──楽しいストーリーの裏で、韓国の保守的な男性中心社会の現実がしっかりと描かれていました。シスヘテロ男性による女性蔑視や同性愛嫌悪を含むホモソーシャルの有害性を描いたのは、監督の明確な意図からでしょうか。

主人公たちの視点が込められた作品ですから、自然とそう描かれたとも言えるでしょう。同時に、私自身も、韓国社会で感じる「まだまだ不十分だ、もっとこうなってほしい」という思いを映画のなかで描くことに興味を持っています。また、韓国の商業映画ではなかなか見ることのできなかったキャラクターたちを面白く、かつこれまでにない姿としてしっかりと描いてみたいという気持ちもありました。

──原作はフンスの視点のみで描かれていますが、本作はそれに留まらず、ジェヒの視点を通して女性に向けられた社会の不当な視線も描いています。主人公ふたりのどちらの痛みも矮小化されなかったことに、監督の誠実さを感じました。

まさに、私が映画のなかで描きたかったことを明確に表現してくださいました。原作でもジェヒは魅力的な存在でしたが、フンスの視点だけでは見えてこない部分も多く、彼女を活かすことで2人のバランスが取れた作品にしたかったんです。

──本作公開時の韓国での反応についても伺いたいです。

応援や映画の価値を見出してくれる声が多く、幸せでした。一方で、公開時のレビューにはこんな言葉もありました、「嫌う権利をください」と。当時はすごく残念な気持ちになりましたが、これはこの映画がその人の心に何らかのざらつきや衝撃を与えられた証拠でもあります。存在しないものとして見過ごされるのではなく、考えたり語られたりするきっかけができたとすれば、意義があったのではないかと、今では思っています。

──フンスとジェヒのキャラクター像は、原作からアレンジが加えられています。例えば原作では2人とも性に対して主体的で奔放なキャラクターでしたが、映画では抑えられている印象もありました。映画においては2人をどのように描こうと思われましたか。

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