感性を刺激する文化の扉「Book Café & Bar十誡」｜くつろぎのブックカフェ＆バー
外出先で書斎のように落ち着ける空間があると、どんなに良いだろう。書と向き合う、至福の一人時間をいつもと違う環境で味わいたい。
（※その他の写真は【関連画像】を参照）
※この記事は2025年3・4月号に掲載されたものです。
■怪しくも惹きつけられる地下図書館での魅惑の出合い
壁一面、天井まで本が鎮座。別倉庫にも多数の書籍があり、定期的にラインアップが変わる。
さて、書斎での作業もひと段落した。たまには外で読書でもしようか。
ブックカフェでは普段の読書や飲食以上の思いがけないインプットがある。その店ならではの選書や、珍しい調度品はもちろん、料理や珈琲の味わい、サービスなどからも店主のこだわりを感じ取れる。
店内の考え抜かれたレイアウトは書斎造りの参考にもなるだろう。つい時間を忘れて長居してしまう東西のブックカフェ＆バーを紹介する。
店内をオーナーの趣味で蒐集した澁澤龍彦の世界を思わせる調度品が飾る。
銀座の高層ビルの地下に澁澤龍彦の詩世界を彷彿とさせる空間が広がる。重厚感のあるソファや、黄金に輝く鏡、骸骨、人形。怪しくも魅惑的な「Bar十誡」は都会の喧騒から一転。来るものを別世界へと誘う。
“好事家の書斎”をコンセプトに、オーナーのコレクションだという調度品で店内を謎めいた雰囲気に飾る。壁一面の本は3000冊ほどだとスタッフの藤原織香さんが案内する。
怪しくも興味をそそる書籍の数々。
「上段は文学全集や古書などになります。下には、写真集や画集、日本画家ですと伊藤若冲、バルテュスなどの西洋画家のものもあります。あとはオカルトや妖怪、映画、音楽、MOOK本など専門性の高いものや、絵本など、本当にジャンル広く置いています。店として一番推しているのが文豪です。中でも、宮沢賢治は『銀河鉄道の夜』だけで数種類取り揃えています。装丁の違いはもちろんラストが異なるものがあるんです。なかなか見ることができない貴重な本がたくさんあるので、来店の際はぜひ手にとってください」
木箱に鍵をかけて厳重に保管された太宰治の『人間失格』の初版本をはじめ、中古市場で高値で取引されるような今では手に入らない絶版の本など、まさに好事家の書斎といったラインアップ。雰囲気も相まって、この店での読書ではより特別なものを得られる気がしてならない。
珍しいウイスキーやアブサンを取り扱う。内装も相まって、この店でいただく酒はひと味違う。
バーというからには酒の種類も多彩だ。薄暗い店内でバーカウンターに並べられた酒瓶が光に照らされてキラキラと誘惑する。150種類以上のウイスキーや、数々の芸術家たちを魅了した珍しいアブサンを多く取り揃え、高額でメニューには載っていない特別な酒や、オリジナルカクテルに酔いしれるのもまたこの店の醍醐味である。
「店に訪れるお客様はさまざまです。男性女性問わず、本を楽しみに来店される方はもちろん、店の雰囲気を気に入って、お酒だけを楽しむ常連の方もいれば、アブサンなどの貴重なお酒を目当てに来店される方もいます。最近では、SNSなどを頼りに写真撮影や雰囲気を楽しみに来てくださる若いお客様も増えました」
酒と本だけではなく、日中のカフェ営業では、季節ごとに内容が変わる文豪をテーマにした豪華なアフタヌーンティーを楽しめるなど、「Bar十誡」の提示する世界観にメニューからも没入できる。
貴重な酒と本、到底バーとは思えないつくり込まれた世界観をひと度味わおうと“好事家の書斎”には連日、連夜、来客が絶えない。
太宰治の『桜桃』を思わすスパイシーなカクテル。
『銀河鉄道の夜』をイメージした真っ青なバタフライピーティー。
■この店で読みたい
⚫︎銀河鉄道の夜
宮沢賢治／新潮社
店には数種類の『銀河鉄道の夜』がある。発行年、装丁の違いはもちろん、未完のまま宮沢賢治がなくなったためラストが異なる初期版、後期版が存在する。宮沢賢治にまつわる書籍も多数所蔵。
Book Café & Bar十誡
東京都中央区銀座5-1-8 銀座MSビル B2F
TEL／03-6264-5775
営業時間／Café Time・15:00〜18:00（土日祝は13:30〜）、Bar Time・18:00〜23:00(日曜、月末最終日は〜22:30)
定休日／月、火曜
アクセス／東京メトロ「銀座駅」より徒歩約3分
撮影／遠藤 純
▼