
「Billboard JAPAN Book Charts」は、読書トレンドの“今”を可視化する書籍チャート。ベストセラーだけでなく、SNS発の話題作や再浮上したロングセラー、さらには映像化や受賞をきっかけに改めて手に取られた作品まで、さまざまな書籍の動きがランキングに反映される。そこで本稿では、2026年5月(※)のチャートから見えてくる、現在の読書トレンドをひもといていこう。
※集計期間:2026年4月27日~5月31日
ランキング目次
▶Book Hot 100
▶Bungei
▶Culture
■Book Hot 100
「Book Hot 100」は、紙書籍(店舗・EC)、電子書籍、図書館貸出、SNS指標を合算した総合チャート。マンガや文芸など、あらゆる書籍がランキングに並ぶのが特徴だ。
〈第1位〉
『キングダム』79巻(原泰久/集英社)
累計発行部数1億2000万部超えを記録する『キングダム』は、春秋戦国時代の中国を舞台に、信と嬴政の天下統一への道を描く人気歴史マンガ。最新79巻では趙完全攻略戦が本格化し、信たちに中華十弓・青華雲の猛威が襲いかかる。2026年7月17日(金)には実写映画第5作『キングダム 魂の決戦』の公開も控えており、シリーズへの注目度はますます高まりそうだ。
〈第2位〉
『呪術廻戦≡』3巻(岩崎優次:著、芥見下々:原作/集英社)
『呪術廻戦≡』は、「死滅回游」から68年後を描く人気マンガ『呪術廻戦』のスピンオフ作品。短期集中連載として2025年9月から『週刊少年ジャンプ』で連載され、今巻が完結巻にあたる。これまで乙骨憂太の血を引く真剣・憂花の兄妹と、突如現れた地球外生命体を中心に物語が展開されてきたが、最終3巻では前作の主人公・虎杖悠仁が満を持して登場。その注目度の高さもあってか、店舗ランキング1位・電子書籍ランキング2位と好調な結果を残した。
〈第3位〉
『イン・ザ・メガチャーチ』(朝井リョウ/日経BP 日本経済新聞出版)
4月の総合チャートに引き続き、第3位にランクインした『イン・ザ・メガチャーチ』。熱狂的なファンの行動が社会現象へと発展する「ファンダム経済」の構造をテーマにした同作は、「推し活」という身近な題材を入り口にしながら、大衆心理が巨大なうねりを生み出すメカニズムにまで踏み込んでいく。ブクログやnoteなどの投稿数をもとにしたSNS指標では1位を獲得しており、「読んで語りたくなる」作品として高い関心を集めていることがうかがえた。
★<インタビュー>“今の時代、人を動かすものは何なのか”――『イン・ザ・メガチャーチ』を通じて朝井リョウが問う、人間にとっての推進力とは【WITH BOOKS】
★朝井リョウ 作家生活15周年&『イン・ザ・メガチャーチ』刊行記念インタビュー
★朝井リョウ『イン・ザ・メガチャーチ』。生活を切り詰め、舞台俳優の「推し活」に励んできた35歳の女性。ある日、思わぬ報道が…【書評】
さらに5月21日公開の急上昇チャート「Hot Shot Books」(※)にも目を向けると、池井戸潤の約2年ぶりとなる新作『ブティック』が首位に立った一方で、青山美智子の『リカバリー・カバヒコ』と柚木麻子の『オール・ノット』がトップ3にランクイン。どちらも5月に刊行された文庫版をきっかけに、再び注目を集めた形だ。新刊が持つ初動の強さと、既刊が別の形で読者に届き直す流れが同時に見られた点は、5月の読書市場の活発さを象徴している。
※集計期間:2026年5月11日~5月17日
★【ビルボード】池井戸潤『ブティック』首位、文庫版刊行の2作がトップ3入り
■Bungei
「Book Hot 100」から文芸作品に絞って集計した「Bungei」チャート。小説やエッセイ、詩集など、多彩な作品がランクインしている。
〈1位〉
『イン・ザ・メガチャーチ』(朝井リョウ/日経BP 日本経済新聞出版)
朝井リョウの『イン・ザ・メガチャーチ』が、4月に引き続き「Bungei」チャートで首位をキープ。今回で通算17週目の首位獲得となり、4月9日に発表された2026年「本屋大賞」受賞の効果も大きいとみられる。指標別に見ると、店舗1位、EC5位、電子書籍3位と紙・電子の双方で上位にランクインしており、幅広い読者層から支持を集めていることがうかがえた。
〈2位〉
『方舟』(夕木春央/講談社)
『方舟』は、山奥の地下施設に閉じ込められた9人が、1人を犠牲にしなければ全員死ぬという極限状況に直面するクローズド・サークルミステリー。2022年9月に刊行された作品だが、2024年8月に文庫化、さらに2025年12月放送の情報番組「ZIP!」で「東大生が選んだ今年の一冊」として紹介されたことで認知度が上昇した。その後も口コミを中心に読者層を拡大し続け、現在も「Bungei」チャート2位を維持している。
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〈3位〉
『汝、星のごとく』(凪良ゆう/講談社)
2023年「本屋大賞」を受賞し、シリーズ累計150万部超を記録する『汝、星のごとく』が第3位にランクイン。瀬戸内の島で生まれた主人公の男女が、周囲のしがらみや運命に翻弄されながらも、15年にわたり愛を紡いでいく姿を描く。2026年10月9日(金)には横浜流星×広瀬すずによる実写映画の公開も控えており、改めて注目を集めているようだ。
