8月29日より「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2025(以下、SFL2025)」が開幕となった。SFL 2025とは、企業がチームオーナーとなり、格闘ゲーマーが4人1組のチームを編成し、リーグ戦でストリートファイター6の日本一を決する対抗戦だ。
参加チームは全12チームで、去年から新たに導入された2ディビジョン制の導入により、各チームは「S Division」と「F Division」にそれぞれ割り振られる。ホーム/アウェイ1試合ずつの総当たり戦を行ない、上位3チームがプレイオフに進出。各ディビジョンのプレイオフで勝利したチーム同士がグランドファイナルで頂点を決するという流れとなる。
ルールについては、先にアウェイ側チームが先鋒、中堅、大将の出場選手のオーダーを提出。ホーム側のチームはそれを見た上で出場選手を発表する。先鋒、中堅戦はBO3(2先)で行なわれ、勝利チームが10ポイントを、大将戦はBO5(3先)で勝利チームは20ポイントを得られる。大将戦を終えた段階で同点だった場合のみ延長戦が行なわれる。
そして、延長戦はこれまでのルールから変更され、必ずリザーブの選手が出場し、BO3(2先)での試合を行ない、勝利チームが10ポイントを獲得できるようになっている。
参加チームはS Divisionが「Victrix FAV gaming」「Crazy Raccoon」「Good 8 Squad」「Saishunkan Sol 熊本」「CAG OSAKA」「名古屋NTPOJA」、F Divisionが「VARREL」「ZETA DIVISION Geekly」「DetonatioN Focus Me」「広島 TEAM iXA」「FUKUSHIMA IBUSHIGIN」「REJECT」となる。
注目のチームは、今年から参加する大型eスポーツチーム「ZETA DIVISION Geekly」で、知名度が高く前年度の大会などで実力を発揮した選手たちを集めた強豪チームと名高い。また、SFL 2024にて国内リーグ優勝、世界一も獲得した「Good 8 Squad」や、ウメハラ選手とふ~ど選手を加えて隙のない布陣となった「REJECT」も要注目のチームと言える。
今年はそのほかのチームにおいても、前年度と同じメンバーでの参戦がほとんどないほど入れ替わりが多い。チームの戦力にかなりの変動があるため、どのような展開になるのか予想が難しい状況となっている。
本稿ではSFL 2025の全試合の模様をダイジェストで簡単に紹介する。また、3試合それぞれのMVPにオンラインでインタビューする機会を得られたので、こちらのインタビューを中心に選手たちの心情などを紹介していきたい。なお、以下では選手の敬称は略して記載している。
SFL 2025全試合はYouTubeにてライブ配信を行なっているほか、アーカイブも公開されているので、試合内容の詳細などについてはこちらも確認してみてほしい。
MATCH1は、ホームがVictrix FAV gaming、アウェイがSaishunkan Sol 熊本の1戦。アウェイ側のオーダーは、先鋒がcosaのリュウ、中堅はこばやんのザンギエフ、大将はまちゃぼーのリュウ、リザーブはネモのブランカ。対するホーム側、Victrix FAV gamingは、先鋒が藤村の舞、中堅はsakoのエレナ、大将はもけの春麗、リザーブはりゅうきちとなった。
先鋒戦はcosaが藤村の舞に2-0で勝利して10-0でSaishunkan Sol 熊本が先制するも、中堅戦はsakoのエレナが初出場のこばやんのザンギエフを2-0で完封、Victrix FAV gamingが10-10の同点に追いつき、チームの勝敗が大将戦で決する流れとなった。
大将戦はまちゃぼーのリュウともけの春麗という、2年前に同じチーム(魚群)に属していた2人による一戦となった。試合は2-2フルラウンドフルセットまでもつれ込むギリギリの激闘の末、最後はまちゃぼーのリュウが勝利。これにより、Saishunkan Sol 熊本が30-10でVictrix FAV gamingに勝利した。
