ソニーグループ<6758>は、経営方針説明会で、グループ内での連携を強化し、ひとつのIP(知的財産権)をゲームやアニメ、映画、ドラマ、音楽、イベントなどで多面的に展開していく方針をあらためて表明した。「事業間連携がもたらす価値や可能性は、この数年でより顕在化してきた」(十時裕樹社長)と述べ、ソニーグループ内での連携の意義を強調した。『Uncharted』や「THE LAST OF US」などゲームIPの映画・テレビ作品化を手掛けているが、制作体制を強化しており、現在では10本以上の作品を制作しているという。
さらに、Crunchyroll(クランチロール)とアニプレックスは、人気ゲームタイトル「ゴースト・オブ・ツシマ」のアニメシリーズ化を進めており、2027年に公開する予定。楽曲については同じソニー・ミュージックエンタテインメントが担当する。そして「Crunchyroll」は、有料会員増加のため、グループ内でもっともアクティブユーザー数の多い「PlayStation Network」から顧客誘導の協力を得ており、その有料会員数は1700万人を突破した。
これ以外に、ロケーションベースエンタテインメント(LBE)にも取り組み始めた。「鬼滅の刃」や「Spider-Man」のイベントを開催している。IPを広げるためには非常に有効なツールであり、世代を超えて愛されるIPを作り出すためには家族で出かけた経験といった要素が重要とみるためだ。将来的にはテーマパーク化なども念頭に置きつつ、そのための道筋や方法論などを検証しつつ、連携のあり方も模索しているという。
十時社長によると、最初は全体方針としてトップダウンでグループ内連携を進めていたが、徐々にボトムアップで色々なプロジェクトが立ち上がるというフェーズに移行してきたという。「経営チームとしてできることは環境を整えることであって、シナジー(相乗効果)は本当の意味でボトムアップでしか生まれない」。これが望ましい姿であり、「それがひいては競争力の源泉になる」という。
こうした動きは広くエンタメを展開する有力企業にも浸透している。バンダイナムコホールディングス<7832>は、IPの世界観や特性を活かし、最適なタイミングで最適な商品・サービスとして、最適な地域に向けて提供することでIP価値の最大化をはかる「IP軸戦略」を打ち出し業績を大きく伸ばした。
セガサミーホールディングス<6460>も「ソニック」など世界的に有望なIPについてグループ内のアニメ会社とも連携し、映画作品として大ヒットさせた。スクウェア・エニックス・ホールディングス<9684>も中期戦略においてゲーム事業のテコ入れだけでなく、グループ内の連携についても強化していく方針を示した。
サイバーエージェント<4751>は、長年投資してきたABEMAを軸として、ゲームやアニメ、興行、マーチャンダイジングなどの関連グループ企業を揃えており、グループ連携を通じてIPを育てて収益化していくエコシステムの拡充を進めている。
コンテンツ業界において「IP」の重要性は広く認識されてきた。これをどう育てて活かしていくか。ゲーム会社やアニメ会社が個別に展開していくことが多かったが、グループ内連携を推進することでより速く、より大きく育てることが可能な時代になってきた。
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