スマートウォッチを買うと、たいてい専用アプリを入れます。そこから睡眠やワークアウトの記録をもっと詳しく見ようとして、別のフィットネスアプリを追加で入れることもあるでしょう。SNSの広告で見かけた、少額のトライアルつきのアプリを試してみた、という方もいるはずです。

その少額のトライアルが、そのまま月額課金に変わっていた。しかも運営元が海外で、問い合わせても英語で返ってくる。国民生活センターが2026年8月5日に公表した集計を見ると、この形の相談が急増しています。

海外事業者とのトラブル相談が、10年で最多になった

越境消費者センターへの年度別相談件数の棒グラフ。2025年度が9,127件で開設以降最多、前年度6,005件の約1.5倍

海外の事業者との取引でトラブルにあった日本の消費者のために、国民生活センターは「越境消費者センター(CCJ)」という専用窓口を持っています。2025年度にここへ寄せられた相談は9,127件。開設以降でもっとも多く、前年度の6,005件と比べて約1.5倍になりました。

それまでの最多は2023年度の6,371件でしたから、そこも大きく超えています。10年ぶんのグラフを並べると、2025年度だけが飛び抜けているのが分かります。

取引の形態は電子商取引が98.6%。つまりほぼ全部がオンラインでの契約です。

相談の半分以上が「解約できない」

トラブルの中身を見ると、傾向がはっきりしています。

トラブル類型
件数
割合

解約
4,834件
53.0%

詐欺疑い
1,068件
11.7%

商品未到着
555件
6.1%

返品
307件
3.4%

不当請求
176件
1.9%

不良品
161件
1.8%

模倣品到着
143件
1.6%

その他
1,883件
20.6%

「解約」だけで53.0%、4,834件です。海外事業者とのトラブルというと偽物や詐欺を思い浮かべますが、実際にいちばん多いのは「契約を切れない」という相談でした。

支払い方法はクレジットカードが72.1%(6,577件)。カードを登録したまま、毎月引き落とされ続ける形です。

報告書に「フィットネスアプリ」が名指しで出てくる

では、何のサブスクで解約できなくなっているのか。報告書はこう書いています。

「SNSをきっかけとした占いサイト、性格診断サイト、IQ診断サイト、フィットネスアプリや、位置情報検索サービスなどのサブスクの解約トラブル」

占いや診断系に混ざって、フィットネスアプリと位置情報検索サービスが挙げられています。どちらもスマートフォンやスマートウォッチを使っている人が、ごく普通に手を出す種類のアプリです。

サブスク自体が悪いわけではありません。Pixel Watch 5のAIヘルスコーチのように、メーカーが最初から「サブスク契約が必要」と明言しているものもあります。問題になるのは、契約したつもりがないのに始まっていて、しかも止め方が分からないケースです。

なお、こうした「役務・サービス」が相談全体の55.0%(5,019件)を占めています。ただしこの中には電子渡航認証(ESTA等)の申請代行サイトなども含まれるので、全部がアプリの話ではありません。

実際の相談はこういう形をしている

ソファでノッチ付きiPhoneを両手で持ち、書類アプリの画面を操作している女性

国民生活センターは2025年4月にも、このテーマで単独の注意喚起を出しています。そこに載っている事例が、そのまま起こりうる形をしています。以下は公表資料の相談事例を要約したものです。

フィットネスアプリを解約したはずが、請求が続いている
SNS広告をみて契約したフィットネスアプリを解約したつもりだったが、サブスク代金として毎月約7,000円がクレジットカードから継続して引き落とされていることに気づいた。問い合わせをしたが、英語で返事があり内容がわからない。(2025年1月受付・50歳代・女性)

位置情報検索サイトのサブスクを解約したいが方法がわからない
友人が携帯電話を紛失し、困っていたため探し方を調べたところ、位置情報が検索できるサイトがあった。メールアドレスを登録し、約200円の使用料をクレジットカードで決済した。ところがサブスク契約になっており、その後2カ月にわたり毎月約3,000円が引き落とされていることに気づいた。(2025年3月受付・30歳代・男性)

