2025.9.7
ゆるま小林
二宮和也さん主演の映画「8番出口」が大ヒットを記録しています。ストーリーの起伏が極めて少ない作品が、それでも“傑作”となった彼のたぐいまれなる演技力とは。
公開3日の興収、2025年実写映画で1位
(C)2025 映画「8番出口」製作委員会
二宮和也さんが主演を務める映画「8番出口」が大ヒットを記録しています。同作は、公開から3日間の興行収入が、2025年に公開された実写映画で1位を獲得。さらに、9月5日には観客動員数100万人突破が報告されるなど、話題を独占しています。
※以下、若干のネタバレを含みます。
この「8番出口」ですが、ゲームクリエイターKOTAKE CREATEさんが2023年に個人制作した世界的ヒットゲームを実写化したもの。数多くの名作を生み出している川村元気さんが監督と脚本を手掛け、二宮さんとともに新感覚の映画を作り上げました。
映画は、無限にループする駅の地下道が舞台でゲームと同じ設定。「異変を見逃さないこと」「異変を見つけたら、すぐに引き返すこと」「異変が見つからなかったら、引き返さないこと」「8番出口から外に出ること」という4つのルールにのっとり、出口を探す設定です。
ルールを間違えなければ出口が加算され、間違えると「0番」に戻りやり直し。これを繰り返し、8番出口を目指します。ゲームをプレイしたことがある人なら、「どうやってこれを映画にするの?」と疑問に思うほど、非常にシンプルな設定しかないのが「8番出口」の特徴です。
今回、映画化されることでさまざまな要素が加えられ、見応えがあるように調整されています。ただ、それでも“通常”の映画と比べれば、ストーリーの起伏はありません。その映画がなぜヒットしたのか? 脚本や編集が上手というのもありますが、二宮さんの演技力の高さがあったからこそ面白い映画になったのだと考えます。
二宮さんが演じるのは「迷う男」で、人生や恋愛に悩んでいる設定。地下道に迷い込み、出口を探す中でさまざまなことに気付いて成長する姿が描かれます。
まず、この迷う男ですが、映画では割と“ダメ男”という設定です。ヒーロー的な主人公感はないため、最後までモヤッとした観客も多いかもしれません。二宮さんといえば誰もが認める、日本を代表するスーパースター。そんなスターが、どこにでもいそうな少しダメな青年を自然体の演技でうまく演じています。
また、不条理な世界に迷い込んだ主人公の心の動きを表現するのも上手でした。徐々に追い込まれ、ギリギリの精神状態になる「迷う男」を繊細に見せることに成功。少々ネタバレになりますが、二宮さんが提案したという「迷う男」が喘息(ぜんそく)を患っている設定も、妙にリアルで観客に息苦しさを感じさせ、没入感を高めます。
この設定には喘息を患っている人をはじめ、SNSなどで賛否両論が巻き起こりました。ただ、不安感を表す描写としては、映画の不気味さをよく表現できたのではないかと感じます。
【画像】独特の“味”がある… カンヌ映画祭での 《二宮和也》 が良すぎ(画像5枚)