石井琢磨、高嶋ちさ子 (撮影:池上夢貢)

石井琢磨、高嶋ちさ子 (撮影:池上夢貢)

『イープラス presents スタクラ 2025 in 横浜 ーSTAND UP! CLASSICー』が2025年10月4日、横浜みなとみらいホール 大ホールで開幕した。

オープニングを飾ったプログラムは、「ちさ子と琢磨のなるほどクラシック入門」。出演は、石井琢磨(ピアノ、MC)、高嶋ちさ子(ヴァイオリン、MC)、12人のヴァイオリニスト、近藤亜紀(ピアノ)という面々。演奏やトークはもちろん、レクチャーや、演芸のようなパフォーマンスまで、彩り豊かな企画が約90分という時間の中にギュッと凝縮され、幕開けにふさわしい盛況ぶりをもたらした

この「スタクラ」(STAND UP! CLASSIC FESTIVAL)は、当初(2018年)横浜赤レンガ倉庫広場における日本最大級の野外型クラシック音楽祭として出発したイベントだ。その後、パンデミックや猛暑の影響を経て、場所や形態を変えるなど工夫を重ねながら進化・発展を遂げ、今回は所縁のある横浜の地に舞い戻り、360°方位のクラシック専用ホールとして定評のある横浜みなとみらいホールに初お目見えとなった。

頃は十月のはじめ、長引いていた猛暑がようやく落ち着いてきた土曜の午後。多くの“スタクラファン”が会場に集結する中、注目の公演はオンタイムで開始された。先ずはヴァイオリンの高嶋とピアノの近藤がステージに登場し、おなじみ「ラデツキー行進曲」(ヨハン・シュトラウス1世)を奏で始める。すると程なくして一階客席中程の横通路の両端から、色とりどりの衣裳を着けた12人のヴァイオリニストたちが二手に分かれて現われ、左右二本の縦通路に進むと、そこに留まり優雅に演奏。客席からは堪らず強力な手拍子が湧き起こり、演者と観客の一体感は早くも極限に達したかのよう。やがて12人のヴァイオリニストも舞台に上がり、真っ赤なドレスに身を包んだ高嶋を中心に、横一列に並んだり鶴翼の陣形を作りつつ、ダンサブルな動きを見せるや、その壮観ぶりが更なる客席の興奮を呼び覚ましてしまうのだった。

高嶋ちさ子(vn)、近藤亜紀(p) (撮影:池上夢貢)

高嶋ちさ子(vn)、近藤亜紀(p) (撮影:池上夢貢)

高嶋ちさ子(vn)、12人のヴァイオリニスト(vn)、近藤亜紀(p)

高嶋ちさ子(vn)、12人のヴァイオリニスト(vn)、近藤亜紀(p)

次いで12人のヴァイオリニスト個々のメンバー紹介が高嶋によってユーモアたっぷりに行なわれた後は、高嶋+12人+近藤でベートーヴェンの「交響曲第9番」が思いのほかメロウなアレンジで披露された。その後は、ピアニストの石井が高嶋から呼び込まれての掛け合いトーク。石井はそのまま自身のコーナーに滑り込み、「一番緊張する(高嶋との)トークを乗り越えたので安堵した」と心情を吐露して会場の笑いを誘うや、語りが流暢に走り出す。その表情は清々しく晴れやか。それでいて、ベートーヴェン(悲愴第二楽章、エリーゼのために、月光第一楽章)や、モーツァルト、ショパンの演奏は、いずれも繊細かつ深みをうかがわせる、本気度の高さを見せつけた。

石井琢磨、高嶋ちさ子 (撮影:池上夢貢)

石井琢磨、高嶋ちさ子 (撮影:池上夢貢)

石井琢磨(p) (撮影:池上夢貢)

石井琢磨(p) (撮影:池上夢貢)

