ヨーロッパ最大級のアジア映画祭として知られる第28回ウディネ・ファーイースト映画祭で、最高賞にあたるゴールデン・マルベリー賞と、ブラック・ドラゴン・特別観客賞の2冠に輝いた木村太一監督作「FUJIKO」が、公開を迎える。
本作はNetflixのヒットシリーズ「ラヴ上等」をはじめ近年、プロデューサーとして目覚ましい活躍を見せるMEGUMIの企画・プロデュース作で、木村監督の実母の人生を基に生まれた、笑いあり涙ありのヒューマンドラマだ。
俳優としての活躍のみならず、女性をエンパワーメントする作品を世に出したい――そんな思いからプロデュース業にも進出したMEGUMIと、困難に遭いながらも自らの人生を切り拓いていくシングルマザーの富士子の半生を、みずみずしくも、骨太の演技で体現した主演の片山友希に話を聞いた。(取材・文/編集部、撮影/間庭裕基)

(C)2026 FUJIKO Film Partners
■プロデューサーとしての着実な歩み
――本作は、イタリアのウディネ国際映画祭で見事受賞、Netflixのシリーズ「ラヴ上等」も好評で、国際的な成功も成し遂げたと言えますね。プロデューサーとして、今、その手ごたえをどのように感じていますか。
MEGUMI:私のプロデューサーという立場に対して、「どこまでやってるの?」とか「名前だけでしょ」とか、割と批判的な声が多かったんです。「FUJIKO」は4年、「ラヴ上等」も3年かかっているので、その準備期間は私が「何やってるかわからない」と言われることもありました。そんな風に私の仕事が世の中にあまり伝わっていない感じがあったので、こうした海外の反応も含めて私がプロデューサーとしての仕事がようやく皆様に伝わったかなと思います。
私が携わった作品を広く知っていただいたおかげで「こういうことが作りたいんだな」とか「こういう人なのね」「こういう形で関わっているのね」というのをやっと理解していただけるようにもなりました。それは、手ごたえというよりは、今後の新たな作品に対してもいろいろとスムーズになって、興味を持ってくださってお声がけしてくださる方も増えたので、やっとスタートラインに立ったかなという気はします。

――本作は木村監督のお母様の半生を基にしたお話だそうですね。企画は木村さんからMEGUMIさんに持ち込まれたのでしょうか?
MEGUMI:木村監督からこの作品のアイデアを聞いたのは4年前ですね。当時、私はプロデューサーとしてまだ3年目くらいでした、自分が作る作品で「女性をエンパワーメントしたい」と決めていました。それはなぜかというと、ニュースで「日本人女性の自己肯定感が世界最下位」というのを見たので、自分が作るなら女性の主人公が様々な問題を乗り越えて最後に成長する物語を作りたい、そんなことを考えている時に、木村監督の前作「AFTERGLOWS」に私が出演した縁で意気投合し、仲良くなったんです。
木村監督はお母様の半生を題材にした映画を撮りたい、女性のエンパワーメントムービーのようなものを撮りたいと考えていて、彼の人間性もセンスもわかっているから、「あ、これは私がやりたいことと一緒だな」と企画が始動しました。

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■片山友希に富士子役をオファーした理由
――富士子を演じた片山さんのみずみずしい演技、存在感が素晴らしかったです。キャスティングについてお聞かせください。
MEGUMI:片山さんとは2019年にテレビドラマでご一緒させていただいきました。当然演技の技術のある方だというのはわかっていたのですが、人間性が本当にストレートな方なんです。「それ言っていいんだっけ?」ということや、「言わない方がいいんじゃないの?」ということもガンガン言っていたんですよ(笑)。芸能人の中では珍しい人だなと思って、そこが私はすごい好きだったんです。
富士子もそういうキャラクターで、行き当たりばったりの時もあるし、「なんでこういうこと言っちゃったんだろう……」なんて後悔もするような衝動で生きている人なので、新しい母親像を描きたかったんです。片山さんは、そういう意味では富士子に近いところがあるんじゃないかなと思って木村監督に話をして、一度面接という形でお話をさせていただきました。俳優としての技術的な部分はもちろん、木村監督は「人としてどうなのか」が大事だったので、初回からフィーリングが合って、富士子として参加していただきました。

