1978年の発売開始から世代を超えて愛され続けるギンビス社の動物型ビスケット“たべっ子どうぶつ”をフル3DCGアニメーションで初めて映像化した映画『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』(公開中)。“まさかの映画化”となった本作は、うれしい仕掛けもアリのワクワクが詰まった完全オリジナルストーリーとなっている。

モフモフ感がたまらない!カワイイだけが取り柄で戦闘力ゼロのたべっ子どうぶつたちモフモフ感がたまらない!カワイイだけが取り柄で戦闘力ゼロのたべっ子どうぶつたち / [c]ギンビス [c]劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会
歌って踊るスーパーアイドル“たべっ子どうぶつ”が大人気のスイーツランドでは、おかしと人間が仲良く暮らしている。しかし、この世のすべてのおかしを排除して世界征服をもくろむ凶悪な“わたあめ軍団”に、メンバーの1人ぺがさすちゃんがさらわれてしまい…。カワイイだけが取り柄で戦闘力ゼロのたべっ子どうぶつたちが、大切な仲間を助けてスイーツランドを救うために立ち上がり、大冒険を繰り広げる!

監督はアニメ映画『放課後ミッドナイターズ』(12)の竹清仁が務め、脚本は俳優・脚本家の池田テツヒロ、アニメーション制作を『ソニック・ザ・ムービー』(20)のCGを手掛けたマーザ・アニメーションプラネットが担当。MOVIE WAKER PRESSでは、脚本の池田、企画・プロデュースの須藤孝太郎、クリエイティブプロデューサーの⼩荒井梨湖の3人にインタビューを実施し、かわいくて、泣けて、心に刺さるポイント満載の物語誕生裏話を語ってもらった。

■「アイドルグループって身近。それが『たべっ子どうぶつ』と親和性が高かったのかなと思っています」(小荒井)

ワクワクが詰まった完全オリジナルストーリーが展開ワクワクが詰まった完全オリジナルストーリーが展開 / [c]ギンビス [c]劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会
池田「たべっ子どうぶつは、現実世界ですでにお菓子界の大人気アイドルのようなもの。いろいろなところでグッズが並んでいる状況を考えてもやっぱりスターだなと思ったので、その人気を作品に落とし込もうというのが、設定をアイドルにした理由です。僕と竹清監督がBTS好きというのもあって、一人が主人公ではなくグループとしての魅力を出したいと考えて提案したら、竹清監督も気に入ってくれて(笑)。プロデューサー陣からも特に異論もなかったように記憶していますが…」

須藤「もう、最高です!と思いました」

池田「そうだったのか(笑)。よかったです」

小荒井「アイドルグループって身近。それが『たべっ子どうぶつ』と親和性が高かったのかなとは思っています。池田さんがおっしゃったように“グループ”っていうところがまさに!と思っていました」

池田「ただ、アニメーション制作チームのマーザさんは大変だったと思います。技術的にも大変だから、登場させるキャラクター数は極力抑えてほしいと初期の段階から言われていたので。しかもライブシーンなんかを描いた日には、ものすごい数のキャラが動くわけでしょう(笑)。ちょっと無理なんじゃないかなと思った部分もありましたが、相当、気合を入れて頑張ってくださったんだと思います。じゃなきゃ、不可能だったと思います」

世界征服をもくろむ凶悪な“わたあめ軍団”に立ち向かう世界征服をもくろむ凶悪な“わたあめ軍団”に立ち向かう / [c]ギンビス [c]劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会
小荒井「ライブシーンも含め全体の尺も最初はもうちょっと長かったのですが、ダレない程度の尺にするために、スパッと削りました。作っているとどうしてもあれもこれもとやりたいことがどんどん出てきて、長くなってしまいがち。フル3DCGでライブシーンを映像化するのはなかなかカロリーがかかるという声もあったので、どこまでできるのかと思っていましたが、出来上がったものは想像以上のクオリティでした」

須藤「めちゃくちゃ“大変”だったと思うけれど、多分、“おもしろさが勝つ”んじゃないって勝手に拡大解釈をしていましたが…(笑)」

池田「アハハハ」

須藤「困難なリクエストがあればあるほど、それを超えてやろうというモチベーションのスタッフが集まっていたので、自分たちの力の出し合いのようなものが映像にもどんどん乗っかっていって、会話では『こういうことできませんか?』『ハードル高いですよね』となったとしても、『やってやるぞ!』という空気感が現場にあった気がします。すごくいい現場だったから、あのフィルムのコンディションになったんじゃないかな」