MATCH1のMVPにはSaishunkan Sol 熊本のまちゃぼーが選出された。試合終了後のMVPインタビューにて、チーム内に同じリュウを使うcosaもいる中で、2人ともリュウをピックした経緯や同キャラがチーム内にいる点についての考えを聞いた。
まちゃぼーは、これまではチーム内に同じキャラが2体いるのは弱いと思っていたが、2人で情報共有していても、cosaのリュウとはいい塩梅で動きが違っており、チームメイトとも相談した結果、それぞれが自信を持って戦える2枚リュウの構成に至ったとし、動きの異なる2枚のリュウに自信を見せた。
Saishunkan Sol 熊本はSFL 2025の試合を渋谷のeスポーツ高等学院のシブヤeスタジアムにて、選手4人が集まって行なっている。オフライン環境で4人が集まって試合する事のメリットについては、ほかの選手たちの緊張感が伝わってくるので、声を掛けて緊張をほぐしたり、アドバイスなどもしやすかったり、オフラインならではのよさが多いとした。なお、初出場で惜しくも敗北を喫したこばやんの様子を聞かれたまちゃぼーは、落ち込んでいるのでこの後フォローしますと笑いを見せた。
またオーダーの決め手を聞かれると、Victrix FAV gamingの選手たちとの勝率を見た時に、リーダーのネモがりゅうきちのケンとの対戦が苦手というのがあったので、残りのメンバー3人でオーダーを組むことにしたという。加えてその3人の中ではまちゃぼーの勝率が最も高かったため、大将を受けるオーダーにしたという。
MATCH2は、ホームがCAG OSAKA、アウェイが名古屋NTPOJAの1戦。アウェイ側のオーダーは先鋒がKEI.Bの舞、中堅はSeiyaの春麗、大将は大谷のケン、リザーブは今年2年目となるもっちーの豪鬼。対するCAG OSAKAは、先鋒がフェンりっちのJP、中堅はえいたの豪鬼、大将はうりょのジェイミー、リザーブはSFL初出場の高木となった。
先鋒戦はKEI.Bの舞がフェンりっちのJPに2-0で勝利して、名古屋NTPOJAが10-0で先制。中堅戦は1-1フルカウントの接戦の中、SFL初出場のSeiyaがえいたの豪鬼に2-1で勝利、名古屋NTPOJAが20-0リードで大将戦を迎える運びとなった。
大将戦は大谷のケンとうりょのジェイミーの一戦。ここでCAG OSAKAが勝てば新ルールの延長戦が発生する可能性もあるため、注目の一戦となった。初戦は大谷のケンが勝利。ここでうりょは春麗にキャラクターを変更して2戦目に挑むも大谷のケンがストレートで決めて2-0でリーチをかける。
ここで三度キャラクターをジェイミーに戻したうりょだったが、場面は好転せず、追い込まれて絶体絶命の中で、大谷のリーサルミスもあって何とかギリギリのところで勝ちを拾い、九死に一生を得る。
これで流れが変わったか、次の試合はうりょのジェイミーの攻めが大谷のケンにガッツリ通るようになり、ストレート勝利で2-2のフルセット。最終戦はギリギリの攻防の末、うりょのジェイミーが3-2の大逆転勝利で、新ルールの延長戦が行なわれる驚愕の展開となった。
延長戦はBO3(2先)で行なわれ、出場選手は本日リザーブだったもっちーの豪鬼と高木のブランカの一戦となる。最初はもっちーが勝利して1-0有利で展開するも、ギリギリに追い込まれながらも勝利をもぎ取った高木のブランカが2-1で見事な逆転勝利を果たし、試合はCAG OSAKAが30-20で勝利となった。試合後には感極まって号泣するシーンも見られた。
MATCH2のMVPにはCAG OSAKAの高木が選出された。試合終了後のインタビューでは、MVPの率直な感想として、飛び跳ねたいぐらいうれしいとし、勝った瞬間は自然と泣けてきたとコメント。
高木は今年に入ってから操作デバイスをレバーレスからパッドに変更しているが、その理由について尋ねてみると、何事も影響されやすく、尊敬しているプロ選手のMenaRDのようになりたくて変更したという。使い始めてみて、自分に合ってると感じられており、メリットとして、すべてのボタンに指を添えられるところとした。