――様々な困難に立ち向かうシングルマザーという難役です。脚本を読まれてまずどういう感想を持ちましたか? 演じるにあたりどのようなことを考えましたか?
片山:初めて脚本を読んだ時、自分が上京して東京に友達がいなくて、お金もないという時の時代を思い出したんです。「だけど、なんとか私は生きてこられたし、今も生きてるしな」という気持ちを、富士子の物語と重ねられました。富士子の人生は、他人から見るとすごく大変なことがいっぱいあったと思うんですけど、台本を読んだ時に、悲劇ではないなと感じて。そこが自分の持っている感覚とすごく似ていました。また、MEGUMIさんのプロデュースだったら絶対大丈夫、そんな思いが強くありました。
■木村太一監督の母親の実話を映画化するにあたって
――脚本に関しては、プロデューサーとして最初から木村監督と一緒に構築されていったのでしょうか?
MEGUMI:実話に基づく作品なので、設定や家族構成に関しては忠実に再現しています。でも、脚本として「これはつまらないのでは?」という時期もあって、物語として面白くなるよう、私も監督と一緒にいろいろと意見を出しあいました。

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――人間らしい喜怒哀楽を持った登場人物たちによる、普遍的で胸を打つストーリーと、日本ならではの文化や習慣がテンポよく巧みに織り込まれ本作ならではのポップさを持った世界観に引き込まれます。本作は企画当初から海外での展開も考えていたのですか?
MEGUMI:そうですね。監督も20年イギリスに住んでらっしゃって、私も自分の国の映画を海外に出したい、という思いが常にあるので、海外の映画祭と海外の配給に積極的に働きかけるようにしています。「FUJIKO」も海外の方に理解していただける日本的な名前で、最後に富士山を入れたのも、意識したところです。
――片山さんは富士子を演じるにあたって、木村監督のお母様に対面し、取材をされたのでしょうか?
片山:はい、お母様から「暗い映画にはしないでほしい」とは言われていて、私もそういう演技をするつもりはなかったので、「もちろんしないです」というお話をさせてもらいました。すごく面白い方で、自分の映画になるというのが「本当に嫌なの」と言いながらも、撮影中に何度も差し入れをしてくださって。やっぱりお母様ですし、監督に対する愛や、映画を成功させてあげたいという気持ちがすごく強いんだなあと、実感しました。

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――演じる上で、監督やお母様に質問されることが多かったのか、それとも片山さんの中でイメージした富士子を出していったのでしょうか?
片山: このお話が決まって、決定稿の台本をもらうまでに、改訂版も読ませていただいていました。だから「富士子をこういう風に役作りしました」というより、半年以上ずっと台本を読んで、打ち合わせも参加させてもらうことができたので、読むたびに富士子の言うことや、やることが理解できました。私自身が「こういう風に作っていきました」というのはなく、本当に現場を重ねるたびに富士子になっていった感じです。
――未来を感じさせ、深い余韻を残す印象深いラストでしたね。脚本の初期段階からああいう形にしようと思っていたのですか?
MEGUMI:はい、富士子が「何かになった」という結果ではなく、そのプロセスは伝わらないとしても、語りすぎずに「自分で選択をした」という清々しさを表現できるラストにしようと最初から監督と決めていました。

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■現代を生きる女性たちが届ける、新しい女性の物語
――片山さんは俳優として、プロデューサーとしてのMEGUMIさんとの仕事でどんなことを学びましたか?
片山:この作品で、MEGUMIさんが演じるママが経営する喫茶店はとても繁盛しています。でも、お客さんがこのカフェが好きで通っていたとしても、店主がちょっと踏み込みすぎたりとか、超えてほしくないラインって人それぞれにあると思うんです。役柄だけでなく、MEGUMIさんご本人がそのラインを超えない方なので、「だからこの喫茶店ってすごい繁盛しているんだな」と思いました。
プロデューサーとしても、クランクインする前から監督と話す時間をたくさん設けてくださったり、自分がストレスというか、台本に対して立ち止まらないような環境づくりをしてくださったな、と感謝しています。

――MEGUMIさんが掲げた、まさに女性をエンパワーメントするような作品に仕上がっています。これから作品をご覧になる方へのメッセージをお願いします。
片山:見てくださる方の自由なので、あんまり「こういう風に」とは言えないんですけど、やっぱり私は音楽がすごいかっこいいなと思っています。あらすじを読んだらトリッキーというか、あまり想像ができないというか。あらすじだけ読むと「大変そうな話だね」と言われたりしますが、実際に映画を見ると、ちゃんと一本筋が通っているというか、見やすく、抽象的でもないので、物語としてすごく面白い作品だと思います。楽しく見ていただけたら嬉しいなと思います。
MEGUMI:本当に片山さんが言うように自由に楽しんでもらいたいなと思いつつも、こういった家族、親子の物語では誰もやったことがないことがやれたと思っています。ぜひ劇場で新しい映画体験をしていただけるとうれしいです。

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