2025年夏クール放送のアニメは80作品ほどにのぼる。ショートアニメや子供向け朝夕アニメなどを含めればより数は増すだろう。春クールは『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』が話題を独占していた節があるが、今期はそもそもの作品数も多く、人気作品の続編も多数放送される豊作クールで、話題も分散している。『ダンダダン』や『その着せ替え人形は恋をする』、『タコピーの原罪』など大きな話題を呼んだ作品が並ぶ一方で、良作が埋もれてしまう可能性もあるのは惜しいところだ。

 そこで本稿では、多くの作品をチェックしているアニメファンが「毎週リアタイ視聴を心待ちにしていた」4作品を紹介したい。 

鉱物をめぐる冒険! 『瑠璃の宝石』

「瑠璃の宝石」ノンクレジットオープニング映像|安田レイ『光のすみか』

 制作は『無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜』や『お兄ちゃんはおしまい!』などでその名を知らしめたスタジオバインド。新人・若手アニメーターを多く起用しながら完成度の高いアニメーションを出力し、作画マニアを含む多くのアニメファンの心を掴んだ。物語は、高校生の主人公・瑠璃が大学院生の凪とともに鉱物採取や地学の調査を行うところから始まる。石や鉱物をきっかけに、地球の歴史や自然の営み、地学的な人間の位置付けにまで触れていく。小さな石ひとつに広がる雄大な自然や悠久の時間のロマンを感じさせ、そして未知を少しずつ既知に変えていく研究の積み重ねは、人類が築いてきた「知」への敬意を抱かせる。

 初めは宝石を金銭的な価値のあるもつモノとしてしかみなしていなかった瑠璃の視野が広がる様子は、精神年齢が低めの瑠璃のキャラクターもあり、子供の成長を見守るような感動を呼ぶ。

 そんな真面目さを持ちながらも、女性キャラクターたちのデザインや所作が過剰にフェティッシュであることから、ファンの間では冗談めかして「NHKでは無理」と評されることもあった。深夜アニメ的なキャラクター描写が教育番組的な物語に同居することで、ほどよく堅苦しさを和らげていたのではないだろうか。

 知的好奇心をかき立てる作品でありながら、コメディチックでどこかゆるさのある名作だ。

京アニ6年ぶりの新作! 『CITY THE ANIMATION』

『CITY THE ANIMATION』はなぜ“平面的”に描かれるのか 撮影処理をめぐる京アニの新機軸

むき出しの街——『CITY THE ANIMATION』と京都アニメーション的手法をめぐって
 『CITY THE ANIMA…

 『日常』と同じくあらゐけいいち原作であるため、次回作的なニュアンスは強いものの2018年秋クールの『ツルネ ―風舞高校弓道部―』以来6年ぶりの京都アニメーション完全新作である。街の各所でピタゴラ的に起こる様々な事件をハイテンションに描く、ゆるやかな関連を持った連作短編コメディだ。

 ハイテンションコメディは、演技で笑わせることに注力し画面に比重を置かない作品や、サクッと観られるショートアニメが多いジャンルである。しかし本作はそんな中で30分枠でクオリティの高い映像を出力し続け全力で「たのしさ」を実現した。

 影つけが少なく撮影効果の薄い映像はデフォルメの効いたキャラクターデザインとも親和性が高く、全体としてコミカルで平面的なルックに仕上がっている。さらに驚くべきは、その平面的なルックを保ったまま、見せ場では奥行きを伴う立体的なカメラワークで描ききる点だろう。平面的なキャラクターもその平面的なルックに寄せた背景も丸ごと動かし、それまでの漫画的なフラットさから一気に逸脱する瞬間にはアニメーションとしての喜びが詰まっている。

【にぎやか画面】『CITY THE ANIMATION』毎週日曜日 好評放送&配信中!#アニメCITY

 各エピソードも完成度が高いのだが、時折展開される突飛な演出も本作の魅力の一つだ。
第5話では画面を分割し監視カメラのモニターのように様々な場面を並行して映す演出を見せ、第10話では次回予告の後に次回予告を重ね合計5回の次回予告を連続して行い、一つのエピソードをナレーションとともに描き視聴者を驚かせた。何が出てくるのかわからない子供のおもちゃ箱のようなワクワクがあり、毎週目が離せない作品になっていた。

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