2018年の「カメラを止めるな!」で、ほぼ唯一の不満点が人間ピラミッドを肯定的に描いたこと。同作のレビューでは、「星半個の減は、ラストの組体操を共同作業のメタファとして感動場面に仕立てた点。エンドロールで『組体操は大怪我につながります。良い子は絶対に真似しないで!』と警告したら、事故が続いているのに頑なに組体操を廃止しない教育界への皮肉になって一層笑えたのに。」と書いた。それ以降、組体操を批判的に描く社会派作品が出てこないかなとぼんやり思っていたが、そんな期待を余裕で超える馬鹿馬鹿しいほどの壮大さと爆笑を誘う不条理で日本的集団主義を皮肉るのが本作「NEW GROUP」だ。

下津優太監督の長編商業映画デビュー作「みなに幸あれ」(2024)と本作に共通するのは、欧米発ホラー映画群から奇抜なアイデアをエッセンスとして取り込みつつ、現代日本に根深く残る悪弊や社会問題を可視化して恐怖と笑いに昇華する独特の作家性だ。前作ではムラ社会の因習と、少子高齢化で若者が老人に搾取される制度的不平等を風刺しつつ、「ゲット・アウト」「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」(共に2017)の影響も感じさせた。

一方「NEW GROUP」では、軍国主義の時代から受け継がれる一致団結の精神、各自の個性を伸ばすよりも集団の規律を重んじる前時代的教育を象徴する組体操が、集団行動の異常現象として登場し、スケールも不条理さも増していく。平穏な町や都市の住人たちが知らないうちに何らかの邪悪な存在に操られたり乗っ取られたりしていく、という物語類型はハリウッドで昔からたびたび作られていて、有名どころでは「ボディ・スナッチャー 恐怖の街」(1956)、「チルドレン・オブ・ザ・コーン」(1984)、「ゼイリブ」(1988)あたり。「WEAPONS ウェポンズ」(2025)は製作年が近いので直接影響を受けたわけではないと思うが、共時性が興味深い。

それにしても、人間ピラミッドのあり得ない巨大さもシュールだが、組体操の生徒らが編隊を作り人間戦車になって愛(山田杏奈)や優(青木柚)たちに迫ってくるシーンのイカレっぷりには爆笑しつつ感動してしまった。あと、生活音や手拍子で刻むリズムに乗ってラップが披露されるのは前作にもあったコミカルな場面だが、校長役のピエール瀧は本業で歌っているので意外性の点ではやや残念(前作では普通のじいちゃんばあちゃんがラップを始める唐突さも笑いのポイントだった)。

山田杏奈は初主演映画にスプラッター復讐劇「ミスミソウ」を選んだ心意気に感心したのをよく覚えていて、以降はさまざまなジャンルの作品に出演してきたが、久々に尖ったホラー作品に戻ってきた印象だ。あの「ポー」も、内心「何をやらされているんだろう」と思ったかもしれないが、大真面目に演じているのがまたいい。

ひとつ惜しいと感じたのは、最終対決に挑む際の主人公側の戦い方。映画的なスペクタクルの点ではあの対決で盛り上げる意図もわからなくはないが、願わくは各人の自由意志と個性を貫くスタイルで対峙してほしかった。集団主義への風刺がぼやけてしまうようで、もったいないと思う。

とはいえ、下津監督のユニークな作家性は明らかであり、変に丸くなったりせずにこれからもますます尖った映画を極めていってほしいと期待する。

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