『Hon Zuki !』〜名物レビュアーが「いま読むべき1冊」を紹介

評者:安川 新一郎(東京大学客員研究員 グレートジャーニー合同会社代表)

安川 新一郎<Hon Zuki !>

安川 新一郎<Hon Zuki !>
東京大学客員研究員 グレートジャーニー合同会社代表

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2026.4.20(月)

各界の読書家が「いま読むべき1冊」を紹介する書評コーナー『Hon Zuki !』。ノンフィクションを中心に「必読」の書を紹介します。

 本が出てすぐに日本橋の丸善で、この本を買い求めた。

「風の谷をつくる」プロジェクト。

 著者の安宅さんを中心とした様々な分野の専門家が7年以上の歳月をかけた探求、本著はその知見と洞察の集大成だ。

 レンガの塊のような本体、そして構成と目次に圧倒されつつ、情報として吸収するだけでは許されない濃密な何かを感じた。この本のテーマである「開疎な」空間でじっくりと読む(味わう)べきではないかと感じ、都会を離れた旅先で少しずつ読み進めた。

 読んでいる間、常に大聖堂のイメージが頭に浮かんでいた。大聖堂は「読む聖書」とも呼ばれ、識字率の低かった当時、字が読めない人々にも神の国の偉大さを伝える目的も存在した。

 そこで悲惨な現世に対する「オルターナティブ」としての来世の天国を、様々な形で体感するように設計されていた。

壮大な構造物を想起させる構成

 本著は聖書と同じく書籍という形を取っているが、読み進めるうちに、都市ではない開疎な空間「風の谷」の風景、生活、人生、そして希望が立体的に浮かび上がってくる。そのような意味において、壮大な建造物を想起させるのだ(実際に、本を立てるとシッカリ屹立する)。

 

 例えば第1部は、門番が立つ壮麗な門だ。この建造物がどのような目的で建てられ、誰が訪れるべきかが説明されている。

「風の谷」という概念が何か、について、さまざまになされる問いに対して、ひとつひとつ丁寧に「○○ではない」と断って明確にしている。「風の谷」は、地方創生、リゾートでコンパクトシティ、村おこし、エコヴィレッジ、スマートシティ1.0、「ではない」。

 そして「地方」や「過疎地」という、最初からマイナスのイメージする言葉も使わず、開放(Open/Non-contact)と疎(Sparse)を組み合わせた「開疎空間」という新しい捉え方で、課題に取り組む方向性が示されている。

 都市の本質が、古来密(Dense)であり密閉(Closed/Contact)であり、そのオルターナティブとしての「開疎」とは何か、という視点を明確にするためだ。

WACOCA: People, Life, Style.

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