
入り口すぐのメインの平台に平積みで展示する(紀伊国屋書店大手町ビル店)
本はリスキリングの手がかりになる。NIKKEIリスキリングでは、ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチし、本探し・本選びの材料を提供していく。
今回は、定点観測している紀伊国屋書店大手町ビル店だ。ビジネス書の売れゆきは順調という。最近はビジネス書以外の一般書の展示を充実させたところ、そちらの売れゆきが伸び、店全体の売り上げが伸びているそうだ。そんな中、書店員が注目するのは、ビジネス総合力を底上げするのに有効な「たたき台」の作り方を丁寧に説いた若手ビジネスパーソン向けのスキル本だった。
たたき台作りこそ成長の道
その本は萩原雅裕『たたき台の教科書』(東洋経済新報社)。著者の萩原氏はベンチャー・中小企業の社長に伴走する経営アドバイザー。NTTデータやベイン・アンド・カンパニー、日本マイクロソフトなどを経て、ワークスモバイルジャパン(現LINE WORKS、東京・渋谷)の創業に参画、ビジネスチャットツール「LINE WORKS」の立ち上げに携わった。その後独立し、今は本書のテーマである「たたき台」作りの技術の普及に努めているという。
そんな著者が良いたたき台を作り、徹底的にたたかれることこそ成長の道だと説く。良いたたき台とは何か、それはどのように作るのか、たたき台を基にどのように良いフィードバックを引き出し、次のアクションにつなげていくのか。たたき台を通じたスキルアップの方法をビジネス初心者に向けて丁寧に解き明かしたのが本書だ。
たたき台とは営業施策や業務改善施策など、ビジネスの様々な場面で使われる一次原案的なものだ。たたき台をたたくことで施策をブラッシュアップし、より高い成果につなげる。これをうまく作ることができれば、仕事を前に進める大きな力になるし、フィードバックをもらいながら自分のビジネス力を向上させていくことができる。
仕事の構造とは「現状×打ち手=期待する成果」
著者によれば、良いたたき台を作るコツは「仕事の構造」を押さえることだという。その上で良いたたき台を4つの条件で定義づける。①ゴール(期待する成果)が合っている、明確になっている②検討の前提が合っている、整理されている③打ち手の選択肢が複数検討されている④その中から、期待する成果に最もつながりそうな案が1つ選ばれている――の4つだ。
この4条件はそのままたたき台作りのステップに変換できる。期待する成果は何か、現状はどうなっているか、その差を埋める打ち手は何か。この3つの問いに仮の答えを入れるだけで立派なたたき台になると著者はいう。
仕事の構造とは「現状×打ち手=期待する成果」という方程式で表せる。ここを押さえた上で仮置きでもいいから答えを埋めれば、劇的なスピードでたたき台作りが進むと著者はいう。
さらに実際のたたき台作りに取り組むときはアクション動詞でタスクリスト作ることを勧める。「新しい企画を検討する」ではなくて「明日、競合A社の事例を3つ集める」といった具合だ。
このように大筋を示しつつ、現状把握するときや打ち手を考えるときのフレームワークの使い方や生成AI(人工知能)の活用法など、細かな手法についても触れており、どうすれば考えあぐねることなく、高速でたたき台を作れるか、そのポイントがステップに沿ってわかりやすく示されていると言っていいだろう。
「入ったばかりの新刊だが、新年度の始まりということもあってか、よく動いている」と店長の瓜生春子さんは話す。言われたことをやるだけの段階から抜け出したい入社2〜3年目のビジネスパーソンには、ちょうどいい一冊のようだ。
5位に「オルカンの生みの親」の長期投資論
それでは、先週のランキングを見ていこう。
1位は会社売却を検討するオーナー経営者のための実践的なM&A(合併・買収)ガイド。多くのM&A仲介を手掛けてきた専門家の著作だ。2位には、投資家で人気ユーチューバーでもある著者による投資戦略の解説書が入った。
3位と4位はいずれも野村総合研究所による調査・研究書で、3位は人口減少が進む日本の再興戦略を国、企業、個人の3つの視点から考察、4位は長期の調査や国際比較を基に今の消費者像とマーケティングのあり方を考察した本だ。5位は「オルカンの生みの親」といわれる資産運用のプロが長期投資の考え方を説いた本だった。表にはないが、今回紹介した『たたき台の教科書』は6位だった。
(水柿武志)

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