──グラフィックデザイナーとしてのバックグラウンドをお持ちですが、その経歴を存分に生かされていますか?
もちろんです。アイデア出しからクリエイティブに関するディレクションはすべて自分で手がけました。実際のレイアウトなどは、NYにいる友人で優れたグラフィックデザイナーのエリック・フーにお願いをして、色々と手伝ってもらいました。私自身、自分の作品に関係するものにはすべて関わりたいタイプなので、今回も一切の手抜きなく進めました。
──過去のコレクションやクリエーションを遡ることで、蘇ってきた思い出があったら教えてください。
最初はものすごく不思議な気分でした。ファッションはいつでも次のシーズン、次のコレクション、次のストーリーと、常に先ばかり見ているので立ち止まることがないんです。それが、今回初めてゆっくりと過去を振り返る作業をすることで、この10年間いかに前だけを見て走ってきたかを実感しました。遊び心たっぷりのワクワクするようなモノをたくさん生み出してきたことにも、新鮮に驚いたりして。ただ、この振り返り作業のおかげで改めて自身のルーツに戻ろうという気持ちになり、2025年秋冬コレクションは「HOMECOMING(帰郷)」と題し、アーカイブを再構築し、そこに今を反映したコレクションを発表しました。例えばジュエリーにしても、若い子は、私たちが10年前に手がけていたものを知らないわけです。だから、私たちがどのようにしてジュエリーをスタートし、そこにどんなテクニックを要したかなど、自分たちのジュエリーをサンプリングするのにもちょうどいい時期だなと思ったんです。
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