小荒井「スタッフ陣の仲も良くて、誰かの提案や意見を否定することなく、『いいね!』『やってみよう』という雰囲気になるんです。振り返ると我々3人の脚本会議もそんな感じだった気がします」

■「メソッドに基づいて書いていると予想外のバカなアイデアが出てこないんですよね(笑)」(池田)

ギンビス社の動物型ビスケット“たべっ子どうぶつ”まさかの映画化!『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』が公開中ギンビス社の動物型ビスケット“たべっ子どうぶつ”まさかの映画化!『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』が公開中 / [c]ギンビス [c]劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会
池田「1000本ノックとまでは言わないけれど、プロットはたくさん書かせていただきました。オリジナルなのでいろいろな可能性があって。最初はやっぱり『たべっ子どうぶつ』なので、ほのぼの子どもアニメ路線だなと思って、とにかく“ほのぼの”をテーマに書いていました。だけど、第一稿まで書き上げた段階で須藤さんから『一旦ゼロベースに戻しましょう』って言われたんです。実は僕はそれがすごくうれしくて」

須藤「そうだったんですね」

池田「僕のような“熱量のあるバカ”のやりたいことを、プロットから感じ取っていただいたのかなって。脚本のメソッドに基づいてというオーダー通りに仕上げたものは、多分及第点はもらえるかもしれないけれど、僕としてはピンとこなくて。メソッドに基づいて書いていると予想外のバカなアイデアが出てこないんですよね(笑)。非常に丁寧な段階を踏んで作ったものだったけど、須藤さんの反応は『うーん』という感じ。案の定の反応である意味ありがたかったけれど、そこからゼロに戻すのはなかなか大変。まだ路線もはっきりしていないなかだったので、『じゃあ、3人でまた話し合いましょう』ってこのメンバーでリモート会議を重ねていきました」

小荒井「コロナ禍だったのでほとんどリモートで」

池田「そこで須藤さんがぽつりぽつりと発したことをメモしていきました。らいおんくんは命をかけて仲間を救うとか、お菓子のアスパラガスは硬いからなにかしらの道具や武器に使えるんじゃないかとか、太陽に向かって飛んでいくたべっ子どうぶつたちがこんがり焼けていい匂いがしてくる、とか(笑)。そんなことを須藤さんが言うたびに『わかりました』とメモをして。本当はよくわかっていなかったのだけど(笑)、それを1回まとめた段階でちょっとSFチックなものになっていきました」

須藤「そうでしたっけ?全然覚えてないなあ(笑)」

池田「須藤さん忘れていても大丈夫です。僕や小荒井さんがメモっているので」

小荒井「私も覚えています!」

大切な仲間を助けてスイーツランドを救うために立ち上がる!大切な仲間を助けてスイーツランドを救うために立ち上がる! / [c]ギンビス [c]劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会
池田「ずっと大事にしていたのは、ほかの動物アニメと違ってお菓子のキャラクターやお菓子が関わってくるということ。そこを軸にしながら、須藤さん、小荒井さんが本当にやりたいことというのを汲み取り、盛り込むことを意識していました」

須藤「僕はプロデューサーですが、このプロジェクトではピエロみたいなもの(笑)。真のプロデューサーの小荒井さんに従って動いていたくらいに思ってもらえれば…」

池田「なにを言ってるんだか(笑)」

小荒井「ですよね。でもまじめな話、第一稿までできていた脚本はすごくいいものでした。ギンビスさんの社長からもOKをもらえていたけれど、『うーん』みたいな雰囲気もあったのも事実。あれはあれで成り立っていたお話だけど、ギャップのようなものを考えた時に、『もう少しなにか(アイデア)があるんじゃないか?』とみんなが感じていたと思いました。そこからのゼロベースに戻す、でしたよね」

池田「そうでしたね…」

仲間のために立ち上がる姿に胸が熱くなる!仲間のために立ち上がる姿に胸が熱くなる! / [c]ギンビス [c]劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会
小荒井「私がお願いしていたのはとにかく、“かわいい”と“泣ける”、この2つの要素を入れてほしいということ。キャラクタービジネスとしてもそうですし、私自身がキャラクターものが大好きということもあり、キャラクター好きの方のこと、それこそたべっ子どうぶつが好きな方のことを考えると、かわいいは絶対に入れなきゃいけない要素。そこからかわいさを武器にするというアイデアが生まれました。個々のキャラクターの個性は池田さんに考えていただいたけれど、『このキャラクターはこういう言葉は使わない』みたいなイメージのようなものには、その都度コメントさせて頂いた記憶があります」

