■作品情報
孤独な少女と森の謎の生き物〈オチ〉の交流を描いたファンタジー・アドベンチャー。A24初の本格ファンタジー作品で、ビョークらのミュージックビデオで知られる映像作家アイザイア・サクソンの長編監督デビュー作。主演はヘレナ・ツェンゲル、共演にウィレム・デフォー、エミリー・ワトソン、フィン・ウォルフハード。製作国はアメリカ。

■ストーリー
霧深い山間の村に、〈オチ〉と呼ばれる不思議な生き物が棲んでいる。大きな瞳と耳を持つその存在を、村人たちは何世代にもわたって恐れ続けてきた。オチ狩りに執念を燃やす父マキシムと兄ペトロとともに暮らす、どこか孤独を抱えた少女ユーリは、ある日、森でひとり罠にかかっているオチの子を見つける。ユーリは、言い伝えとはまるで違うその姿に戸惑いながらも、こっそり家に連れ帰って手当てをする。やがてふたりは少しずつ心を通わせ、ユーリはひとりぼっちのオチを家族のもとへ返そうと、旅に出ることを決める。

■感想
まず目を引くのはオチのビジュアルで、CGではなくパペットやアニマトロニクスで作られたその姿は、どこかあたたかみがあってかわいらしい。村中から悪魔のように恐れられている存在とは思えないほどで、ユーリが警戒を解いていく流れにも自然と説得力が生まれます。あっという間に言葉によるコミュニケーションがとれるようになるのは、多少の都合よさを感じますが、ふたりの距離が縮まっていく過程は素直に楽しめます。

ただ、鑑賞後に引っかかりが残るのも正直なところです。ユーリの両親の関係や、母が家を出た経緯といった物語の核心部分が断片的にしか描かれず、人物それぞれの内面がなかなか見えてきません。オチ狩り少年団やオチたちの集落なども、世界観に彩りを加えてはいるものの、そこで何が起きているのかが掘り下げられないまま流れていってしまう印象です。

設定のおもしろさは確かにあるだけに、人物の背景をもう一歩丁寧に描いてくれれば、ラストの感動がもっと深く響いたはずで、そこが惜しいところです。幻想的な映像の質感やオチのかわいさを純粋に楽しみたい方、『E.T.』や『となりのトトロ』のような異種交流ものが好きな方には刺さるのではないかと思います。それでも、ドラマとしての見応えを求めると、やや物足りなさが残るかもしれません。

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