生成AIでまともなアニメ映画は作れるのか――。その問いが、早くも試されようとしている。OpenAIと制作会社のVertigo Filmsが、OpenAIの画像生成AI「DALL·E」のデモンストレーションとして2023年に制作された短編映画を、長編作品として制作する計画を明らかにした。

 The Wall Street Journalの報道によると、この「Critterz」と題された映画の予算は3000万ドル(約44億円)未満で、制作陣は約9カ月での完成を目指しており、2026年5月のカンヌ国際映画祭への出品を視野に入れているという。

 原作の短編映画(タイトルは同じくCritterz)は、自然を題材とするドキュメンタリー番組のパロディーのような作品で、森に住む奇妙な生き物たちが、突然ナレーターの言葉を理解して話し出すという内容だった。脚本と監督を務めたのは、現在OpenAIでクリエイティブスペシャリストを務めるChad Nelson氏だ。同氏はDALL·Eを使って背景やキャラクターの画像を生成し、従来のアニメーション技術を駆使して作品に命を吹き込んだ。

 Vertigo Filmsによると、長編映画は「いわゆるCritterzのキャラクターたちの世界を広げる」ファミリーアドベンチャーになるという。脚本は、映画「パディントン 消えた黄金郷の秘密」の脚本家コンビであるJames Lamont氏とJon Foster氏が担当する。The Wall Street Journalは、制作チームがプロジェクトのために雇用した人間のアーティストによるスケッチをAIツールに入力し、アニメーション化する計画だと報じている。Nelson氏はLinkedInで、この映画ではOpenAIの最新の研究モデルを利用して「新たな制作ワークフローを生み出す」と述べている

 元の短編映画が制作されてからのわずか2年で、画像・動画生成AIは長足の進歩を遂げた。当時、DALL·Eは画期的だったが、初期の画像生成AIには、人間の指の数が不規則になるなど、悪名高い奇妙な癖があった。現在のツールは、はるかにリアルな画像や動画を生成できる。完璧ではないにせよ、Googleの「Veo 3」のようなツールは十分に高性能で、ソーシャルメディアにはAIが生成した無意味なコンテンツがあふれかえり、本物と偽物を見分けるのはますます困難になっている。

 より大きな問題は、これらのツールが映画を生成できるかどうかではなく、むしろそうすべきかどうか、そして観客がそれを見たいと思うかどうかだ。生成AIの利用は、映画業界をはじめとするクリエイティブ分野全般で物議を醸している。著作権の問題もある。OpenAIなどのAI企業は、ツールのトレーニングに使用された素材や、一部のツールが著作権で保護されたキャラクターに酷似したものを生成できてしまうことをめぐり、エンターテインメント企業やメディア企業から訴訟を起こされている。

この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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