「言語化にモヤモヤする」

「即答よりじっくり考えるほうが大事」

「口下手のままでもいいじゃない」…

など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)


呆れるほど「説明がヘタクソな人」の特徴・ワースト1



「説明がヘタクソな人」とは?

「説明が下手な人」と聞くと、多くの人は、「話がまとまっていない人」をイメージします。


 ですが実際には、説明が下手になる原因はもっと根深いものです。


『言語化だけじゃ伝わんない』という本では、「説明」とは単に言葉を並べることではなく、「相手がどこで迷うか」を想像することだと語られています。


 そして、多くの人が見落としているのが、「まぎらわしい情報」の存在です。



人は「知っている道」を説明できない

 本書では、まずこんなエピソードが紹介されています。


以前、家の近くを散歩していたら、「駅はどっちですか?」と聞かれたことがありました。自分なら駅までは簡単に行くことができます。

それなのに私は「うーん」と言葉に詰まってしまいました。

それは、言葉で説明するには道順がけっこうややこしかったからです。

「まっすぐ行って2本目を左、突き当たりまで行って右……」という感じで説明した後、「あとは適当に、その辺の人にもう一度聞いてください」と答えてしまいました。

――『言語化だけじゃ伝わんない』より


 自分では簡単に行ける場所でも、「言葉だけ」で説明しようとすると急に難しくなる。


 なぜなら、人は普段、「景色」や「感覚」で移動しているからです。

 つまり、説明が苦手な人は、「相手が見えていない景色」を前提に話してしまうのです。



本当に難しいのは「まぎらわしさ」

 本書では、さらに韓国・ソウルでの体験が語られます。


これは以前、韓国のソウルに行ったときのことです。

到着した空港で電車・バスの乗り放題カードを買うために、インフォメーションセンターで店までの道をたずねました。

すると、センターの方が「すぐそこのエスカレーターを降りて、地下鉄の駅の改札の前にあるコンビニで買える」と教えてくれました。

具体的な店名は「GS25」だとも教えてもらいました。

「なるほど」と思って駅の改札に向かっていくと、たしかにコンビニがありました。

が、そこにあったのは「セブン‐イレブン」だったのです。

もしかしたらコンビニならどこでも乗り放題カードが売っているかもしれないと思って、店員に聞いてみましたが売っていませんでした。

おかしいと思ってさらに歩いていくと、実は改札は2つありました。

そして、該当するコンビニ「GS25」は、そちらの改札の前にあったのです。

――『言語化だけじゃ伝わんない』より


 説明自体は間違っていません。ですが、「途中で勘違いしそうなポイント」が抜け落ちていた。


 つまり、説明が上手い人とは、「正しい情報を言える人」ではなく、「相手がどこで迷うか」を想像できる人なのです。



「正しい説明」だけでは不十分

 本書では、最後にこう語られています。


説明する側からすれば、「改札の前にあるコンビニ」は正しい情報です。

なにも間違っていません。

店名も言っているし、間違いありません。

「1つ目の改札前ではない」ということまで伝えるのは地味に大変です。

目的地までの道のりを説明することと、その手前にある「まぎらわしい情報」を説明することは別ものだからです。

店名だけを目がけて行けば、1つ目の改札にはひっかからなかったかもしれません。

なんというか、私がわざわざ間違えたようなものです。

もし「まぎらわしい情報を避けること」までを言葉にするなら、文章は長くなります。

情報が多ければ覚えきれないかもしれないし、少なければ間違えるかもしれない。

ちょうどいい説明とは、とても難しいものなのです。

――『言語化だけじゃ伝わんない』より


 これは、説明の本質です。説明が下手な人は、「自分が知っていること」をそのまま話します。


 一方、説明が上手い人は、「相手がどこで間違えるか」を先回りして考えている。だから、伝わるのです。



「相手の迷子ポイント」を想像する力

 最近は、「言語化能力」が重視されています。


 ですが、『言語化だけじゃ伝わんない』を読むと、「説明力」とは単なる語彙力ではないことがわかります。


 本当に大事なのは、「相手が見ている景色」を想像すること。

 どこで迷うか。何を誤解するか。どこを省略すると危険か。


 そこまで考えられる人ほど、説明がうまい。

 つまり、説明力とは、「たくさん話せる能力」ではなく、「相手の頭の中を想像する能力」なのです。


ヤギワタル

1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。

これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。

WACOCA: People, Life, Style.

Pin