BALLISTIK BOYZのメンバーである砂田将宏が、単発ドラマ『AIに話しすぎた男』(日本テレビ・関東ローカル)で地上波ドラマ初主演を果たす。このドラマは、ARG(日常侵蝕ゲーム)と呼ばれるジャンルのゲームと連動しており、ドラマ放送前に台本を購入し、その台本を見ながらドラマを観ることで、ドラマ制作の裏側で起こったある事件について調査するゲームを体験することができるというもの。砂田将宏はドラマの主人公・相内亮佑を演じ、ARGゲームには“砂田将宏”本人として出演する。新たな物語体験を提供する同作品について、砂田に話を聞いた。(榑林史章)
【写真】BALLISTIK BOYZ 砂田将宏 撮り下ろしカット
■AIによって「噓なのか本当なのか分からなくなっていく」
ーー台本を読みながらドラマを観ることで、ゲームを体験できるという新しい試みです。最初にこの企画の話を聞いて、どう思いましたか?
砂田:最初はすぐには理解できませんでした。地上波で放送されるドラマがあって、それに関連したゲームがあると、細かく説明していただいて、やっと分かったという印象です。実際に日本テレビさんが手がけたARGの前作を体験して、なるほどなぁと。
ーー『503号室の郵便物』ですね。体験してどんな感想を持ちましたか?
砂田:僕はゲームが好きで、なかでも考えて答えを出す、脱出ゲームや謎解きものが好きなんです。今の時代はタブレット1つあれば遊べる、そこだけで完結するゲームも多いなかで、『503号室の郵便物』は、実際に手に取れる郵便物もあって、それがタブレット内のゲームと連動しているのがすごく面白かったです。難しかったですけど、謎を解き明かしていく時間がすごく楽しくて。実際に経験したことで、ARGというジャンルがどういうものなのか理解することができました。
ーー砂田さんは、今作が地上波ドラマ初主演となります。
砂田:はい。もちろんうれしかったですけど、プレッシャーもかなり感じました。不安もあったし、でも同時に楽しみでもあったし、本当にいろいろな感情が沸き上がりました。
ーー砂田さんは、ドラマ『AIに話しすぎた男』では主人公を演じ、ゲームでは砂田さんご自身として出演されているわけですよね。
砂田:すごくややこしいですよね。ドラマでは相内亮佑という役なのですが、ドラマ撮影の合間に、ドラマの現場でARGの撮影も行われていたんです。だから、1つの作品でクランクインを2回やったみたいな(笑)。本当のクランクインと、ARGのなかでのクランクインがあって、ARGのクランクインのシーンはちゃんと台詞もあるので、すごく不思議な感覚でした。
ーー相内亮佑は、どんな人物ですか?
砂田:職場でみんなから頼られる人気者。いつもみんなの中心にいる、人望が厚い人物です。でもみんなに見せている顔と、そうではない顔という二面性があって。自分のなかに抱えている、誰にも言えないヒミツというか悩みがあって、それはAIにしか相談できない。でもそれも本当の自分の悩みなのか、AIによって導かれたものなのか、噓なのか本当なのか、どんどん分からなくなっていくんです。それで、言ってはいけないようなことも言ってしまったりして、それが自分の本心なのか、AIによって掘り起こされた本性なのか、どんどんわからなくなっていく。
ーードラマ単体としても面白そうですね。
砂田:面白いですよ。AIに話すことによって亮佑がどんどん変わっていくんですけど、ドラマの最初と最後では、全くの別人じゃないかと思うほどです。それはAIによって変えられてしまったのか、それともそれがもともと持っていた本性だったのかわからないんです。展開がすごく早くて、テンポ感があって観やすい。すごく面白いです。
■“砂田将宏”本人役を演じるための役作り
ーーARGのほうでは、その相内亮佑を演じている砂田さんを演じているという。
砂田:そうです。ドラマは、亮佑という役を演じているので、すごく分かりやすいです。でもARGは、その亮佑を演じる砂田将宏として出演していて、そこにはちゃんと台詞もあって……つまり砂田将宏本人という役なんですね。本人だけど今しゃべっている素の自分ではないので「ん?」って(笑)。でも、そういうややこしさも、楽しみながらやらせてもらいました。
ーー従来のドラマとは作り方も違ったのですか?
砂田:ドラマ本編はいわゆるドラマの撮り方です。いろんな作品に出させていただきましたが、現場の空気感は監督やプロデューサーによって全然違うものになって、それがドラマの個性や色になる。今回の現場は、みんなで作る感覚があって、それがすごく楽しかったし、やりやすくもありました。ドラマ後半に進むに従ってシリアスなシーンが増えていくんですけど、その空気感もみんなで作る意識を大事にしてくれていたので、僕としてはやりやすかったしありがたかったです。
ーー台本はドラマ用とARG用が2つあって?
砂田:そうです。順序として、最初はドラマ用の本読みからスタートして、ドラマの合間にARGも撮って、並行して行われていく感じ。ただ僕自身、本読みが始まるまでは、全体像がはっきり見えなくて困惑しました。確かに、簡単に全体像が見えてしまったら、謎も簡単に解かれてしまいますからね。本読みをしたときに、初めて「なるほど! こうなるのか!」と分かった感じです。とは言え、ドラマの相内亮佑はとても難しい役だったので、台本をしっかり読み込んで、役作りも頑張りました。
ーー共演者の方とは、このドラマの面白さについて話されましたか?
