東京・品川にオープンしたシネコン「TOHOシネマズ 大井町」で、ドルビーシネマの開業を記念した特別上映会が開催された。上映会には、Netflix映画『新幹線大爆破』の樋口真嗣監督と、同作で音楽を手掛けた岩崎太整氏によるトークセッションが行なわれた。
■ クリエイターや配信業者/放送局には技術を無料で提供
TOHOシネマズ 大井町は、大井町駅直結の大型複合施設「OIMACHI TRACKS」内にあるシネマコンプレックス。
館内には重低音を売りにした「轟音シアター」やTOHOシネマズ独自のPLF「プレミアムシアター」に加え、都内のTOHOシネマズでは初めてとなるドルビーシネマなど、全8スクリーン(計1,205席)を備えている。
上映会の冒頭、ドルビーラボラトリーズ 日本法人社長兼東南アジア・大洋州統轄の大沢幸弘氏が登壇。挨拶とともに、ドルビー技術の普及状況などを語った。
「いまドルビーの技術は映画制作に色々使っていただいている。大きな声では言えないが、技術使用料はクリエイターやサービス配信業者や放送局の皆さんには無料で提供している。我々大勢の技術者が10年、20年とかけて開発した技術を無料で提供している。体験が全然違う。是非世界中の人が、日本中の人がいい作品を最高の技術で仕上げて頂きたいと願っている」
「2013年の末、TOHOシネマズさんがドルビーアトモスの映画館を作られた。あの時はまだアトモスって何だ? というような頃だったが、それから13年が経ち、今では皆さんの家庭やモバイルにドルビーの技術が採用されている。Netflixやディズニープラスにもドルビービジョンやアトモスが採用され、Apple Musicの空間オーディオにもアトモスが使われ、iPhoneのビデオ撮影にはドルビービジョンが使われている」
「テレビに関しては、ソニーやパナソニック、シャープ、レグザなど、ドルビー技術の搭載率は先進国の中で最も高い。4Kテレビでドルビー対応ではないものを探すのが大変なくらい」
「ただ、放送は遅れている。世界のスポーツ中継はオリンピックでも、FIFAワールドカップでも、アメリカンフットボールでも、臨場感あふれる立体的なドルビーの技術で中継・配信されている。20数か国が先を行っている。我々はその他170か国の1つになっている。日本の配信業者がいつまでも放置されるわけないと思うので、ブレイクすると思う」
「そういう意味では自動車もビハインドしている。海外勢がドルビーアトモスカーを売って走らせている。一度音楽を聴きだしたら、目的地に着いても曲が終わるまで降りられない、そんな世界、体験が拡がり始めている」
■ ドルビー技術は思い切りのよい“ぶっこみ方”ができることが魅力
イベントでは、Netflix映画『新幹線大爆破』の樋口真嗣監督と、同作で音楽を手掛けた岩崎太整氏によるトークセッションが行なわれた。
樋口監督は「最前列で観たという事もあるけれど、やはりスクリーンサイズがデカいということは圧倒的に気持ちがイイ! それからドルビー技術は、映画館でないと体験できないぐらい、思い切りのよい“ぶっこみ方”ができることが魅力ではないかと。今までであればスピーカーが壊れないようにとか、ハード的な制約も考えなければならなかったが、ドルビーの技術で音の表現範囲が拡がった。映像に関しても、我々が意図したもの通りに上映されて、それが配信でも実現可能になった」とコメント。
「放っておくと、作ってる人間も上映する人間もみな目先の利益の事しか考えなくなる。でもこうした技術が出てくることで、これぐらいちゃんとやらなきゃダメだぞ、お客さん納得しないよという“掟”のようなものを我々は課せられる。映画の歴史と共に歩んできたドルビー、ドルビー博士やその末裔の技術者たちの恩恵を受けてきた身として本当にありがたいことだなと思う」
音楽家の岩崎氏も「音の“空間”を作り出せるのがドルビーアトモスの魅力。映画の中に入ったような、まるでライブ会場や運転席で音を聴いているような、立体的な表現が可能になった。映画を体験的なものにしてくれる」と魅力を解説。
「特別な体験を味わってほしいという意味で劇場鑑賞も大事ですが、ドルビーアトモスは空間を作ることができるので、家庭でも十分にその環境を作ることができる。例えば、アトモスのヘッドフォンを使ったりだとか、ドルビーの技術ですぐに非日常が味わえる。そうした技術によってどれだけ体験が変わるのか、ということをいろいろな方が感じてもらえると嬉しい」
そしてトークセッションでは、樋口監督から「『NO MORE 映画泥棒』をいい音にして欲しい」と提案が飛び出す場面も。
「『NO MORE 映画泥棒』はおそらく映画館で1番観られている作品。なのに、ステレオはもったいない。最初ステレオで始まって、途中からチャンネルが拡がっていくようにするとか、是非ドルビーの力で最高の音質にしてほしい」と話し、会場を沸かせた。
最後にドルビージャパン ライセンサ&エコシステムシニアディレクターの鈴木勝氏が挨拶。
「ドルビー技術による感動の体験は、いまや映画館だけのものではない。テレビやオーディオシステム、モバイルへと広がっており、さらに車の中でも楽しめる時代になってきた。場所を選ばず我々の日常に確実に浸透してきている。ドルビーは今後も劇場、ホーム、モビリティあらゆる場面で感動のエンターテイメント体験を展開していきたい」と語り、上映会を締めくくった。
AV Watch,阿部邦弘

WACOCA: People, Life, Style.