■「ギンビスさんが掲げている3つの“I”もアイデアのポイントに」(須藤)

おかしが大好きで食いしん坊な女の子・ペロ(声:大野りりあな)おかしが大好きで食いしん坊な女の子・ペロ(声:大野りりあな) / [c]ギンビス [c]劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会
須藤「ギンビスさんが掲げている3つの“I”もアイデアのポイントになりました。なかでも『たべっ子どうぶつ』に英語が書かれているように、International=国際性みたいなところを表現したいという話もしましたよね。それが本作のキーパーソンでもある、ペロの成長という部分につながっていると僕は理解しています」

小荒井「残り2つの“I”については?」

須藤「あとはギンビスさんのホームページを見ていただければ(笑)」

池田「言わないんだ(笑)」

小荒井「なんでよ(笑)!」

須藤「残りの2つについては特にリクエストもなかったと記憶しています。ギンビスさんからは『とにかくいい映画にしましょう!』ということをいつも言われていて。それが一番難しいという…」
まさかの大冒険が繰り広げられるストーリーにワクワクまさかの大冒険が繰り広げられるストーリーにワクワク / [c]ギンビス [c]劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会

池田「僕がよく覚えているのは、『お菓子は平和産業』だということ。笑顔を与える存在だというのは解釈したところです。お菓子を食べられる余裕って平和じゃなきゃ生まれないもの。そういうことをひとつひとつ大事にして、打ち合わせなどで出てきた言葉をメモとして付箋のように貼っていました。竹清監督は負け犬たちがのし上がって最後は勝つ!みたいなアンダードッグものがとても好き。僕もそういう話は好きだから取り入れてみようかなとか、小荒井さんが大事にしていたモフモフ感やカワイイけれど怖いみたいな敵たちのギャップとか。あとは、ご自身は口にしないし認めないけれど、須藤さんはとてもピュアな物語を求めているというのは打ち合わせを重ねるなかでちょっとずつわかってきていたので、そんなキーワード大切にしていました」

須藤「僕はまったくピュアじゃないです。ちょっとでもキレイなものがあったらそれを0にする、スクラップ&ビルド、破壊と再生をモットーにしているタイプですから…」

池田「そんなふうにメタで話すからわからなくこともあるけれど(笑)。絶対にピュアな人だと思っています!」

小荒井「『たべっ子どうぶつ』としては絶対にありえないアイデアを言った時は、私が却下する、みたいなことを繰り返しましたよね。須藤さんに対してNOといえるのは私くらいなので、そこはある程度操作させていただきました(笑)」

池田「アハハハ!」

小荒井「正確には注意させていただいた、くらいですかね(笑)」

歌って踊るスーパーアイドル「たべっ子どうぶつ」のリーダー、らいおんくん歌って踊るスーパーアイドル「たべっ子どうぶつ」のリーダー、らいおんくん / [c]ギンビス [c]劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会
池田「正直『ポプテピピック』を作った人なので、僕のアイデアは生ぬるいとか思われてないかみたいな部分が僕自身にあったんですけれど…。だって須藤さんから出てくるアイデアはどうぶつ型のお菓子が出てきて銃撃戦になって中に入っているチョコが飛び散るみたいな話だったりするし。まあ、小荒井さんがしっかり止めてくれるので安心して聞いていられるんですけれど」

須藤「まあ、あくまでアイデアですから」

池田「そんな脱線話も含めた会議をたくさん積み重ねていた気がします。改めて振り返るとこの3人でよかったなと。ここにまじめな人がいたら、例えアイデアでも『ふざけんな!』と怒られたと思うので(笑)。コロナ禍で暇と言えるくらい時間はたっぷりあったので、たくさん打ち合わせができたのもいまとなってはありがたかったです。まあ、マーザさんはそうもいかない状況だったと思いますけれど」

■「『たべっ子どうぶつ』ファンの方にとっては、解釈一致とか解釈違いとかいろいろな意見があると思います」(池田)

【写真を見る】らいおんくんに松田元太、ぞうくんに水上恒司!豪華吹替キャストは「ご本人のイメージ込みでのオファー」【写真を見る】らいおんくんに松田元太、ぞうくんに水上恒司!豪華吹替キャストは「ご本人のイメージ込みでのオファー」 / [c]ギンビス [c]劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会
小荒井「キャスティングはご本人のイメージも込みでのオファーだったので、アフレコは本当に順調でした。松田(元太)さんのらいおんくんも最初からピタッとハマっていてうれしくなりました。水上(恒司)さんはぞうくんのキャラクターをイメージしていろいろと役作りをしてくださったのですが、『水上さんのままがいいので、ままでお願いします!』と言ったくらい(笑)。せっかくいろいろと考えていただいたのですが、ご本人のままが思い描いたイメージだったので。もちろんキャラクター設定ができていたからこそのことなので、池田さんに感謝です!」

