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楽曲に託した想いと充実のソロ、自身の音楽スタンス、
ライブについて語る山内総一郎インタビュー
フジファブリック活動休止を経てソロ活動を開始
楽曲に託した想いと充実のソロ、自身の音楽スタンス、
ライブについて語る山内総一郎インタビュー
2025年2月のフジファブリックの活動休止から半年を待たずに、昨夏山内総一郎がソロ活動を開始した。ソロ活動の軸となるA-UNプロジェクトを立ち上げ、ファンが選んだ曲「旅にでる」と「GOOD FELLOWS」を10月にリリース。それから現在までに全6曲を配信リリースしている。インタビュー時に「寝ている時とご飯を食べている時以外はずっと何かを作っている感じ。充実しています」と笑顔を見せていたが、彼の中には今表現欲求が湧き、溢れているのだろう。長く過ごしたバンドでの日々への想いと、これから先に広がる未来への期待が綴られた「旅にでる」以降のソロ活動を振り返りつつ、賑やかな最新曲「BANBANZAI!!」に込めたちょっぴりシリアスな胸のうちや、いよいよ4月24日(金)になんばHatchで開催されるワンマンライブ「ぶらんにゅーでい」について話を聞いた。
友達と会話をしているように音楽を作れたらいい
――本格的なソロ活動が始まり「旅にでる」から最新シングル「BANBANZAI!!」まで6曲がリリースされています。山内さんはフジファブリックでもいろんなタイプの曲を作ってこられましたが、ソロでも1曲1曲それぞれに色の違った曲が世に放たれている印象を受けます。
「ありがとうございます。ソロで作品をリリースさせてもらえるんだから、音楽も音楽以外でも自分がこれまでに影響を受けてきたものや、そもそもバンドをやる以前のもっとプリミティブな自分自身というものも表現したいなと思っていて。リリースする順番も、ざっくり言うと自分らしい曲というか素の自分から順にどんどん出していっているような感覚がありますね」
――そうなんですね。
「例えば最初にリリースした「旅にでる」「GOOD FELLOWS」は、僕のソロ活動のA-UNプロジェクトの一環として、リスナーの方と一緒に選んだ曲で、ファンの皆さんとの信頼関係があった上で、”きみはここからなんじゃないか?”って言ってもらっている気がしました。自分としてもギターのコードを鳴らしながら歌ってる感覚って、僕が音楽を始めた頃にあったものなんですよね。最初に父親がコードを一つ教えてくれて、そこから徐々に弾けるコードが増えていって、スピッツとかMr.Childrenの曲をコードで弾きながら自分の部屋で机に向かってボソボソ歌ってた。それがスタートだったので」
――「旅にでる」を最初に聴いた時、「穴の温もりがまだ/ここにある」という歌い出しに、フジファブリックのアルバム『LIFE』(2014年)のジャケットを思い出しました。
「もうその通りですね。僕もその感覚です。そこの内省的な部分や、けどあの当時よりもうちょっと外を向いているだろうなという感覚がこの曲にはあって。自分の状況とダブらせている歌ではあるけど、バンドがあってメンバーやスタッフ、ファンの皆さんも含めたぬくもりの中でというのは今もなくなったわけじゃなくて、それを持ったまま進んでいくんだという気持ちが1行目に書けて、これは自分の中でしっくりくる曲になるだろうなって。今話していて思ったけど、自分の中でしっくりくる曲というのがすごく重要だったんですよね」

4月5日 東京・恵比寿ザ・ガーデンホール公演より
――歌詞って1行目から書かれるんですか?
