創業110年を超える老舗書店・有隣堂の公式YouTubeチャンネル『有隣堂しか知らない世界』が、企業メディアの常識を塗り替えている。累計再生2.1億回超え、チャンネル登録者52万人という数字以上に特筆すべきは、平均視聴維持率60%、生配信でニッチな図鑑4000冊を約10分で完売させる視聴者の「熱量」だ。まもなく6周年を迎える同チャンネルの長く愛される秘訣を探った。
神奈川を中心に東京、千葉、兵庫、大阪にて約40店舗を展開する有隣堂(横浜市)には、お客さんが「聖地」として訪れる店舗がいくつかある。伊勢佐木町本店や横浜駅西口店(どちらも横浜市)、アトレ恵比寿店(東京・渋谷)などだ。実は、これらの店舗は、YouTubeスタジオがあったり、有隣堂のYouTubeチャンネル『有隣堂しか知らない世界』(略称:ゆうせか)に何度も出演している社員が在籍したりしている店舗。YouTubeチャンネルの視聴者がファンとして各店を巡礼しているのだ。
『有隣堂しか知らない世界』
老舗書店・有隣堂の社員らが出演し、自社ならではの視点で本や文具、カルチャーを紹介するYouTube発のトーク番組。売り場づくりや商品開発の背景、業界動向などを具体的なエピソードを交えて解説し、書店ビジネスの内側を可視化。専門性と娯楽性を兼ね備えた内容が支持を集めている。
「(有隣堂が出店していない)九州や北海道、さらには海外からも、目的地として有隣堂に足を運んでくださる方が増えた」と、『ゆうせか』を運営するデジタルクリエイティブチーム課長の渡邉郁氏は語る。
有隣堂は、社員の言葉を借りるなら「ごくごく普通の地方書店」だ。そんな普通の地方書店が運営するYouTubeチャンネルが、登録者数52万人以上、チャンネル累計再生回数が2.1億回を超えるのだから、決して”普通”とは言えないだろう。
有隣堂がYouTubeに進出したのは、19年、副社長(現、代表取締役 社長執行役員)である松信健太郎氏の「これからの時代、必ず動画が必要になる」という一言がきっかけだ。新しい挑戦としてYouTubeチャンネル『書店員つんどくの本棚』を立ち上げ、書籍を紹介する動画を制作した。
しかし公開1週間で再生数42回という数字をたたき出し、テスト期間3カ月ののちにリニューアルを決断。以前はチャンネル名に「有隣堂」を使用していなかったが、神奈川県での有隣堂の知名度を使わない手はないと現在の『有隣堂しか知らない世界』に変更、番組の内容も「有隣堂のファンを増やすこと」を目標に、大幅にかじを切った。
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