「定山渓第一寶亭留 翠山亭」の中にある「風呂屋書店」=2025年3月、札幌市の定山渓温泉

 札幌市の奥座敷、定山渓(じょうざんけい)温泉の旅館の一角に設けられた「風呂屋書店」が、宿泊客を中心に支持を集めている。旅館に溶け込む非日常の空間に約2500冊の本が並ぶ。異なる業種をまたいだ取り組みには、全国的に減少する本屋をなくさずに守りたいとの思いも込められている。旅館の担当者は「旅先で手に取る本との出合いを楽しんで」と笑顔で話す。(共同通信=野島奈古)

 書店は「定山渓第一(じょうざんけいだいいち)寶亭留(ホテル) 翠山亭(すいざんてい)」の2階にある。風呂おけや銭湯のロッカーを模したデザインの本棚に、旅館スタッフが厳選した食や旅といった豊富なジャンルの書籍を取りそろえる。

 マッサージスペースを改装して昨年9月に開店した。仕入れから販売まで、運営の全てを旅館が行う。

 個室の読書スペースも備えられており「お風呂に漬かるようにゆっくりと読書を楽しんでほしい」と、提案者の一人で旅館スタッフの大島彩乃(おおしま・あやの)さん(35)は話す。

 隣接するラウンジに本を持ち込み、お酒を飲みながら読むこともできる。以前はスマートフォンを眺める客の姿が多く見られたが、本の世界に没入する人が徐々に増えているという。

 普段は書店に足を運ばない人も、宿の中にあれば本を読むきっかけになるのではと考える大島さん。「時間にとらわれない中で本との出合いがある。日常に戻るまでの、つかの間の時間をゆっくり過ごしてほしい」と語った。

 宿泊客は無料で利用できる。書店だけを利用する日帰り客は1100円。入浴とセットの場合は2850円。収益は定山渓での植樹活動に充てられる。

「風呂屋書店」の店内。風呂おけや銭湯のロッカーを模したデザインの本棚に書籍が並ぶ=2025年3月、札幌市の定山渓温泉

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