サラリーマンでありながら海外の映画祭でグランプリを受賞した長久允氏。その思考法と脚本術を存分に伝える『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』が発売となりました。佐久間宣行さん、ラランド・サーヤさんも大絶賛の同書から、抜粋・再構成して特別公開します。


脚本の教室Photo: Adobe Stock



自分の感情を起点にする

 私の企画のスタートはいつも「怒り」と「悲しみ」です。


 10代の自殺率が高いという「怒り」と「悲しみ」。


 性教育に対して男性が無知すぎるし、社会構造が女性に不利すぎるという「怒り」と「悲しみ」。


 もっと細かな日常の、たとえばどうして夫婦ってこんなことで喧嘩してしまうの? とか、どうして受験ってこうなっているの? とか、どうしてあの友人は陰謀論にハマってしまったの? という「怒り」と「悲しみ」。


 それらに対して、私ができることは何だろうか。


 政治家ではないのでルールを変えて解決させることはできません。しかし自分が持つスキルとして「脚本を書く/映画を作る」というものがあるので、それを使ってできることをしたいという使命感が常にあります。



空っぽな動機で作ったものは、人の心を震わすことはない

 今でこそたくさんの賞をいただきハリウッドでいくつも仕事をするようになった私ですが、学生のころは、流行りを追い求めて何にも評価されない、という経験がありました。


 大学生の私が当時感じている本当の気持ちや伝えたいことは横に置いて、カッコ良さそうな構造と90年代邦画に多いアンニュイな雰囲気を優先して作りました。


 自分が「最高だと思うか」なんかよりも、他者から評価されることを目指して、「なんとなく映画っぽい」「それっぽい」ものを作っていました。


 当然、そんな映画はさっぱりなんの賞にも引っかからず、ひとつも話題にはなりませんでした。


 空っぽな動機で作ったものは、人の心を震わすことはないのです。



判断基準は「自分がやるべきだ」と思えるかどうか

 そこから10年の社会人生活を経て、今の作り方にたどり着きました。


 たとえば、前述した「10代の自殺率が高い」というニュースを目にして、私は過去の自殺を考えた自分を思い出し、また現在、同じように悩む彼ら彼女たちが絶望を感じないで済むような映画を作るべきだと思いました。


 それが『WE ARE LITTLE ZOMBIES(ウィーアーリトルゾンビーズ)』という映画の始まりです。


 また、「性教育に対して男性が無知すぎるし、社会構造が女性に不利すぎる」点について描くべきだと感じ、『FM999』というドラマを制作しました。


 このように、いつだって、より個人的な怒りと悲しみから端を発して、「私はこれを作るべきである」と思い込み、行動を起こしています。


 逆に言うと、「ちょっとおもしろい話になりそ~だな~」というアイデアを思いついたとしても、それだけで脚本を書くことはほとんどありません。


 単純に「おもしろい物語」に価値があるとは別段思っていないからです。「おもしろい企画」よりも「それをやるべき理由」が私にとって大事なのです。

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