砂田:皆さんずっと一緒にいることが多くて、ワイワイと仲のいい感じでした。僕もみんなとのシーンのときは、その輪に混ぜてもらって。皆さんすごく明るくて。ARGのなかで、僕に無茶振りをするADさんが出てくるんですけど、「アカペラで歌ってください」とかいろいろ言ってくるんです。そういうシーンはみんなで笑いながらやって、すごく和やかでした。
ーーそういうアドリブも見どころですね。
砂田:ARGのほうは、謎解きの鍵となる大事な台詞さえちゃんと言えていれば、他は基本的にアドリブで、自分っぽい感じでやっていたので、すごく楽しかったです。
■「10年後はどうなっているのか、すごくワクワクします」
ーーAIも発達して、SF映画の世界が現実になりそうな部分もありますが、こういうAIがもっと発達した未来に対してどんなお気持ちですか? 不安ですか? ワクワクしますか?
砂田:僕は、古き良きものも好きだし大事にしたいと思っていて、昔から受け継がれている文化も好きです。でもAIのような新しいものによって、当たり前だったものが変わることには、あまり恐怖は感じません。AIも言ってしまえば技術の進歩で、技術の進歩があって今があるわけですもんね。むしろ10年後はどうなっているのか、すごくワクワクします。
ーーAIによってなくなる仕事もあると言われていますけど、ライブやダンスパフォーマンスはなくならなさそうですね。
砂田:AIアイドルもいて、歌を聴いてすごい! と思うこともあるけど、それはそれとして、生身には生身にしか出せない魅力があると思うので、常に自分自身を磨いていきたいです。
ーー実際にAIを使ったことはありますか?
砂田:使いますよ。「明日このゴルフ場に行くから、その場所の天気と気温を教えて」とか、そのくらいですけど(笑)。ネットで調べれば分かることですけど、打ち込む手間が省けるので楽ちんです。あくまでも、そういう使い方ですね。
ーードラマのように話しかけていくうちに、AIが学習してその人に合ったものになると聞きます。
砂田:はい。それで役作りも兼ねて、相内亮佑がドラマのなかでAIに相談することを、実際に相談してみたんです。
ーーどうなりました?
砂田:本当にちゃんと相談に乗ってくれました。ただドラマと同じ回答ではなくて。ネタバレになるので詳しくは言えませんけど、チャッピー(ChatGPT)の答えもちゃんとしていて、一定の線引きはあるなというか。でも解決まで行けなくもないなと思いました。気が楽になるように、自分で答えに辿り着けるように導いてくれて。やってみて「すごいな!」と思いました。
ーー実際に砂田さんご自身のことをAIに相談するとしたら?
砂田:「今こういう気分だから、こういうジャンルの映画を観たいんだけど、オススメない?」とかですかね。僕の何千倍も映画の知識があると思うので、僕が知らないベストなオススメ映画をいくつか紹介してくれるんじゃないかと。
■BALLISTIK BOYZのメンバーとの共演も 「初主演で緊張していた僕に力をくれた」
ーーBALLISTIK BOYZの活動で、何かAIを使うとしたら?
砂田:僕たちのグループは、メンバー7人それぞれ違った動物のキャラクターを持っているんですね。僕だったらライオンなんですけど、そのキャラクターと会話できるアプリとか、デジタルペットみたいなかたちでファンの皆さんが遊べるものになったらいいなと思います。あとARGとライブツアーを連動させたら、めっちゃ面白いものになりそうじゃないですか? 会場に足を運ぶことで、そこでしか入手できないヒントを得られて、謎を解くとファイナル公演が観られるとか。そのARGのストーリーが、ライブ中に流れる映像と連動していたりとか。ライブってそもそも観客参加型ですから、そこに謎解き要素が加わったら面白いんじゃないかって。でもこれを読んだ誰かに、先にやられてしまったら悔しいのでやらないでください(笑)。
ーードラマにはBALLISTIK BOYZのメンバーも出演されるとか。
砂田:はい。友情出演してくれているので、冒頭の掛け合いシーンは楽しみにしていてほしいです。ただ出てくれたメンバーはお芝居をやったことがなかったから、ちょっと大変そうでした。ドラマって本番の前にリハーサルがあったり、同じシーンを違う角度から何度も撮影したりするんですけど、そういうことすら知らないメンバーだったから「これあと何回やるの?」って。そういう撮り方とか段取りとか、1つずつ教えてあげました。でも、もともとは台詞もない役だったんですけど、現場で急に台詞がついて、シーンが増えたりして。メンバーも楽しそうだったし、初主演で緊張していた僕に力をくれたことには感謝しています。僕だけじゃなく、メンバーの新たな一面も発見してもらえると思うので、ぜひ楽しんでほしいです。
ーーでは最後に、あらためて今作の魅力や楽しみにしていてほしいことを教えてください。
砂田:ARGとの連動ということで、先に流出した台本を入手していただいて、それを観ながらドラマを観るというのは、今まで誰も経験したことのない体験だし、その台本とドラマの違和感から始まるゲームというのは新しいと思います。ドラマ本編も僕としてはチャレンジだった作品で、何年後かに振り返ったとき、一人の役者としてターニングポイントになった作品と呼べるようなものになりました。そういう作品をかたちとして残せたことが、何よりうれしいです。いろんな人に観てほしいし、僕の新たな可能性を感じていただけたらうれしいです。
榑林 史章

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