「どこかのレストランで流れていて、それ以降はあんまり聴いてない 」と言っていたんですけど(笑)、そういうことって、今の時代にしか起こらないんだろうなと思って。

――反対に、我々が解決していかねばならない課題はどういったところにあるとお考えですか?

レイチェル:音楽業界って非常に多様で豊かな場所。そして、アーティストたちは他の市場では不可能な方法で成功することが可能になっている。だからこそ、アーティストが収入を得る方法を引き続き見つけていく必要があると思います。ストリーミングの世界では、楽曲から得られる収入には限界があると感じています。現代のアーティストは、ツアーやグッズ販売だけで生計を立てている人もいるし、それはそれでいいことだと思う。でも、楽曲そのものからもっと多くの収入が得られないのは寂しいことだとも思います。だからこそ、さらなる収益源を見つけることが課題であり、解決しなければならない問題だと考えています。

STUTS::特に日本のヒップホップはインディペンデントで活動している人が多いので、そこに限った話で言うと、ここ10年くらいで音楽だけで生活できている人がとても増えていると感じます。今の時代、別にメジャーレーベルからリリースをしなくても、ソーシャルのサービスを使って自分の楽曲を配信して、その再生回数に応じた収益をダイレクトに受け取ることができる。レーベル側の問題だと思うんですけど、メジャーだと既存のCDビジネスのモデルのまま契約をすることが多いから、アーティストにそのお金が入ってこないんですよね。だから、そこはレーベルが変わらなきゃいけないんじゃないかな、って僕は思います。

――この機会に、個人的にレイチェルさんに伺いたいことがあって。2023年から、Apple Musicはスーパーボウルのハーフタイム・ショーをスポンサードしています。今や、一つの音楽パフォーマンスの域を超えて文化的にも非常に意義深いイベントとなっているわけですが、御社にとってそうしたイベントの一部を担う、ということはどんな意味を持つのでしょうか。

レイチェル:そう感じてくれて嬉しいです。Apple Music、NFL、Roc Nationの3社の間には、本当に素晴らしいパートナーシップが生まれていると思います。私たちは皆、これは単なるパフォーマンスではなく、非常に大きな文化的な意味を持つものだという点で強く一致しているんです。そして、スーパーボウルが音楽面のパートナーを持つのはこれが初めてなんですよね。その甲斐あって、これまでのパートナーではできなかった多くのことを実現できていると感じています。ハーフタイム・ショーのキャンペーン全体を通じて、本当に多くのことを語ることができているのでは、と。その結果、アメリカだけではなく日本でも、こうしてイベントの文化的意義に関心を持ってくれる人がいる。それは私たちにとって非常に重要なことですし、世界でハーフタイム・ショー以上に大きな音楽のステージはないと思いますから。

――まさに私も、国外から毎年パフォーマンスの素晴らしさに心を打たれているわけなのですが、やはり毎年話題になるのは、誰がそのステージに立つか、と言うことですよね。バッド・バニーにケンドリック・ラマー、リアーナ…その裏側はどうなっているのでしょうか。

レイチェル:やっぱり、ジェイ・Zの力でしょうね。我々はパートナーシップを組んでいるけど、やっぱり、彼は素晴らしいA&Rでもある。ゆえに、スペシャルなことが実現できているんですよね。

――近年だと、AIとクリエイティヴィティをどう共存させるか、ということも喫緊の課題かなと思います。STUTSさんはどのようにお考えですか?

STUTS:技術の進歩だなと思っていますが、結局、その技術を使うのは人間なんですよね。AIによって作られた音楽も、何かしら、人間が生み出したプロンプトを使用して作っているわけじゃないですか。そう言う意味では、結局、人が作り出したものと言っていいんじゃないかなとも思っていて。僕はやっぱり、人が生み出すものって、受け手に届いた時に心を動かす何かがある、ということを信じているんです。だから、AI的なものを道具として使って、それで面白いものが生まれた、それはそれですごくエキサイティングなことだと思います。実際に(AIを)試したこともあるんですけど、面白いなと思いつつ、作っていて楽しくないんですよね。なので、別に僕はAIをまだ敵だとは思っていなくて。便利な道具として使えるんだろうなと思っています。 でも、これも現時点の技術力に対してそう感じているというだけで、今後、たぶんもっと想像のつかない進化をしていくと思うんですよね。そうなった時にどう感じるのかっていうのは、その時代になってみないと分からないですね。

――最後にレイチェルさんに伺いたいのですが、次世代のアーティストに対してメッセージを送るなら?

レイチェル: ずっと変わらないことだと思うのですが、自分に正直でいることが大切だと思います。周りの人々や国境を超えた人々から共感を得る唯一の方法は、それだと思う。私は、AIはクリエイターにとって素晴らしい道具になり得ると思う。でも、あなたがアーティストとしてスタートしたばかりなら、まずは自分らしさを大切にし続けることですね。

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