「曲によりますね。最後の行から書くものもあればサビから作るパターンもありますし、でも1行目から書くのが一番多いかもしれないです」
――小説家の書き方にも通じそうですね。
「作詞においてプロットみたいなのを書くことはありますね。細かく書くわけじゃないし、書いてもプロット通りに行くことはなかなかないけど、曲によっては物語をたくさん書いてそれの要所要所をつまんでいくパターンもありますね。「ソラネコ」はその感じでした」
――「ソラネコ」はファンタジックな曲ですね。ストリングスアレンジはスタイル・カウンシルの「シャウト・トゥ・ザ・トップ」(’84年)を彷彿とさせます。ファンタジックな世界とマッチしていますが、「シャウト・トゥ・ザ・トップ」はプロテストソングともいわれるメッセージ性の濃い曲でもありますね。
「そうなんですよね。メッセージもあるし、ビートを活かすストリングスですね。スタイル・カウンシルも、ジャミロクワイもそうかもしれないけど、グルービーというかストリングスの使い方がビートを活かしていて、そういうのを目指してました。フジファブリックの曲でいうと「Green Bird」もそうですね」
――ですね。曲によっていろんなアイディアが注ぎ込まれているんですね。
「そうですね。バンドもいい感じで、みんなめっちゃ優しくて柔らかい人たちで、空気感も合うんですよね。キーボードの大樋祐大君(SANABAGUN)だけは若くて、あとのメンバーは同世代ですね。砂山淳一(b)は僕が中学時代に初めて組んだバンドのメンバーでその頃からずっとつながってます。ストリングスのチェロの内田麒麟もそのバンドのメンバーだった人なんですよ。伊藤大地(ds)はフジファブリックの時から叩いてもらってますし、さかのぼれば彼がまだSAKEROCKをやってる当時、僕も20代前半の頃に永積(永積タカシ、ハナレグミ)くんとかおおはた雄一さんと夜な夜な下北沢でセッションをしてたんですよ」
――そうだったんですか!
「僕がソロでやるとなった時に、あまり外には出さなかったけどちょっと鬱々とした気持ちが続いてた時期があったんですよね。フジファブリックというバンドが止まるのを決めることも人生の一大決心だったし、それをずっと応援してくれているファンの皆さんに伝えることも大きなことで。そこからまた立ち上がるのはなかなかパワーのいることで、そんな時にスタジオに入ろうよって誘ってくれたのが大地くんでした。僕は曲作りは趣味だからちょこちょこ作っていて、”こういう曲があんねん”みたいな感じでやったら”いいじゃん、いいじゃん”みたいに言ってくれて。音楽活動をこれからまたやりたいなと思えたきっかけの一つを作ってくれたのも大地ですね。恩人です。そういう仲間でやってますね」
――恩人ですか。重みを感じます。
「そうは言っても、拳を握って気合を入れて”よし、やっていこう!”みたいな感じじゃなくて、なんかフワーっとしてるんですよ。けど、大事なことって結構フワッと決まるなと思ってて」
――そっかそっか。そうなんですね。
「バンドメンバーは、好きなアーティストが来日した時に一緒にライブに行って、その後みんなで飲みに行ったりする感じの友達なんですよ。レコーディングひとつとっても、言い方であんまり時間を取られないというか、”もうちょいグウェ~ンみたいな感じ”とか、”そこはもうちょいドーンって感じで”っていうニュアンスが伝わるメンバーで(笑)。そういう友達と会話をしているように音楽を作れたらいいなと思っているんですね」
――会話をしているように。良いですね。
「先に見えている道のりの険しさを考えると、五里霧中だし大変だろうなとは思うんです。けど、頑張れば何とかなるかっていう感覚とかも、そういった柔らかい空気の中で覚悟が決まってくるんだなって。これは僕だけの話かもしれないけど、自分の人生を振り返ってみるとあれもこれも全部柔らかい空気の中で進んできているなって」

4月5日 東京・恵比寿ザ・ガーデンホール公演より
僕のライブは問題山積の現実をふっ飛ばしてしまえるものでありたい
――今聞いたお話が「BANBANZAI!!」の歌詞に余すところなく落とし込まれているように感じます。難題だらけとも歌われていますが、「ボクらはきっと笑い合う度に/奇跡をふわっと起こすんだ」という歌詞があったり、曲はにぎやかで陽のエネルギーに溢れていますね。
「良かったです。なんでバンザイだったのかな? 曲を書いている時に何かを連呼したい気持ちになって、出てきたのかな。お手上げとバンザイってどっちも同じように両手を上げますけど、そこには陰と陽、光の部分も闇の部分も、表も裏もあるなと思って。自分の力ではなんともならへんやろうなみたいに思うことも、世界にはあるじゃないですか。戦争もあるし、人によっては受験もあったりいろんなことがある中で、それでも進んでいかないといけないなっていうのは日々感じていて。直接言えることもあるし、言うことによって自分の中で表現したいものとそぐわなくなる時もあったりして。五里霧中だしいかんともしがたいことだらけでお手上げだけど、”お手上げだけども頑張るよ”みたいなところを書きたくて」