続いては高嶋と12人のヴァイオリニストが再登場(高嶋は青に、12人は赤に衣裳カラーをチェンジ)し、ヴァイオリンの色々な奏法を実演レクチャー。12人のメンバー全員が高度なテクニックの持ち主であることをこれでもかというくらい証明すると、石井のピアノと共に「ラ・カンパネラ」を演奏。同曲はリストが編曲したヴァージョンがよく知られているが、今回はパガニーニ作曲のオリジナルのヴァージョンに、先ほど紹介したヴァイオリンの諸技巧を散りばめる趣向で名人芸の集大成を聴かせた。

石井琢磨、12人のヴァイオリニスト (撮影:池上夢貢)

石井琢磨、12人のヴァイオリニスト (撮影:池上夢貢)

そんなスリリングなプレイのあとには、「一芸選手権」と称して、12人のヴァイオリニストのメンバーによる文字通り「一芸」を次々と繰り出す。最初はその可笑しみに「息抜きの余興か?」と思わせるも、実のところ、左手でヴァイオリンを弾きながら右手で巧みにケン玉をプレイしたり、金ピカ衣裳の二人組がヴァイオリンでマツケンサンバを弾きながら同時に足踏み鍵盤を鳴らす等々、超絶技巧の曲芸パフォーマンスを次々と演じるに至り、そのつど客席をどよめかした。それぞれの驚異的「一芸」に対して、大きな拍手喝采が巻き起こったことは言うまでもない。

(撮影:池上夢貢)

(撮影:池上夢貢)

(撮影:池上夢貢)

(撮影:池上夢貢)

(撮影:池上夢貢)

(撮影:池上夢貢)

(撮影:池上夢貢)

(撮影:池上夢貢)

終盤は、高嶋+12人+近藤によるピアソラの「リベルタンゴ」、高嶋+12人+石井によるビゼーの「カルメン・ファンタジー」といった、よく知られたクラシックの名曲をノリノリの演奏で次々と披露。ラストの高嶋+12人+石井+近藤によるロッシーニの「ウィリアム・テル序曲」では、スマホでの録画も特別にOKという大盤振る舞いが。来場客には、このうえないお土産を得た気分だろう。

石井琢磨、高嶋ちさ子、12人のヴァイオリニスト、近藤亜紀 (撮影:池上夢貢)

石井琢磨、高嶋ちさ子、12人のヴァイオリニスト、近藤亜紀 (撮影:池上夢貢)

この日(10月4日)はさらに、17:00開演回として『あなたの思い出リクエスト 〜アニメ・シネマ名曲コンサート』(約90分)。出演:菊池亮太(ピアノ)、紀平凱成(ピアノ)、12人のヴァイオリニスト、野々村彩乃(ソプラノ)、高嶋ちさ子(トークゲスト)、石井琢磨(MC)、が上演された。

翌日(10月5日)は、次の3プログラムが予定されている。
●11:00開演/『ピアノの森 Special』(約80分)
 出演:髙木竜馬(ピアノ)、ニュウニュウ(ピアノ)、東亮汰(ヴァイオリン)、橘和美優(ヴァイオリン)、 川本嘉子(ヴィオラ)、矢部優典(チェロ)、吉田秀(コントラバス)、ナビゲーター:naco(厳選クラシックちゃんねる)。
●14:40開演/『務川慧悟 ALL CHOPIN(オール ショパン)』(約60分)
 出演:務川慧悟(ピアノ)
●18:40開演/『ガーシュウィン meets ラヴェル』(約80分)
 出演:上野耕平(サクソフォン)、菊池亮太(ピアノ)、務川慧悟(ピアノ)、ニュウニュウ(ピアノ)、三浦一馬(バンドネオン)、児玉隼人(トランペット)

この機に、ビギナーにも楽しめるクラシック音楽の魅力、そして、「これぞスタクラ」と思わせる醍醐味を思う存分に味わってみてはいかがであろうか。

石井琢磨、高嶋ちさ子、12人のヴァイオリニスト、近藤亜紀 (撮影:池上夢貢)

石井琢磨、高嶋ちさ子、12人のヴァイオリニスト、近藤亜紀 (撮影:池上夢貢)

公演情報

『イープラス presents スタクラ 2025 in 横浜 ーSTAND UP! CLASSICー』
 
開催日程:2025年10月4日(土)・5日(日)
会場: 横浜みなとみらいホール 大ホール(横浜市西区みなとみらい2-3-6)
 
