さくらももこさんが編集長を務めた奇跡の爆笑雑誌「富士山」に掲載され、これまで書籍化されたことのないエッセイ11編を収録した『たびたび』(新潮社)は、ももこワールド全開の旅エッセイです。
さくらももこさんによる活字エッセイの新作が発売されるのは、『おんぶにだっこ』(小学館)以来。さくらももこ展が全国を巡回し、各地で大盛況となっている中、ファン待望の新作発売となります。
ミッフィーちゃんの生みの親のディック・ブルーナさんに会った、ユトレヒト。中国茶に熱狂&爆買い!の香港。京都で、大阪で、福岡で、とことん食いだおれ。大好きなバリで大好きな“あの人”に再会……。
国内から海外まで、世界のどこを旅しても、ももこがいればそこに笑いあり。めくるたびに爆笑まちがいなしの旅エッセイから、「こんにちは ブルーナさん」を試し読み公開します。
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こんにちは ブルーナさん
かわいいミッフィーちゃんの生みの親、ディック・ブルーナさんはオランダのユトレヒトという町に住んでいる。
ブルーナさんはとても優しくてすてきな人だという噂はよくきいていたし、私も息子もミッフィーちゃん他、ブルーナさんの描いた絵が大好きだったが、ブルーナさんに会える機会があるとは思ってもいなかった。
しかし、今回この雑誌の取材で「ブルーナさんに会いに行きたい‼」ということになり、前に私がエロール・ル・カインという絵本作家の人について本を書いた時に大変お世話になった渋谷稔(しぶやみのる)さんをはじめ、ブルーナジャパンの皆様の御協力により、ブルーナさんのお仕事場におうかがいできることになったのである。
一緒に行ってくれることになった新潮社の木村さんと、うちのスタッフの青木さんもブルーナさんに会えることを非常に楽しみにしてはりきっていた。みんな、わくわくしながらブルーナさんの住む町、ユトレヒトに向かった。
ユトレヒトはオランダの古い町並が残る美しい町で、アムステルダムから車で四十分ぐらいの距離である。
ブルーナさんの仕事場は、ひっそりとした小道を入ったところにある建物の二階にあり、我々が到着したとたん、ブルーナさんがみずからすごく優しく明るい笑顔で迎えて下さった。それだけでもう、私達はパァァ…と一気に幸せになった。
ブルーナさんの仕事場には、今までに出版された絵本やその他の本がズラリと本棚に並んでいて、個展に展示される原画がきちんと整理されてたくさん置いてあった。
そして、世界中の子供たちから届いた絵や、ハガキなどを棚にいっぱい飾ってあり、すごくかわいらしい。ブルーナさんの温かさがあふれている仕事場だ。
私は、ちょっと恥ずかしかったが自分で描いたミッフィーちゃんとまる子が並んでいる絵をブルーナさんにプレゼントした。ブルーナさんはとても喜んで下さったのでうれしかった。私の描いた絵が、直接ブルーナさんの手に渡ったところをこうして見られただけでも光栄である。
ブルーナさんはご自分の作品について、次のように語ってくれた。
「私は、0歳~6歳ぐらいまでの子供の時期というのを、とても大切に思っています。0歳~6歳頃の時期に触れ合うもので養われる感性は、ずっとずっと大人になっても続いてゆくと思うからです。だから、そういう時期の子供達が、私の作品に出会って幸せな気持ちになったり何かを学んだりすることは、私にとって大変うれしいことでもありますし、また大切なことであると思いますので、子供達にわかりやすく、温かく楽しい作品を、いろいろなテーマで描いていきたいといつも思っています」
そんなブルーナさんの思いが込められているから、ブルーナさんの作品はあんなにかわいらしくて優しいのだ。あのシンプルな絵は、ものすごく吟味してデフォルメされ、無駄な部分をはぶき、必要なエッセンスだけで描かれている。それがいかに難しく、どれほど洗練されたセンスが要求されることか。そのうえ、そこにかわいらしさや優しさまで加わり、誰が見てもほのぼのとした気持ちになるような作品を作っているのだから素晴しい。稀有な才能を持った作家なのだとつくづく思う。
ブルーナさんは、原稿を描くのにすごく時間がかかるそうだ。シンプルで完成された線を描くためのデッサン、下絵、そして均一の太さで全ての主線を描く作業、色づけ、これらを少しの狂いもなくこなすために時間がかかるのだ。
ブルーナさんは「私は、毎日毎日仕事をしているんですよ。土・日も休まず仕事をします。それが趣味でもあるんです。いつも、常に作品のことを考えています。新しいテーマでいろんなものを描いてゆきたいと思っています。難しいテーマにもチャレンジすることもあります。例えば、“死”という概念を、子供達に伝えるような作品とか。そういうものは本当に難しく、どういうストーリーにするかということをずいぶん考えます」と語った。優しく温かいブルーナさんは、ポジティブな強いエネルギーにあふれている。まるで太陽みたいだな、と思いながら私はブルーナさんの話をきいていた。
ブルーナさんは話を続けた。「私は、ストーリーをハッピーエンドで書くことを基本にしています。それは、子供達が読み終わったあと、温かくうれしい気持ちになれるようにハッピーエンドで終わることが大切だと思うからです。小さな子供達が、私の作品に触れて幸せな気持ちになってほしいと願っています」
子供達ばかりでなく、お兄さんお姉さん、お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃんも、みんな幸せな気持ちになっている。
(以上は本編の一部です。詳細・続きは書籍にて)

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