大将戦をやっている間の心境について聞かれると、大将戦は何があっても、うりょが勝つと信じていたので、うりょが試合している間は延長戦のもっちーの豪鬼との試合について考えて、対策を確認し直すなど、既に準備をしていたという。延長戦の心構えとしては、何が何でも勝ってやるという気持ちで挑んだとしており、試合中は緊張し続けていたが、無事に結果を出す事ができたとした。
初出場で見事に1勝できたが、今後の目標について聞かれると、プロとしてスト6をやるようになって、あちこちで壁を感じているが、出る試合はすべて勝てるように頑張りたいとしてインタビューを締めくくった。
MATCH3は、ホームがCrazy Raccoon、アウェイがGood 8 Squadの1戦。アウェイ側のオーダーは、先鋒がカワノの豪鬼、中堅はガチくんのラシード、大将は何とリーグ初出場のさはらのエド、リザーブはぷげらのサガットとなった。対するCrazy Raccoonは、先鋒がかずのこのキャミィ、中堅はボンちゃんの豪鬼、大将はShutoの豪鬼、リザーブはどぐらとなった。
先鋒戦からギリギリの接戦を展開し、ここはかずのこのキャミィが2-1でカワノの豪鬼を制して勝利し、Crazy Raccoonが10-0で先制。中堅戦はガチくんのラシードが2-1でボンちゃんの豪鬼に勝利し、Good 8 Squadが10-10で追いつく展開。大将戦はShutoの豪鬼が3-1でさはらのエドを下して見事に勝利。Crazy Raccoonが初戦でGood 8 Squadに対して30-10で勝利した。
MATCH3のMVPにはCrazy RaccoonのShutoが選出された。試合終了後のインタビューでは、ふ~どのエドと練習したという話があったが、それ以外に具体的にさはらの対策を何かしたかを尋ねた。Shutoによると、さはらのオンラインの履歴を見ると、豪鬼対策をした履歴がなかったため、ほかのキャラとの試合などを見る事で、さはらの手癖などをチェックし、対策したという。
また、さはらは初戦は緊張してそうな動きだったが、その後はベストなコンディションで動いていた印象とコメント。初出場のさはらに対して声を掛けるとしたら、という質問には、周りからどう見られているのかなどは気にせずに、自身のよさを出しきれるように取り組んでほしいとした。
Shuto自身の今日の緊張状態について聞かれると、緊張を自分の物にするという感覚でプレイしたという。先日行なわれた「eSports World Cup(EWC)」では、この場に出場できたという「幸せオーラ」をまとったままで負けてしまったので、いい緊張感を持ちつつ、緊張と向き合っていきたいとした。
次節でのSaishunkan Sol 熊本との対戦について聞かれると、リーダーのネモやcosaと同じチームメイトだった事もあり、お互いこういうプレーヤーというのは分かっているので、どのような対戦になるのかが楽しみとした。
初日からドラマチックな試合が目白押しだった。3人のMVPたちの活躍も見事だったが、その中でもSFL初参加の高木の延長戦勝利はかなりのドラマだったと言えるだろう。
ストリーマーからプロ選手となり、SFLに参加して勝利をもぎ取る。開催前からほかの選手などからも注目度が高かった高木だけに、初戦で、かつチームの勝敗がかかった重要な延長戦で初勝利を勝ち取れたことは本人の自信にもつながる貴重な経験だっただろう。同じく初出場のSeiyaも勝利している一方で、こばやんやさはらなど惜しくも敗れた初出場選手もおり、彼らの今後の動向についても注目していきたいところだ。
まだ初戦のため、今の段階で優勝やプレイオフについて語るのは時期尚早だ。どの選手たちも大事なのは気持ちを切り替えて次の試合に挑むことだろう。2戦3戦と積み重ねたスコアの先に何が待っているのか。驚きの逆転劇が待っているのか、上位チームが圧巻のスコア差を見せつけるのか。SFL 2025はまだ始まったばかりで、次節以降の試合からも目が離せない。