なお今回のチャートには反映されていないが、5月27日(水)刊行の凪良ゆう最新作『多類婚姻譚』が、5月25日~31日集計分の「Bungei」チャートで総合2位を獲得している。さらに新刊情報発表直後の集計回(※)では、発売前にもかかわらずSNSでの話題性を背景に42位にランクイン。発売前の作品としては異例のランクインとなり、その注目度の高さを裏付ける結果となった。
※集計期間:2026年4月6日~12日
★【Book Insight】『多類婚姻譚』発売週、凪良ゆうの作品5作が文芸チャート100位以内へ――旧作まで波及した熱量の正体
〈4位〉
『君のクイズ』(小川哲/朝日新聞出版)
『君のクイズ』は、直木賞受賞作家・小川哲が2022年に発表した傑作ミステリー。クイズ番組の決勝戦で、対戦相手が「問題文を一文字も聞かずに正解した」という不可解な出来事をきっかけに、その謎を追っていく物語だ。4月のチャートでは39位だったが、今回は4位まで大きく数字を伸ばした。現在公開中の実写映画に加え、映画のクイズ監修を担当した「QuizKnock」とのコラボ動画など、関連メディアでの露出増が原作への関心を押し上げた要因とみられる。
〈5位〉
『成瀬は天下を取りにいく』(宮島未奈/新潮社)
宮島未奈のデビュー作『成瀬は天下を取りにいく』は、「やりたいことを、ただやる」という主人公・成瀬の姿が共感と笑いを呼ぶ青春小説。2024年に「本屋大賞」を受賞して以降も重版を重ね、今やシリーズ累計発行部数は220万部を超える。「Bungei」チャートでは続編『成瀬は信じた道をいく』が29位、昨年12月発売の完結作『成瀬は都を駆け抜ける』が15位にランクイン。シリーズを通して根強い人気を維持しており、7月から始まる山下美月主演の舞台をきっかけに、さらなる広がりも期待される。
4月に引き続き『イン・ザ・メガチャーチ』と『方舟』が上位をキープする一方、「Bungei」チャートでは映像化作品の躍進も目立った。『汝、星のごとく』や『君のクイズ』が上位に入る中、5月8日に実写映画が公開された湊かなえの『未来』は、81位から19位へと大きく順位を上げている。さらに、6月19日の実写映画公開を控えていた米澤穂信の『黒牢城』も圏外から37位へ急浮上。映像化による再注目の動きが明確に表れた結果といえる。
■Culture
「Book Hot 100」から文化・芸術関連書籍を抽出し、順位化したチャート。エンターテインメント性の高い作品から、教養・歴史系の書籍まで、幅広い顔ぶれが並ぶ。
〈1位〉
『堀夏喜 1st写真集「LIVING FOR」』(堀夏喜(FANTASTICS)/幻冬舎)
「Culture」部門の首位を獲得したのは、FANTASTICS from EXILE TRIBEの堀夏喜による初ソロ写真集。幻冬舎とLDH JAPANがタッグを組んだ連続刊行プロジェクト「GL-9 ~FANTASTICS BOOKS~」の一環として制作された作品で、憧れの街・パリを舞台に“全編ノーメイク”で撮影に挑んでいる。EC指標1位を記録しており、発売直後にオンライン販売が大きく伸びたことが、ランキングを押し上げる要因と考えられそうだ。
〈2位〉
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅香帆/集英社)
「『仕事と趣味が両立できない』という苦しみは、いかにして生まれたのか」という現代人の悩みを軸に、日本の労働の問題点を掘り下げる『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』。2025年末からチャート上位の常連となっており、継続的に関心を集めるテーマであることがうかがえる。また今回のランキング浮上については、新社会人が職場環境や働き方と向き合う時期的な要因も影響しているのかもしれない。
<インタビュー>三宅香帆、言葉を伝えることと残すことへの想い/ 「出版」と「音楽」の新たな交流から見出す在り方とは【WITH BOOKS】
〈3位〉
『ユダヤ人の歴史 古代の興亡から離散、ホロコースト、シオニズムまで』(鶴見太郎/中央公論新社)
2025年1月に発売された『ユダヤ人の歴史』は、古代王国の成立からイスラエル建国、中東戦争まで、約3000年にわたるユダヤ史を描いた一冊。迫害・離散・国家建設といった歴史的変遷を、思想・宗教・政治の交差点として捉えており、複雑な国際情勢を理解するための“入り口”として手に取る人も多い。4月から続いて3位をキープし、国際情勢と関連書籍が読者の関心と結びつく傾向がチャートにも表れた形となった。
そのほか、5月の「Culture」チャートでは、長倉顕太の『本を読む人はうまくいく』が19位、毛内拡の『読書する脳』が20位にランクインするなど、“読書そのもの”をテーマにした書籍の上位進出が目立つ。読書離れが指摘される一方で、読書の効用や意味を問い直すような書籍への関心が高まっているかもしれない。
今回紹介したチャート以外にも、「Billboard JAPAN Book Charts」ではManga(マンガ)やEconomy(政治・経済)といった多彩なカテゴリーのランキングが毎週木曜日に更新されている。気になる一冊との新たな出会いを、ぜひチャートの中から見つけてほしい。
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