3日間のトライアルのはずが、サブスクになっていた
SNSの広告をみて、3日間で約200円の占いのトライアルを申し込んだ。後日デビットカードの請求を確認したところ、約200円だけでなくサブスク代金として約6,000円も引き落とされていた。(2025年3月受付・20歳代・女性)

3件に共通しているのは、入口が少額で、出口が分からないという点です。200円のつもりが月3,000円、月7,000円になっている。しかも気づくのは請求を見たときです。

相談の中心は高齢者ではなく、現役世代

相談者の年代を見ると、この話の性格がよく分かります。

年代
件数
割合

20歳未満
248件
2.7%

20歳代
1,985件
21.7%

30歳代
1,753件
19.2%

40歳代
1,870件
20.5%

50歳代
1,830件
20.1%

60歳代
1,001件
11.0%

70歳代
347件
3.8%

80歳以上
60件
0.7%

不明
33件
0.4%

20歳代から50歳代までが、それぞれ約20%ずつ。この4つの年代で全体の約8割です。70歳代は3.8%しかありません。

消費者トラブルというと高齢者の被害を思い浮かべがちですが、この分野は逆です。SNSを日常的に使い、アプリを気軽に入れ、クレジットカードをアプリに登録している層が、そのまま当事者になっています。男女比も女性54.3%、男性45.6%とほぼ半々でした。

日本語のサイトでも、運営は海外のことがある

厄介なのは、見た目で判断できないことです。

国民生活センターは「サイト等は日本語表示でも運営を行っているのは海外事業者の場合があります」と注意を促しています。その場合、問い合わせや解約手続きが英語になったり、解約の方法自体が分かりにくかったりします。

怪しいページを見分ける観点は、買ってはいけないスマートウォッチの見分け方で挙げている「日本語が不自然」「事業者情報が書かれていない」といったサインとほぼ共通します。

実際、所在地が判別できた5,346件のうち、相手方事業者の所在地はアメリカが30.2%で最多。次いでキプロス11.7%、シンガポール9.8%、中国6.0%でした。日本語で表示されていても、請求元は日本にいないことがある、ということです。

入れる前と、入れたあとにできること

国民生活センターが挙げているアドバイスは3つです。どれも派手ではありませんが、順番が大事です。

1. 登録する前に利用規約を見る
SNS広告から入ったアプリやサイトは、登録前にトライアルの条件(何日間、何回まで無料なのか)と、サブスクに関する記載がないかを確認します。トライアルのつもりでも、一定期間内に解約しなければ自動的にサブスクへ移行する契約になっていることがあります。英語表示なら「Terms and Conditions」の部分です。

2. 解約の条件と方法を、契約する前に確認しておく
続けるつもりがないなら、期間内に解約する。当たり前のようですが、上の事例はいずれも「解約方法が分からない」で止まっています。入る前に出口を見ておく、という順番でないと間に合いません。

なお国内の通販でも、支払い方法をめぐるトラブルは増えています。代引き配達の相談が1年で46.9%増えた件もあわせてどうぞ。

3. クレジットカードの請求をこまめに見る
サブスクは、使っていてもいなくても課金されます。カード会社からの請求を月に一度は開いて、身に覚えのない少額の継続課金がないかを確認しておく。これが実質的な最後の防波堤です。

不安に思ったときやトラブルになったときは、消費者ホットライン「188(いやや!)」で最寄りの消費生活センター等を案内してもらえます。相手が海外事業者だと分かっている場合は、越境消費者センター(CCJ)というオンラインの専用窓口もあります。

まとめ

海外事業者とのトラブル相談は2025年度に9,127件で、開設以降最多。その53.0%が「解約できない」で、決済の72.1%がクレジットカードでした。報告書はその対象としてフィットネスアプリと位置情報検索サービスを名指ししています。

スマートウォッチやスマートフォンを使っていれば、この手のアプリに触れる機会は普通にあります。SNS広告から少額で入れるものほど、入る前に解約方法を見ておく。それだけで、月7,000円を何か月も払い続ける事故はかなり避けられます。

Source: 国民生活センター「2025年度 越境消費者相談の状況-越境消費者センター(CCJ)より-」(2026年8月5日・PDF)海外事業者とのサブスク契約だったなんて!-申込前に契約内容の確認を-(2025年4月22日)
グラフはいずれも国民生活センターの公表数値をもとに編集部が作成

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