◆各公演券(一般発売日より販売)
10月4日(土)「ちさ子と琢磨のなるほどクラシック入門」
10月4日(土)「あなたの思い出リクエスト 〜アニメ・シネマ名曲コンサート」
各公演 全席指定 5,500円(税込)
 
10月5日(日)「ピアノの森 Special」
10月5日(日)「務川慧悟 ALL CHOPIN(オール ショパン)」
10月5日(日)「ガーシュウィン meets ラヴェル」
各公演 全席指定 4,500円(税込)

 

◆各公演詳細
『ちさ子と琢磨のなるほどクラシック入門』
日程:10月4日(土)13:00開演(約90分)
出演:石井琢磨(ピアノ、MC)、高嶋ちさ子(ヴァイオリン、MC)、12人のヴァイオリニスト
演奏予定曲目:
ロッシーニ:「ウィリアム・テル」序曲
ベートーヴェン:「エリーゼのために」
モーツァルト:「トルコ行進曲」
ショパン:「英雄ポロネーズ」

 

『あなたの思い出リクエスト 〜アニメ・シネマ名曲コンサート』
日程:10月4日(土)17:00開演(約90分)
出演:菊池亮太(ピアノ)、紀平凱成(ピアノ)、12人のヴァイオリニスト、野々村彩乃(ソプラノ)、高嶋ちさ子(トークゲスト)、石井琢磨(MC)
演奏予定曲目:
ディズニー「アラジン」メドレー
ジブリメドレー
シネマ名曲リクエストコーナー 他 ※リクエスト詳細は後日発表予定

 

『ピアノの森 Special』
日程:10月5日(日)11:00開演(約80分)
出演:髙木竜馬(ピアノ)、ニュウニュウ(ピアノ)、東亮汰(ヴァイオリン)、橘和美優(ヴァイオリン)、 川本嘉子(ヴィオラ)、矢部優典(チェロ)、吉田秀(コントラバス)
ナビゲーター:naco(厳選クラシックちゃんねる)
演奏予定曲目:
ショパン:ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 Op.21(ピアノ:高木竜馬)
ショパン:ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 Op.11 (ピアノ:ニュウニュウ)
茶色の小瓶(ピアノ連弾:髙木竜馬、ニュウニュウ、弦楽五重奏)

 

『務川慧悟 ALL CHOPIN(オール ショパン)』
日程:10月5日(日)14:40開演(約60分)
出演:務川慧悟(ピアノ)
演奏予定曲目:
ショパン(1842):3つのマズルカ Op.50
                                       即興曲 第3番 変ト長調 Op.51
                                       バラード 第4番 ヘ短調 Op.52
                                       ポロネーズ 第6番 変イ長調「英雄」Op.53
                                       スケルツォ 第4番 ホ長調 Op.54

 

『ガーシュウィン meets ラヴェル』
日程:10月5日(日)18:40開演(約80分)
出演:上野耕平(サクソフォン)、菊池亮太(ピアノ)、務川慧悟(ピアノ)、ニュウニュウ(ピアノ)、三浦一馬(バンドネオン)、児玉隼人(トランペット)
演奏予定曲目:
ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー
ガーシュウィン:ザ・マン・アイラブ
ガーシュウィン:エチュード第4番「君を抱いて」(ワイルド編)
ガーシュウィン:3つのプレリュード より
ラヴェル:ヴァイオリンソナタ 第2楽章「ブルース」
ラヴェル:ハバネラ形式による小品 ト短調
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
ラヴェル:ラ・ヴァルス
ほか(予定)
 
※未就学児のご入場はご遠慮願います。
※当日は、撮影用のカメラが入る可能性がございます。
※客席内での飲食はご遠慮ください。
※やむを得ない事情により、曲目等が変更となる場合がございます。
 
主催・企画制作:イープラス
協力:横浜みなとみらいホール(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)
 
公式サイト: https://standupclassicfes.jp/
お問い合わせ:stacla-info@eplus.co.jp

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