──新曲についても聞かせてください。「どON」は復活一発目っぽい景気のいい曲という印象を受けたんですけども、これはどんなイメージから作っていったんでしょうか?
FUMIYA:「Wacha Wacha」と同時に取りかかっていたんですけど、スタッフと話し合って一曲目は「どON」に決めました。初期の作り方に近いような、音をあまり足さないシンプルなサンプリングベースのアレンジというイメージでした。
PES:4月のリリースに向けて25曲くらい作って、その後にトータル30曲くらいになって。一曲ごとにテーマを決めて、僕も作って提案して選んでいきました。どれが最初の曲になるか僕もわかってなかったので、そういうクライアントワークと同じやり方がRIP SLYMEにもフィットしたと思います。全体的に、再結成や我々のことをメタ的な目線で見て歌詞を書きたいとはずっと思っていて、そういう客観的なタッチで全部、曲を書いてます。“どON”は、普段から「熱中してる」っていう意味で個人的に使ってるワードで、今回のRIP SLYMEのプロジェクトにも合うと思って作った曲の内のひとつです。
──この曲のリリックでは〈チーム友達 ずっと友達 ドープな奴は未だに友達〉と世代を超えた日本語ラップのパンチラインの引用もありますが、これはどういうアイデアでしたか?
ILMARI:PESくん、SUさんで始まって、僕とRYO-Zくんで繋いでいくオーソドックスなマイクリレーの曲で、そういう意味でも原点回帰っぽいなと思います。
──RYO-Zさんの〈バスタをフューチャー 新しいリーダーズ〉というリリックはいかがですか?
RYO-Z:新しい学校のリーダーズのグループ名は、リーダーズ・オブ・ニュー・スクールが元ネタだろうから、そんな子たちがバスタ・ライムスをフィーチャーしたらめっちゃ楽しいなっていうイメージでRECしたんです。この間、本人たちにお会いしたら「大丈夫ですか? 私たちディスられてないですよね?」って言われて。「全然、そんなことしてません!」って申しました(笑)。新しい学校のリーダーズ、しっかり応援してます!
──「Wacha Wacha」には、どんなアイデアやモチーフがありましたか?
PES:友人たちからよく「RIP SLYMEってワチャワチャしててよかったよね」って言われることがあって。僕がプロデュースしているKOMOREBIというグループも、よく「ワチャワチャしてんな~」って言われるんですよ。男の子が集まるときの一般的な慣用句が「ワチャワチャ」というワードだと思ったので、そこに言葉遊びも入れて作りました。トラックには、FUMIYAくんから指示が結構あって、「どON」よりは手間がかかった曲ですね。結果的にお祭りっぽいところに着地してよかったと思います。
──この曲は祭り囃子っぽい感じと多国籍感があるトラックの印象ですけど、どんな風に作っていったんでしょうか?
FUMIYA:まさに、どこかの民族のお祭りをイメージしていました。どこの国かははっきりしてないんですけど、焚き火の周りをぐるぐる回ってるっていう。お祭り感のあるダンスミュージックよりのアレンジで、パーカッションをいっぱい入れました。
──「結果論」はセンチメンタルな側面を持ったRIP SLYMEらしさもある曲だと思います。どういうところから考えていったんでしょうか?
FUMIYA:「どON」と「Wacha Wacha」ができた後に、メロウな曲もあったほうがいいなって思ったところが大きいですね。
PES:「夏っぽい曲を」って言われてできたのが「Chill Town」でした。それで、少しポップで歌謡曲チックな曲を入れたいな、というアイデアが生まれて。この曲も自分たちの現状を客観的に見て書いてます。「青春はまだ続いてる」みたいなものもありかなと思って。「どON」と「Wacha Wacha」にバカ騒ぎっぽさがあるので、少しトーンを落とした曲調と内容のほうがいいかなと思ったんです。昔だったらちょっと小っ恥ずかしいことも、今なら改めて言えるし。
──「結果論」っていう言葉は今の自分たちをどう象徴していると言えますか?
PES:もう、そのままですよね。いろいろなごちゃごちゃはあったけど、「終わりよければすべてよし」っていう。同じ世代の皆さんも、結果論、なんとかうまくやってきた方たちだと思うので、そういう方々にも伝わるといいですね。
──「Chill Town」はまさに夏らしい曲ですが、どういうイメージがありましたか?
FUMIYA:自分が若い頃、盛り上がるヒップホップはメロウな曲が多かったので、その雰囲気を出せたらいいなと。J-WAVEのキャンペーンソングとして「アゲない夏」っていうお題をもらって、すごく楽しんで作りました。
PES:意外と書くのは難しかったです。サウンドは、90年代前半のミドルテンポな夏のヒップホップというイメージ。自分たちの世代には懐かしい響きもあり、かつ世界的にもあまりない方向性の曲調だとは思います。夏のまったり感というか。
──「サヨナラSunset feat. WISE & おかもとえみ (RS5 Remix)」と「Rightnow! feat. SAMI-T from Mighty Crown (RS5 Remix)」についても聞かせてください。SUさんとPESさんが参加した5人のバージョンで収録されていますが、どんなアプローチを考えましたか?
SU:もともと曲として完成されていたものだったので、その空気感は絶対壊さないようにしなきゃなって。もう一度RIP SLYMEに参加することになって2曲目ぐらいに録った曲なんで、「自分はどうやってたかな」っていうことも考えながら、「なるべく邪魔にならないように」という気持ちでやりました。
PES:曲としてすでに出来上がってたんで、英語で書いたり、お笑いのフレーズを引用させてもらったりして、遊び心のある参加を心がけました。
──アートワークやミュージック・ビデオなど、ビジュアル面のクリエイティブにはどんな考えがありましたか?
ILMARI:RIP SLYMEはもともとgroovisionsさんがデザインしてくれていて。MVの監督さんとか、スタイリストさんとか、今まで関わってきてくれた方々とは面白いことをずっとやってきたので、その延長にあるRIP SLYMEにしたいという構想はありました。今回クリエイティブ・ディレクターとして入ってくれた金田遼平さんはgroovisionsに所属されていた方で、彼が思うRIP SLYMEと僕が思うRIP SLYMEが非常にマッチしてました。