小林貞夫
コロンビア農業・畜産研究機構( La Coprporacion Colombiana de Investigacion Agorpecuaria, Agrosavia) 図鑑プロジェクトチームの代表者です。
1953年千葉県生まれ。東京農工大学農学部卒、東京大学大学院農業生物学研究科修士、博士課程修了、農学博士。理化学研究所、日本モンサント、日産化学、JICAシニアボランティア、コロンビア農業・畜産研究機構(Agorosavia)博士研究員を経て、現在は同機構客員研究員。コロンビア在住14年です。
このプロジェクトで寄贈予定の「Verduras y Frutas para Todos」の他、共著で「Control biológico de fitopatógenos, insectos y ácaros I, II (植物病原、昆虫、ダニの生物学的防除 I、II)」(スペイン語)を共著で出版。また、日本では「今日誰かに話したくなる野菜・果物学」をエクスナレッジ社から出版(2025年5月)しました。https://www.xknowledge.co.jp/book/9784767834214
プライベートでコロンビア人に日本語や日本料理を教えています。日本とは異なる植物、自然、人、文化に興味を感じています。趣味は家具作りと切り絵です。
プロジェクトメンバー
以下の3名は、寄贈予定の図鑑の共著者で、プロジェクトを行うこと、プロジェクトと画像体裁を掲載を行うことの許諾を取得しています。
近藤デミアン拓正
1968年コロンビア生まれ。13歳で日本に渡り、東京農業大学学士、修士を取得。米国アラバマ州オーバン大学で博士号を取得後、米国カリフォルニア大学デービス校で博士研究員を務めました。現在、Agrosaviaのシニア博士研究員。熱帯果樹と穀物の総合害虫管理を研究をしています。投稿論文162編、書籍38冊を出版。7つの国際科学雑誌の編集者、編集員をしています。趣味はハイキング、エスニック料理、マクロ撮影です。
ディエゴ・ロハス‐ラミレス Diego Rojas -Ramírez
コロンビアのUniversitaria Minuto de Dios(ミニュート・デ・ディオス大学)の農業生態学学士、Tecnologico de Costa Rica(国立コスタリカ工科大学)で持続可能性のための科学技術で修士を取得。コロンビア農業生態学技術者協会の創設メンバーです。現在Agrosaviaの研究員で、実家はコーヒー、ジャガイモなどを栽培する農家です。仕事はもちろん家族を大切にし、写真撮影と旅行を楽しんでいます。
小林奈々
多摩美術大学日本画専攻卒。主に植物画(ボタニカルアート)や日本画を描き、屏風画、襖画などの制作も行います。絵画教室を主宰するほか保育園や高校にて美術教師を務めています。「今日誰かに話したくなる野菜・果物学」のイラストを担当しました。
https://nana-kobayashi.jimdoweb.com/
▼プロジェクトを立ち上げたきっかけ
1. 貧困の実態
仕事で各地に出かけた時に、信じられないような貧しい人たちの生活を実際に見てきました。隙間だらけの小さな家、何もない室内、欠けたカップ、穴の空いたTシャツ、子沢山、そして広場には竹で出来たサッカーゴール。コロンビアの貧困率は高く、国土面積3分の1の住民の貧困率は70%以上となっています(MPPN、2020年)。また、Gini係数は0.55と貧富の差が非常に大きいです(DANE、2024 年)。
2. 貧困からの脱出
子どもたちにチャンスを与え、貧困の連鎖を断ち切ることはできないものだろうかと、同僚と相談しました。そして、「勉強によって貧困から脱出した人」はヒントにならないかと探したら、なんと近くにいたのです。クリスという若い研究者で、ジャングルの中の村で生まれ、父親は蒸発し覚えていないと。しかし、幸運なことに周囲の協力もあって学校に通うことができ、そして一冊の本と先生の言葉が人生を変えたと言います。次第に、勉強に興味を持つようになり、奨学金で大学に行き、今の職を得たのだそうです。
3. どんな本が役に立つ?
子ども時代のクリスが出会い、その人生を変えてくれた本は、イラストの多い子供向けの植物の小冊子だったそうです。
日本は世界的に見ても「図鑑天国」と言われ、良質の図鑑が手ごろな価格で出版されています。家庭や公立図書館から保育園まで身近に図鑑が置かれ、幼いころから自然科学への興味を持つことができる環境が整っています。コロンビアにも植物図鑑はありますが、欧米で作られ、高価で庶民には手が出ません。しかも載っている植物の種類が異なり、四季の無いコロンビアとは栽培の仕方が違っていて実用的ではないのです。
そこで、私たちの研究所では子どもたちが親しみやすい野菜と果物の図鑑を、科学への入門書として作ることにしました。
▼プロジェクトの内容
1.図鑑が完成!
「Verduras y Frutas para Todos – Enciclopedia didáctica y visual」(みんなのための野菜と果物‐教育的、視覚的な百科事典)がAgrosaviaから出版されました。子どもでも理解できるよう平易に、355種の野菜と果物を紹介しています。また、理科教育の一助にと野菜・果物を使った実験、観察の章も加えました。(「図鑑の概要」は最後にあります)
2.どうやって図鑑を生かすか?
公的機関であるAgrosavia は、法律により本を販売することができません。また、限られた予算では500部しか初版が刷れませんでした。そして、農業関係の機関、研究者と一部の学校に寄贈されただけです。
この図鑑のE-bookは、無料で公開されています。しかし、この図鑑を寄贈予定の地方の図書館や子どもたちがいる地域では、コンピューターや通信インフラが不十分なため活用が困難です。ですので、手に取って読める図鑑が何としても必要なのです。
E-book(スペイン語):https://editorial.agrosavia.co/index.php/publicaciones/catalog/view/324/337/1887-1
3.具体的なアクションは?