池田「『たべっ子どうぶつ』ファンの方にとっては、解釈一致とか解釈違いとかいろいろな意見があると思います。ただ、今回の物語でキャラクターの設定を決める際には、ギンビスさんがオフィシャルで出しているキャラクターの性格などは一旦置かせていただきました。もちろん参考にした部分もいっぱいありましたが、そうなるとどうしてもほのぼの路線に戻ってしまうことになるので…。ねこちゃんはビリー・アイリッシュみたいにしたいとか、実在も架空も含めていろいろな人物のイメージを当てはめて考えていきました。らいおんくんはちょっと天狗になっているお調子者みたいな感じですぐにまとまりました。悩んだのはきりんちゃんとわにくんかな」

小荒井「そうでしたね」

池田「きりんちゃんは背が高いのを遠慮して猫背になって『目立っちゃってごめんなさい』みたいなことを言いそうという話から決まっていった気がします」

小荒井「怖がりとか臆病みたいなイメージがいいかもという話をした記憶があります」

別行動をするわにくんとひよこちゃんコンビも大活躍!別行動をするわにくんとひよこちゃんコンビも大活躍! / [c]ギンビス [c]劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会
池田「わにくんは物語の進行上、若干ご都合みたいなキャラ設定をしましたが、結果としていいキャラになりました。普段はあまり動かないのに、急にシャッと動いたりするというわにの特性を活かせば、なにを考えているのかわからない、エンジニアタイプにもハマるかなと。頭に鳥がとまっているのもあのコンビだけが別行動するという流れに決まるポイントになって、とてもうまくまとまったと思います」

小荒井「正直なことを言うと、わにくんは我々の悪ふざけが集まっているみたいな…」

須藤「アハハハ!」

小荒井「須藤さんがわにくんに『シナリオどおりだわに』みたいなセリフを言わせたいとか言い始めたりして」

池田「そうでした、そうでした。きっと僕のメモに残っています!」

須藤「覚えてないなあ。僕の一番好きな言葉は誠実。それをモットーに生きているので、僕が言えるのは誠実に作品に向き合った結果こうなっているということだけでしょうか…」

小荒井「ここはカットで大丈夫です(笑)」

池田「まあ、いまとなっては小荒井さんにカットされるようなものも含めて須藤さんの言葉ひとつひとつが、いい方向に向かうキーになっていた気がします。ちょっとすごいと思ったり、なんかムカつくなと思ったりもしたけれど」

須藤「アハハハ」

小荒井「ちなみにぺがさすちゃんは、せっかく映画化するならオリジナルキャラクターを入れたいという想いから出てきたアイデアです、たべっ子どうぶつファンにも受け入れられるといいなと願っています」

映画オリジナルキャラクターのぺがさすちゃん映画オリジナルキャラクターのぺがさすちゃん / [c]ギンビス [c]劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会
須藤「ゲストキャラクターに関して言うと、お菓子業界が盛り上がったらおもしろいんじゃないか、という想いを形にしたもので、いろいろなメーカーさんにお話を持ち込んで…」

池田「でも結果、あのお菓子だったからこの結末に…というすてきな表現になったので、すごくよかったですよね。むしろよくここまでいろいろな方々がOKしてくださったなと」

須藤「本当にそう。あるキャラクターは本家の声で出演してくださったりして。そのうえ、セリフまでしゃべっていただいて、感謝しかないです。今回『たべっ子どうぶつ』とタイトルが付いていますが、広い意味で言うと“お菓子の映画”です。なので、今後もいろいろなキャラクターに出演してもらって、第2弾、第3弾と続けていく予定です。ちなみに第2弾は3年以内に公開予定で、新たなお菓子のゲストキャラクターに交渉中です!」

小荒井「勝手に誰も聞いていない第2弾の話をしているけれど、まずは第1弾がヒットしないことには…」

池田「第2弾、僕はまだオファーもらってないですよ」

須藤「あれ?今日本読みじゃなかったかな?」

池田「脚本はもうできているのか(笑)。でも本当に第2弾をやるなら、いまから考えて書き始めないと」

須藤「ぜひ、書き始めてください!」

小荒井「いやいや、誰か止めないと(笑)。まずは第1弾がヒットしますように」

池田「よろしくお願いいたします!」

取材・文/タナカシノブ

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