今年、TOHOシネマズの全国17劇場がアニバーサリーを迎えることを記念し、現在TOHOシネマズ株式会社によるお客様への感謝を込めた“アニバーサリーキャンペーン”が実施中だ。MOVIE WALKER PRESSでは対象の17劇場のスタッフへの取材や当時の資料を徹底リサーチ!オープン当初の貴重な裏話、その映画館ならではの魅力やトリビアなどを深掘りする連載コラムを展開中。第14回は、創業20周年の「TOHOシネマズ 水戸内原」についてご紹介。

【写真を見る】まるでアートのよう!幾何学的デザインに彩られたTOHOシネマズ 水戸内原のロビー【写真を見る】まるでアートのよう!幾何学的デザインに彩られたTOHOシネマズ 水戸内原のロビー / TM & [c] TOHO Cinemas Ltd. All Rights Reserved.
2005年11月9日、茨城県水戸市にて、「イオンモール水戸内原」のグランドオープンに先駆けて開業した「TOHOシネマズ 水戸内原」。北関東有数の規模を誇る8スクリーン、1,596席のシネマコンプレックスは、このエリアにおいて映画文化の新たな拠点となるべく誕生した。同劇場の立ち上げ当時、マネージャーを務めていた社員に話を聞くと「当時は商業施設がまったくない田園地帯でした。最寄りの駅がJR常磐線内原駅ですが、そのころは、ほぼ無人駅でちゃんとしたゲートもなく、ICカードをかざす機械はあれど、切符は箱に入れる形だったんです。そういう未開発地域だったからこそ、新しくオープンするイオンモールは、大いに期待されていました」と当時を懐かしむ。

大盛況!メガヒット中の『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』大盛況!メガヒット中の『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』 / [c]吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
オープニング作品は、大ヒットした『ALWAYS 三丁目の夕日』(05)などの話題作。現在まで1日の上映回数が最も多かった映画は、いま、社会現象級のメガヒット中である『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』(公開中)や、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(20)、「名探偵コナン」シリーズなど。チラシの減りが早かった映画は、『かぐや様は告らせたい 〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』(19)、『忍びの国』(17)、『99.9-刑事専門弁護士- THE MOVIE』 (21)、10月31日(金)公開の『(LOVE SONG)』など、アイドル系キャストの出演作だと言う。公開前に反響が多かった映画では、入場者プレゼント「ONE PIECE 巻零(ゼロ)」が話題を呼んだ『ワンピース ONE PIECE FILM STRONG WORLD』(09)が挙がった。

■高校生が茨城の魅力を世界にアピール!地元愛あふれる映画祭を開催

北関東地区唯一のドリンクステーションが大人気北関東地区唯一のドリンクステーションが大人気 / TM & [c] TOHO Cinemas Ltd. All Rights Reserved.
ロビーに入るとまず目に入るのが、北関東地区初導入で、同エリア唯一のドリンクステーションや、予告編を上映している大型モニターで、これらは待ち合わせスポットとしてお馴染みだとか。2023年2月18日にリニューアルされた時、サービスの目玉だったドリンクステーションは、定額でドリンクがおかわり自由になるということで、コンセッションの一番人気だ。

フードメニューからは、ポップコーンとホットドッグの人気フレーバーを紹介。ポップコーン「シネマイク」では人気1位が「濃厚バター醤油」 、2位が「トリュフ&バター」、3位が「塩キャラメル」、4位が「ブラックペッパー」。ホットドッグでは、1位が「ケチャップ&マスタード」、2位が「4種のチーズ」、3位が「プレミアムホットドッグ ちょい辛サルサ&アボカド」、4位が「プレミアムホットドッグ スパイシーハラペーニョ」、5位が「プレミアムホットドッグ ビーフシチュ&チーズ」となった(2025年8月時点のメニュー)。

とはいえ、開業当初のコンセッションについて、元マネージャーは「わりと自由なラインナップだった記憶があります。冷凍のパンを仕入れ、毎朝、専用のスチームオーブンで焼いていました。ポテトも大人気で、ずっとフライヤーで揚げていても追いつかなかったです」とのこと。

いろいろなフレーバーが楽しめるポップコーン「シネマイク」。TOHOシネマズ 水戸内原の人気1位は「濃厚バター醤油」!いろいろなフレーバーが楽しめるポップコーン「シネマイク」。TOHOシネマズ 水戸内原の人気1位は「濃厚バター醤油」! / TM & [c] TOHO Cinemas Ltd. All Rights Reserved.
映画を鑑賞する前後に立ち寄りたいおすすめスポットは、やはりイオンモール水戸内原内のテナントだが、それ以外では、当劇場から徒歩10分くらいの場所に、史跡「水戸市内原郷土史義勇軍資料館」があるので、歴史ファンはぜひチェックしてほしい。また、車で足を伸ばせば、日本三名園の1つで、梅の名所としても知られる「偕楽園」や、日本三大稲荷の1つ「笠間稲荷神社」などの観光名所がある。

グルメスポットでは、地元のソウルフードとして愛されているローカルパスタチェーン店を押さえておきたい。また、「道の駅かさま」には、道-1グランプリ2連覇を達成した「笠間和栗0.5ミリ極細モンブラン」で人気を博すケーキ屋をはじめ、新鮮な農作物や土産物が揃う直売所、地元食材を使用したレストラン、カフェ、フードコートも入っている。

