「きれいごとじゃない、きれいなことだよ。きれいなことをあきらめないっていちばん強いよ」

6月29日に最終回をむかえるカンテレ・フジテレビ系の月10ドラマ『銀河の一票』。与党幹事長の父を持つ秘書・星野茉莉(まつり/黒木華)が、ある告発をきっかけにすべてを失い、政界復帰を懸けて、スナックのママ・月岡あかり(野呂佳代)を東京都知事選に担ぎ出す——新たな「選挙エンターテインメント」だ。茉莉が選挙参謀を務め、政治の素人だったあかりが候補者として立つ、都知事選の50日間を描く。

毎週、SNSには「名言をメモしたい」「励まされた」という声が並び、選挙や政治に距離を感じてきた人たちの心まで動かしてきた。冒頭に挙げたのは、多くの人が「泣いた」と語ったセリフ。黒木さん演じる茉莉が、政治リーダーは上に立つのではなく、同じ地面に立って先に歩いてほしいと語り「きれいごとかもしれないけど」と続けたのに対して、あかりが語った言葉だ。ドラマを作る背骨にあるのも、「きれいごと」ではなく「きれいなこと」を、冷笑せず正面から掲げる姿勢といえる。

多くの人の心を射抜いている本作で脚本をつとめる蛭田直美さんと、企画・プロデュースを担う佐野亜裕美さん(カンテレ)に、ライターの田幸和歌子さんが二人三脚の制作の内側を聞いた。

『銀河の一票』    
与党幹事長の娘にして秘書だった茉莉(まつり)。母の死とも関係する病院の問題を調査する中で「元秘書」となり、出会ったスナックママ・あかりと都知事選に挑む。50日の戦いの行方、そして問題の真実は。 

蛭田直美(ひるた・なおみ)    
脚本家。    
2013年に第23回シナリオS1グランプリ/準グランプリ受賞。    
2014年に第39回城戸賞/準入賞。そのほか作品や受賞作多数。    
ドラマ『ガードセンター24』(2016)、『これは経費で落ちません!』(2019)『メンズ校』(2020)、『しずかちゃんとパパ』『舟を編む〜私、辞書つくります〜』『ワンナイト・モーニング』(すべて2022)『ウソ婚』(2023)『あの子の子ども』(2024)『日本一の最低男4.6.7.9〜11』(2025)    
映画『五億円のじんせい』(2019)『スパゲティコード・ラブ』(2021)    
アニメ『Turkey!』(2025)など多数。

佐野亜裕美(さの・あゆみ)    
プロデューサー    
『潜入探偵トカゲ』(2013)『99.9 刑事専門弁護士』(2016)『カルテット』(2019)『大豆田とわ子と三人の元夫』(2021)『エルピス―希望、あるいは災い―』(2022)など多数。

企画の原点——「政治は生活だよ」

そもそも、この企画はどこから生まれたのか。『カルテット』(TBS)、『大豆田とわ子と三人の元夫』『エルピス—希望、あるいは災い—』(いずれもカンテレ)と、自分の人生を自分の手で切り拓く女性を描いてきた佐野さんが、次に選んだ題材は「選挙・政治」だった。『エルピス』で政治の一端に触れた際の大きな反響と、2019年末にロサンゼルスで耳にした「政治は生活だよ」という一言が、出発点になったという。政治を扱うドラマが少ない日本で、選挙をエンターテインメントとして描けないか——―2022年ごろから選挙ボランティアや取材を重ね、当初は選挙参謀を主人公にした企画を想定し、題材を都知事選に定めていった。

脚本に蛭田さんを迎えたのは、人間の可能性を信じ、優しく明るい希望を描ける方にこの題材を扱ってほしいと思ったから。当初は「いわゆる“ママテレ”が立候補する」という設定も想定されていたが、やがて「何も持たない人が戦う物語」へと舵を切り、スナックのママ・あかりという像は、蛭田さんのアイデアから生まれた。

「同じものを見ている」と確かめ合った瞬間

ただ、二人を引き合わせたのは、具体的な題材よりも前に、もっと根っこの部分での一致だった。蛭田さんには、佐野さんと強く分かち合っていたものがある。

「この企画のお話をいただく前に、佐野さんとたくさん重ねていた対話の中で、ドラマをつくる上で大切にしたいこと、大切にしたくないことが一致していると感じていました。具体的な言葉にするのは難しいんですけど、この人となら安心してただひたすら純粋に『面白いもの』を目指して行ける、と思っていたので、政治や選挙という決して得意ではない題材でも、挑戦してみようと思えました」(蛭田さん)

物語の方向性が定まったと感じた瞬間も、蛭田さんははっきり覚えている。脚本を書くとき、“自分の中でのテーマソング”を決めるのが蛭田さんの習慣だ。

「私にとって歌が一番イメージを共有しやすいので、佐野さんがCHAGE and ASKAの『YAH YAH YAH』がこの企画のイメージだと教えてくれたとき、すごくすごくいいなと思って。『歌詞に一緒に殴りに行こうかとありますが、佐野さんが殴りに行きたいのは誰ですか?』と聞いたら、『理不尽です。この社会の理不尽です』と。その瞬間、なんだか射抜かれたような衝撃を受けて、「いいですね。すごくいいですね。それですね。それでいきましょう!」と、それまで闇の中だった方向性に、一気に光が射し込みました。(蛭田さん)

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