
レビュー&テキスト:岡本剛
Ace Studio Artist Pro 製品概要
AIを用いた総合的な音楽制作ワークステーション。8言語に対応する140以上のAIボイスを使い、入力したMIDIと歌詞から歌声を生成できる。複数のボイスをブレンドしたり、表現やピッチを細かく制御したり、コーラス・モードで複数声部をまとめたりすることも可能。生声を学習してAIモデルを作るボイス・クローン機能も備える。また、バイオリンやトランペット、サックスなどの楽器演奏をMIDIから生成でき、アンサンブルを組める。ジェネレーティブ・キットでは、テキスト・プロンプトに応じたトラックの生成、レイヤーの追加、既存曲の再構築などが行える。そのほか、ボイス・チェンジャーやステム分離、オーディオのMIDI変換機能も搭載。ACE Bridge 2プラグインを通じて主要なDAWと統合でき、ARAリンクによるテンポ同期も可能。生成された音源はロイヤリティフリーで利用できる。AI機能を使用する際は、インターネット接続が必要とのこと。
DAWへの導入がスムーズ
近年のAI歌声合成の進化はすさまじく、もはや人間との区別が困難なレベルに達していることは周知の通りだ。筆者も普段から仮歌用途などで愛用しているが、初めて触れたAce Studio Artist Proのポテンシャルには驚かされた。
最新のV2エンジン(Beta)も搭載されているが、安定性を重視し、今回の検証ではV1エンジンで試用した。ABLETON Liveとインストゥルメント・プラグインACE Bridge 2を介して同期させたところ、連携は非常にスムーズだ。優れたUIのおかげで、マニュアルに一切目を通さずともサクサク使い始められた。DAWを日常的に触っている人であれば、導入したその日から違和感なく操作できるはずだ。
何より楽しいと感じたのが、最初から140以上のAIシンガーがライブラリーにそろっているところだ。曲のイメージに合わせて、次々にリアルなボイスを試して、最適な声を選び抜くことができる。インターネット接続が必要な点についても、オフライン・ソフトでのレンダリング待ちと比べて、スピード面で特に不便は感じられなかった。

ボイス・ライブラリー。筆者の環境はV1のため、対応言語は4言語までとなるが、V2(Beta)では、140以上のAIボイスと日本語を含む8言語での歌唱生成が可能だ
ボイスミックス機能により個性化できる
ボーカル合成が普及するにつれ、ほかとの差別化が難しくなっているが、“ボイスミックス”機能はその懸念を見事に解消してくれる。今回は中性的な男性ボーカルTrineをベースに、ロック的なパンチを持つSteelを40、さらに女性モデルAkesatoを45配合してみた。面白いのは、“声質”と“スタイル”を個別に調整できる点だ。Akesatoから声質のキャラクターのみを抽出することで、既製品にはない“自分だけの歌声”をデザインすることができた。

筆者が試したボイスミックス機能の画面。複数のボイスを融合でき、声質とスタイルで細かくカスタマイズすることが可能
細かな追い込みも実に直感的だ。テンションやブレシネスなどのパラメーターを、DAWのオートメーションを描くように制御できる。中でも“ファルセット”の調整は秀逸だ。高いノートへ移った際に地声で張り上げるのではなく、あえて中性的な響きに留めることで、現代的なJポップの質感に見事にはまってくれた。

エモーション・パラメーターの中にあるファルセット機能。ファルセットで裏声を調整できるほか、呼吸音やブレシネス、テンションなどの表現もコントロールできる
インストゥルメントの完成度も高く、特にMIDIノートの長さから奏法をAIが自動判別する機能が優秀だ。キースイッチなどの手動操作を介さず、スピーディに自然な演奏を再現できる。その手軽さは楽曲のラフ・スケッチに最適なのはもちろん、十分なクオリティを備えているため、そのまま本番のトラックとして活用できる場面も多いだろう。アンサンブル・モードによる複数レイヤーの容易さも含め、制作のあらゆる局面で重宝するはずだ。

上部の選択バーで奏法を選択できる。デフォルトでは、メロディを解析して最適な演奏法を自動的に適用するSmartモードが設定されている
既にほかのソフトを持っている人にとっても併用する価値は十分にある。今後のアップデートにも期待が膨らむばかりだ。
岡本剛
【Profile】作編曲家としてAimer、Kis-My-Ft2や、NHKなどのメディアへの楽曲提供や制作を行う。洗練されたサウンド・メイクとギターは業界内の信頼も厚い。ABLETON認定トレーナー。Sleepfreaks講師。
ACE STUDIO Ace Studio Artist Pro
89,100円
REQUIREMENTS
⚫OS:Mac(macOS 13.0〜26)/Windows(Windows 10/64ビット、Build 1809以降〜11)
⚫共通:AI機能を使用する際は、インターネット接続が必要
