一人暮らしの高齢者が増える中、外出の付き添いや家事代行など、在宅生活を柔軟に支える民間サービスのニーズが高まっています。自治体が運営する介護保険サービスの対象にはならない要望にも応えてくれるからです。支援内容や利用料に一律の基準がないことから、信頼性の向上が課題になっています。(糸魚川千尋)

利用者全額負担

単身高齢者支援 民間サービスで…ヘルパー 介護保険外 草むしりや録画予約

掃除機をかけるヘルパーの女性と談笑する中沢さん(右)。「いつも助かっています」と語る(6月15日、東京都東村山市で)

 「家事は不慣れで、掃除機はかけたことがない……」。6月中旬、東京都東村山市で一人暮らしの中沢甚一さん(97)は、自宅の居間でほほえんだ。「少し汚れているので掃除しておきますね」と、手際よく掃除機をかけるのは、民間サービスの訪問ヘルパーだ。

 中沢さんは3月下旬、外出先で倒れ、救急搬送された病院で硬膜外血腫と診断された。10日ほどで退院できたが、ベッドで寝て過ごすうちに足腰が弱くなった。

 在宅生活に不安があったが、同市から「要介護認定」を受けておらず、公的な訪問介護など介護保険サービスをすぐに利用できなかった。家事などの支援を受けるため、横浜市で暮らす長男(66)が民間ヘルパーを依頼した。

 掃除や散歩の付き添い、理髪店の予約などを頼むほか、亡くなった妻の遺品整理など、ふと思いついた用事にも対応してもらえる。基本料金は2時間で約8000円が全額負担になり、原則1割負担の介護保険サービスよりも割高にはなるが、「助かっている」と言う。

 外出支援や家事代行、配食などの民間サービスを利用する高齢者は増えている。経済産業省の推計で、2020年に6・4兆円だった市場規模は50年に16・9兆円と2・6倍になる。

 背景には単身高齢者の増加がある。国の推計では、20年は672万人だったが、50年には1・6倍の1084万人に増え、高齢者の3・6人に1人が単身者になる。未婚率の上昇や家族関係の希薄化に伴い、子どもなど頼れる人が身近にいない高齢者も多い。

 高齢者を支える介護保険サービスは、要介護認定を受けないと利用できず、認定された要介護度によって使えるサービスの種類や時間が限られる。草むしりやペットの世話など介護保険で応じられない頼みごとをカバーする選択肢が民間サービスだ。

単身高齢者支援 民間サービスで…ヘルパー 介護保険外 草むしりや録画予約

ヘルパーの女性に自身の携帯電話を操作してもらい、息子にメールを送信する佐藤さん(右)(6月8日、東京都新宿区で)

 介護保険と民間サービスを組み合わせ、不自由を解消するケースも。東京都新宿区の佐藤稔子さん(73)は左半身にまひがあり、両手を動かしにくいため、毎日、介護保険のヘルパーから、食事の介助や掃除、洗濯などの生活援助を受ける。

 さらに、同じヘルパーに民間サービスとして5分間ごとに550円を支払い、息子宛てのメールの作成や送信、テレビ番組の録画予約も頼んでいる。「おかげで快適な一人暮らしがかなう」と話す。

業界で認証制度

単身高齢者支援 民間サービスで…ヘルパー 介護保険外 草むしりや録画予約

 介護保険は、国が支援内容や利用料を一律に定めているのに対し、民間サービスは事業者ごとに異なり、提供時間や利用料に幅がある。介護サービスのように自治体がまとめた事業者一覧もないため、「違いがよく分からず、選びにくい」との声も出ている。

 信頼性を高め、安心して利用してもらえるように関連企業10社が「介護関連サービス事業協会」(東京)を設立し、昨年4月に認証制度を創設した。利用料を明示し、苦情相談の窓口を開設しているなどの条件を満たした22事業者をウェブサイトに公表している。

 日本総研の紀伊信之研究員は「介護保険と民間のサービスを組み合わせることで、自宅で暮らし続けられる高齢者が増える。身寄りのない高齢者の増加に伴い、求められるサービスはより多様化するだろう。支援が必要な人に、適切な情報を届けられる体制を整える必要がある」と指摘する。

自治体も事業者活用

 介護が必要な単身高齢者らを支えるため、民間事業者を活用する自治体も多い。金沢市は、クリーニング業者に委託し、布団の乾燥や洗濯を無料で引き受ける。布団を干すのが難しい人にも、快適に暮らし気分転換してほしいという。

 東京都渋谷区は、介護事業所のヘルパーが病院内まで付き添うなどのサービスを提供する。利用料は1時間あたり数百円と、安く設定している。愛知県豊明市では、生協と協定を結び、登録者を対象に、生協のスーパーで購入した商品を無料で自宅まで届けてもらっている。

(2026年8月15日付の読売新聞朝刊に掲載された記事です)

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