8スクリーンあるので、観たい映画が選べる8スクリーンあるので、観たい映画が選べる / TM & [c] TOHO Cinemas Ltd. All Rights Reserved.
当劇場ならではの催しとして特筆すべきイベントは、毎年2月に開催されている「いばたん(茨城の魅力を探究し発信する高校生コンテスト)」だ。これは、高校生が動画制作を通して、地元茨城の魅力を世界に向けて発信していくという短編映画祭で、茨城県内の高校、大学、自治体、企業などが連携して運営している。若者たちの地域貢献や教育効果も高く評価されている同映画祭。当劇場の支配人やスーパーバイザーも審査員の1人として参加しており、地域の活性化に映画館が関わっていることが実感できる意義深いイベントだ。

ほかにも、元マネージャーの思い出深いイベントは、多部未華子、石田卓也ら出演の青春映画で、茨城県でロケを敢行した『夜のピクニック』(06)でゲスト陣が登壇した舞台挨拶が挙がった。「ちょうど私が異動した直後でしたが、茨城県のシネコン4か所を主要キャストが回るキャンペーンが開催されました。ご当地映画だったから、かなり盛り上がったようです」。

■館名に込められた秘話とは?「そのほうが絶対にいいと思ったんです」

TOHOシネマズ 水戸内原の広々としたロビーTOHOシネマズ 水戸内原の広々としたロビー / TM & [c] TOHO Cinemas Ltd. All Rights Reserved.
開業時を振り返り、地元である内原市民の方々のバックアップがとても大きかったと、心から感謝する元マネージャー。「20年前は、周りになにも施設がなかったので、スタッフを研修する場所をどうするかとなり、水戸内原市民センターに問い合わせたら、無償で場所を提供してくださいました。地元の方々のイオンモールへの期待値がすごく高くて『イオンモールのテナントさんだったら、どうぞ使ってください』と言ってくださり、すごくうれしかったことを覚えています。そこから、地元の方々を大事にしていかなければと思ったので、劇場の館名について話し合った時に、『TOHOシネマズ 水戸か、TOHOシネマズ 水戸内原か、どっちがいいか?』と質問された際に、『私は、絶対にTOHOシネマズ 水戸内原がいいです』と答えた記憶があります。内原に住んでいる方々にとってはそのほうが絶対にいいと思ったんです。結果的にそうなってよかったです!」

開業から20年経った当劇場だが、元マネージャーによると「ちょうど2005年8月10日にTOHOシネマズ ひたちなかが先行して開業したので、2館セットで告知をしていきました。周りに学校が少なかったので、学生のアルバイトがなかなか集まらず、フリーター主体で雇いましたが、本当に全員が仲良くなったんです。いろんな劇場をみんなで視察に行ったり、休日はどこかに遊びに行ったりと和気あいあいとした雰囲気でした」と、当時を思い返す。

8スクリーンあるので、観たい映画が選べる8スクリーンあるので、観たい映画が選べる / TM & [c] TOHO Cinemas Ltd. All Rights Reserved.
「もちろん、ひたちなかが大成功したあとに水戸内原がオープンしたので、プレッシャーを感じていた記憶もあります。みんなで『よし、頑張っていこう!』と、様々なことを話し合い、結束が強くなっていきました。売り場のグッズについても、スタッフと共に新しい業者を一緒に開拓しましたし、飲食関連の展示会にも参加したりと、自発的に動きました。熱くなりすぎて、時には口論になることもありましたが、いまではそれもよき思い出です。本当にすごく楽しかったので、異動が決まった時、水戸内原を離れることがつらかったです」としみじみ語る。

「でも、ほかの劇場へ移ってからも、彼らとはずっと連絡を取りあっていました。その後、スタッフと結婚した社員もいますし、その結婚式に呼ばれたりして、何回も内原に行きました。そこまで何年も交流が続いたことは、自分のなかでも珍しい体験でしたね。今回の取材にあたり、当時働いていた方にも、それぞれの思い出を聞きましたが、『打ち上げなどをしょっちゅうやっていて、楽しかったね』という話ばかりが出てきました」とのことで、実に感慨深い。

また、2005年11月11日の「イオンモール水戸内原」グランドオープンに先立ち、11月6日に開催された「イオン ふるさとの森づくり」植樹祭開催に参加した社員もいたとか。「その社員に、植樹祭のことを聞いたのですが、その時に植えた木が、ちゃんと大きく育っているそうです。いつか見に行ってみたいですね」と穏やかな笑顔で話す元マネージャー。その木と同じく、当時の絆は、いまも脈々と受け継がれているに違いない。

アニバーサリーを迎えるTOHOシネマズの全国17劇場で配布されるTOHOシネマズシアターカードアニバーサリーを迎えるTOHOシネマズの全国17劇場で配布されるTOHOシネマズシアターカード / TM & [c] TOHO Cinemas Ltd. All Rights Reserved.
なおTOHOシネマズの全国17劇場で開催中のアニバーサリーキャンペーンでは、4月から12月の9か月間にわたって、様々なサービスを展開している。対象劇場は、今回紹介した水戸内原のほか、5周年の池袋、立川立飛、10周年の新宿、ららぽーと富⼠⾒、アミュプラザおおいた、15周年の上大岡、20周年の府中、ひたちなか、岐阜、津島、二条、直⽅、25周年の浜松、ファボーレ富山、泉北、⼤分わさだだ。ぜひ最寄りの場所や気になっている映画館をチェックし、お目当ての映画を観に行っていただきたい。

取材・文/山崎伸子

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