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WeTransferのCCOが絵本とともに来日

3月末にDOVER STREET MARKET GINZAで盛大に行われた「OPEN HOUSE」。店内で特別なインスタレーションの展示や限定アイテムの販売をはじめ、トークショーやワークショップ、パフォーマンスなどを通して、世界各国から集まったデザイナーやクリエイターと交流できる1日限りのイベントだ。

そのようなお祭り騒ぎのなか、7階でブックサイニングをしていたのは、WeTransferのCCO(チーフクリエイティブオフィサー)であり作家のダミアン・ブラッドフィールド(Damian Bradfield)とアーティストのルイス・メンド(Luis Mendo)。ふたりが制作した新作の絵本とオーディオブック『カロ・キャロワック(CARO CARROWACK)』の出版を記念して、東京を拠点とするルイスに合流するようにダミアンも来日した。

誰しも一度は使ったことがあるはずのWeTransferとは別の活動として、これまでにダミアンは精力的に著書を2冊出版し、2023年にグラフィックノベルを刊行したのち、今回はルイスとともに初めて絵本のような形式で制作。過去作品のいずれもデジタル時代における信頼の崩壊について探求し、より倫理的で責任あるインターネットを提唱してきたが、本作ではひどく愛情のない両親に育てられた少女の成長物語というストーリーテリングを通して、現代社会に生きる子どもたちへのアプローチを試みたのだという。

一見、ビジネスマンとアーティストのコンビネーションは不思議に思うが、陽気なルイスにつられて表情がほぐれていくダミアンの関係性は強固なものだ。ふたりを繋ぐ接点は、どんなときでも人のクリエイティビティやイマジネーションを尊敬し信じる力。その物腰からも明らかに、成功を収めれば収めるほどに傲慢さを加速させるようなビッグテックの経営者たちとは異なる態度と思考を宿している。

折りしも米国ではDEIプログラムの廃止によって、学問の自由や、芸術活動への圧力があらわになりつつあり、自動車関税の引き上げによって世界に衝撃をもたらし(のちに相互関税を発表し、さらにのちに90日間の停止も発表)、ヨーロッパでは政情の安定は見通せないでいる。そのようなグローバルでマクロな混乱のなかにあっても、ふたりは実直かつユーモラスに、そして時折、怒りを交えながら、つまりとてもチャーミングな人として、想いを語るのだった。

『CARO CARROWACK』Damian Bradfield  Luis Mendo...

『CARO CARROWACK』Damian Bradfield + Luis Mendo
WeTransferのCCOでもあるダミアン・ブラッドフィールドが著した自費出版の絵本(言語は英語)。イラストレーションとデザインは東京を拠点とするルイス・メンドが手がけた。家族の機能不全、自己発見、そして回復力を探る、ブラックユーモアたっぷりの成長物語となっている。オーディオブック版(2枚のヴァイナルがセットになっている)も発売中で、プロデュースはなんとジャイルス・ピーターソン。全72ページ/2025年3月発売/初版 限定500部 https://www.carocarrowack.com/

Photograph: Kei Murata

子どもたちに真相を伝えるための絵本

──本作『カロ・キャロワック』の構想はいつから始まったのでしょうか?

ダミアン・ブラッドフィールド 2023年9月ですね。

ルイス・メンド 結構前から始まって……。

ダミアン なぜならきみの作業が遅いからで……(笑)

ルイス (笑)。ダミアンは元々ぼくの友人の上司で、彼が友人に「いいイラストレーター知らない?」と聞いたところ、もちろんいいイラストレーターはこの世の中にたくさんいるわけで、みんな忙しいから断っていたなかで、ぼくがラストチョイスとして選ばれたんですよね。「ルイスは、ベストではないけど、できる」って、そういう感じだよね?

ダミアン 9番目のラストチョイスだったね(笑)。というのは冗談で、もちろん彼の作品のことが好きでオファーしました。韓国にいるときに電話して絵本の簡単なストーリーを伝えたところから始まりました。

──これまでダミアンさんは書籍、漫画を出版されてきましたが、なぜ絵本を今回つくろうと思ったのでしょうか?

ダミアン 長い話になるのですが、2018年に初めての著書を出版して、そこでは信頼を失ったインターネットについて書きました。例えば悪魔かと思うほどに酷い振る舞いをするフェイスブックのようなビッグテックや、そういった企業のCEOたちの傲慢さ。そういうことについて全編テキストの分厚い本を出版したものの、もう誰も本を読まないことに気がつきました。

英国では1年間で人々が読む本の平均値が1.5冊という数字も出ていますし、インターネットに関する悲観的な話を誰が読みたいのだろうと、なおさら現実的に考えたんです。なので、その次に出した書籍では、スペイン人のアーティストのDavid Sanchezと一緒にグラフィックノベル(『Argolithmic Reallity』)として出版しました。そのようなフォーマットのほうが、みなが手に取りやすいことを実感したんです。

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