2026年7月、カナダで発生した壊滅的な山火事による煙が米中西部と北東部の広い範囲を覆い、各都市で大気質に関する警報が発令された。

煙の濃度は極めて高く、健康な成人であっても健康を守るための対策を取ったほうがよいレベルだ。気候変動などを背景に北米大陸全体で山火事が激甚化しており、実際に火が燃えていない地域にもその影響が及んでいる。

いま、この原稿を書いている7月15日時点で、カナダ全土で100件を超える山火事が制御不能な状態で燃え拡がっており、さらに数百件が監視下に置かれているか、消火活動が続けられている。煙は南東方向へと流れ、ミネソタ州からニューヨーク州にかけての空を覆った。今朝トロントでは、オレンジ色に染まった空気の中を出勤する人々の印象的な光景が見られた。

この地域は熱波にも見舞われており、多くの地域で気温が32℃を大きく超え、体感温度を示すヒートインデックス(Heat Index)はさらに高くなっている。

煙と熱波がダブルで襲いかかる

夜になると、ニューヨーク市の大気質指数(AQI)は最高180に達し、米環境保護局(EPA)の基準で「健康に悪い(unhealthy)」の区分に入った。ほかの地域はさらに深刻で、ミネソタ州ダルースではAQIが500を超えた(301を超えると「危険(hazardous)」とされ、誰にとっても安全でないレベルとみなされる)。明日には、ニューヨークを含む米北東部の一部でさらに煙が濃くなると予想されている。

この地域を覆う山火事の煙には、PM2.5と呼ばれる微小粒子状物質が含まれている。直径2.5マイクロメートル(2.5μm)未満の粒子を指し、人間の髪の毛の太さの約30分の1にあたる。

PM2.5への曝露は、とくに脆弱な層においてさまざまな疾患を引き起こしたり悪化させたりする可能性がある。ハーバード大学医学部准教授で呼吸器内科医のニコラス・ナシカスは、喘息や肺疾患などの基礎疾患をもつ患者には外出時間を制限するよう伝えていると話す。

子どもは「呼吸のペースが速く、単純に呼吸量が多い」とナシカスは言う。高齢者は複数の疾患を抱えていることが多く、換気の悪い住宅や高齢者施設に暮らしているケースもあり、リスクが高い。

健康のために暴露を減らす工夫を

メリーランド大学公衆衛生大学院准教授のジェニファー・ストウェルは、AQIが100を超える日には健康な成人でも対策を取ったほうがよい場合があると指摘する。

「少なくとも、外出時間を制限して曝露量全体を減らすことが重要です」と彼女は言う。長時間屋外にいる必要がある場合はN95マスクの着用を勧めるという。AQIが110に達したボストンに滞在中のストウェルは、屋外イベントへの参加を夜まで見合わせるつもりだと話した。

コロンビア大学の気候物理学准教授、ダン・ウェスターベルトも同様に慎重な姿勢を見せる。「今日は子どもたちを家の中にいさせるつもりです」と彼は言う。「今日も明日も、ランニングのような激しい運動はしません」

気候変動は気温上昇を招いている。それによって山火事シーズンは長期化し、より高温で乾燥した、爆発的な延焼につながりやすい条件が生まれている。

25年に発表されたある研究では、山火事の煙によって米国内で年間40,000人が死亡していると推計されており、温暖化が続けば50年までにその数は2倍近くに増える可能性があるという。

山火事による大気質の悪化が日常化する一方で、長期曝露に関する研究はまだ発展途上だ。23年にも、カナダの山火事による同様の煙が米北東部を襲っている。

「生涯にわたって、あるいは長期間にわたって高濃度の大気汚染に晒されることが、早期死亡につながることは研究で幾度も示されています」とウェスターベルトは言う。「高濃度の大気汚染に頻繁に晒される環境で生活していると、寿命が数カ月単位で縮まることもあり得ます」

PM2.5は交通や発電所などさまざまな発生源から生じるが、山火事の煙にはまた別の危険性がある。火災が市街地に拡がるにつれ、住宅や自動車、遊具など自然由来ではない構造物まで焼失することがあり、それが有毒な化学物質の混合物を空気中に生み出す。

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