そこで、私たちはこの図鑑を印刷し、適切に管理してもらうように公立図書館を管轄するコロンビア文化省を通じて、図書館(1,200か所)に寄贈して、子どもたちの手元に届けたいと考えています。現在、文化省と交渉していますが、コロンビアの国内状況を考えると、大き援助は期待できそうもありません。そこで、クラウドファンディングを計画している次第です。
なお、文化省は本プロジェクトを承知しており、名称記載の許諾を取得しています。これまでに図書館6か所を訪問し、図鑑をお見せしたところ、「似たような本がなく、子どもや若者に役に立つ、早く欲しい」という反応でした。
日本大使館の支援でBoyacá、Cucaitaに新設された図書館。本が高価なため購入が進まず、寄付された古い本が目立ちます。
3.必要金額と目標金額の差額の対応
必要金額は図鑑の印刷費(432万円)、配送費(108万円)、READYFOR手数料(97万円)、リターン(103万円)で合計740万円になります。目標金額は630万円ですが、不足分の110万円はコロンビアでの募金と自己資金でまかないます。
4.プロジェクトに影響を与える可能性のある要因
1.為替レート: 1円を27コロンビアペソとして計算。
2.印刷・製本費用: 冊数による単価の変動。
3.コロンビア文化省の援助: 現在交渉中。もし、十分な支援があった時は、小中等学校に寄贈いたします。
5.プロジェクトの日程
クラウドファンディング開始前に告知をします。11月初めにご支援をくださった方々にお礼のメールを差し上げ、図鑑の印刷を発注いたします。梱包、発送作業はAgorsavia内で協力者と行い、12月中に途中経過をお知らせします。1月下旬にリターンをお送りし、2月中旬に図鑑が図書館に無事に届いたことを確認し、支援者に完了のお礼メールをお送りいたします。
6.支援総額が希望金額に満たない場合
目標金額:740万円
目標金額の使途および実施する内容:図鑑を出版し寄贈いたします。印刷製本代、配送費、READYFOR手数料
本プロジェクトは、期日までに集まった支援総額に応じて、実行内容の規模を決定いたします。ご支援が1件でも集まった場合、現時点で40冊の印刷を行うことが可能です。例えば、目標金額の50%が集まった場合には、図鑑1,200冊のうち50%の600冊を印刷し寄贈いたします。なお、寄贈先の選定は、文化省と連帯して行い、貧困層の多い地区の図書館を優先いたします。
▼プロジェクトの展望・ビジョン
まず、この図鑑の存在をコロンビアの子どもや若者に広く知ってもらい、手に取ってもらわなければなません。Agorosavia の研究員が中高等学校に出向き講演することがあります。この平易な言葉で書かれたビジュアルな図鑑は、教育現場での資料としてぴったりです。マスコミにも働きかけ、図鑑の認知度を上げていきます。
また、この図鑑は食育とも関連しています。コロンビアではあまり野菜を食べません。「総合学習」と「野菜をもっと食べてもらいたい」思いから、Agrosaviaは食育を紹介する動画を作成し公開しています。この図鑑には食育に適した野菜の栽培、調理方法も書かれています。
これらの活動はすでに始まっており、今後もさらに続けて行きます。
左:子どもたちに「植物の変異」について話しているところ。
右:食育紹介ビデオ(スペイン語):https://www.youtube.com/watch?v=AgkxCwJCjPs
教職員に知ってもらうために、CANAPRO(全国教員組合、学校まで持っている組織です)とASOCOLDEP(コロンビア私立学校協会)にも働きかけています。
CANAPRO:https://www.canapro.coop/
ASOCOLDEP:https://www.asocoldep.edu.co/
Agrosaviaからこのプロジェクトを行うこと、名称と画像掲載を行うことの許諾を取得しています。また、この図鑑を再出版することの許諾も取得しています。
補足情報
コロンビア
南米の北部に位置する国で、面積は日本の約3倍、人口は4割ほどです。赤道直下ですが、標高5,000mの氷河を抱く山があり、気候は熱帯から寒帯まであり、生物の多様性に富んでいます。 人種は混血系とヨーロッパ系が主で、他にインディヘナ、アフリカ系ですが、人種差別はほとんどありません。日系人もいて、現在2世が活躍して対日感情は良好です。日本ではコロンビアの情報が少なく、しかも古いことが多く、皆さんが思っているほど危険なわけではありません。安全性は場所に拠り大きく変わります。熱帯地区の太平洋岸、ベネズエラ国境地帯、南東部の大平原とアマゾン地区、エクアドル国境地帯の貧困率が特に高く、麻薬組織が暗躍して、治安が悪いです。この地区と都市部の貧困層の子どもがこの図鑑を読めるようにしたいです。
Verduras y Frutas para Todos はどんな図鑑?
コロンビアを中心に、世界中で栽培されている野菜、穀物、果物の他、海藻、キノコ、ナッツ類、食用花、スパイス、ハーブなども含めて355種を、最新の情報を元に、面白く、2050枚の写真とイラストを使いわかりやすく解説した図鑑です。子どもたちは未知の野菜、果物、品種を見付けたりして、野菜や果物に興味を持つことができます。そして、植物の科ごとの特性など、生物、科学に興味に繋がるよう工夫してあります。E-bookは中南米、アメリカ、ヨーロッパで5,000回以上ダウンロードされています。
カカオのぺージ:幹に直接花が咲き、実が成るのが解ります。
水栽培の説明:ニンジン、ビーツ、サツマイモ、レタスを例にあげ、自分でもできるように解説しています。
この本はFAO(国際連合食料農業機関)のホームページでも紹介されました(英語、スペイン語)。
https://www.fao.org/family-farming/detail/es/c/1710630