――その思いは、この曲を聴く人に伝わっていると思います。
「歌詞ではあえて直接的なことを言ってなかったりもするけど、やっぱり今のこの世の中で起きてる現実的な問題を省いて脳みそが動くことはないんですよね。音楽ってどういう風にあるべきなんだろうなって、コロナの時も大震災の時も思ったんですが、自分は音楽をやりたいからやってるんですよね。けどやらせてもらえている以上、聴く人にとって良い作用というか、安らぎになったり、人の活力になったり、そういうものとして鳴り響いてほしいと僕は思っていて。誰かと誰かとか、何かと何かが絡まりあって、それが化学反応を起こしてすごく良いことにもなれば、最悪になったりもするけど、そんな時でも音楽は希望だと僕は思っていたい。なので、僕のライブはそういった現実をふっ飛ばしてしまうようなものでありたいなっていう希望はあるんですよね」
――『BANBANZAI!!』は間奏のギターもガシガシに弾きまくっていて良いですね。両手を上げてバンザイしたくなるし何より聴いていて楽しいし、曲がちょっぴり変テコなところも山内さんらしさを感じます。
「そうですね。フジファブリックの流れも汲んでいるような感じですね。ギターソロはデモを作っている時に家でヘロヘロって弾いたやつなんですよ。何も考えずに弾いてるのが良いんでしょうね(笑)。この曲を初めてライブでやったのは2025年10月の東京のライブで、そこからちょっと手を加えて、年末の『RADIO CRAZY 2025』で演奏してからまたちょっと変えました。自分としては長く歌い続けたいんですよね。タイアップだったとしても、僕にとっては一生歌いたいものなので、もっと大人になった時にも歌えるように…とかを気にしながら自分の中で言葉を精査したりしましたね。リトル山内とオールド山内を行き来する作り方というか(笑)」

4月5日 東京・恵比寿ザ・ガーデンホール公演より
――先ほどからライブの話も出ていますが、大阪では4月24日(金)なんばHatchでワンマンライブ「ぶらんにゅーでい」が開催されます。
「はい、ブランニューデイ=山内総一郎の真新しい1日、新しい姿を見せられるようなライブにできたらいいなと思ってそのタイトルを付けました。これまでに、もういろんな面を知ってくださっている方もいらっしゃると思うんですけど、そういう方達にも新しく感じていただける、また新たな一面を見せられるライブになったらいいなという感覚です」
――どんなライブになりそうか、少しだけ教えてもらえますか?
「そうですねぇ…ざっくり言うと、アグレッシブなライブになるだろうなって。別に暴れ倒すわけじゃないんですけど、バンドもかなり仕上がってきていますししっかりとみんなの熱量をお見せしたい。僕も含めメンバー全員が内に秘めてる炎がたぎっている人たちなんで、それを表に出したいですね」
――楽しみにしています。これまでリリースされた6曲を聴いて改めて思いましたが、山内さんの歌声を聴いているとホッとします。柔らかだけど山内さんの声だとわかる輪郭があって、何より聴いていて気持ちが救われるというか。
「僕は、目指せカート・コバーンなんですけどね(笑)。”ホッとする”では逆カート・コバーンみたいな感じですね。憧れている声質とかももちろん僕と真逆だなぁと思うんですけど、それをどんどんどんどん受け入れていけるようになってきていますね。自分の中ではすごい歪んでる声を出してるつもりでも、録音したものを聴いたら全然歪んでないんですよね(笑)」
――(笑)。
「声質ってそんなに変わらないんで。けどそのツルンッとする感じもいいなと思えるようになってきたというか。演じることもできないし。僕はもともとギタリストからボーカリストになっていることもあって、歌というものに対して崇高なものというふうに考えているところがあるんですね。歌というのは何の混じりけもないもので、自分の心の声をそのまま出すものなんだって。今の僕もそんな感覚で歌っているんですけど、もうちょっといろんな表現を学ばなきゃなとも思っていて。とはいえ、自分の”そのまま”をお伝えするっていう意識は自分の根底にあると思うし、これからも大事にしていきたいところですね」
Text by 梶原有紀子
(2026年4月20日更新)
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