社説/改正電気事業法成立 官民挙げて「人への投資」推進を

大規模な発電施設や送配電網の整備などに公的融資を可能にする改正電気事業法が成立した。原子力発電所など巨額投資が必要なプロジェクトに対し、国が資金面で支援することで、民間が投資しやすい環境を後押しする。予見可能性を高める第一歩と言えるが、問われるのは設備投資だけではない。原子力を支える「人」と「技術基盤」をどう維持するか。技術を次世代につなげる“人への投資”を官民挙げて進めたい。

改正電気事業法は2026年度中に施行される。原発の建て替え(リプレース)や次世代革新炉の開発など、巨額投資が必要な電源への資金調達を支援する枠組みである。現実的な制度設計と評価できよう。

原子力の推進において、国が関与を強めることは民間投資の拡大につながる一方で、大きな課題も残されている。人材の確保だ。プラントを設計・建設し、安全に運用する人がいなければ、せっかくの支援策も画餅に帰す。原子力産業が直面する課題は人材基盤の維持である。

日本原子力産業協会がまとめた「原子力発電に係る産業動向調査」によると、原子力関係従事者数は回復傾向にある半面、企業の人材確保にはなお課題が残る。8割を超える企業が人手不足を感じているほか、採用面でも「十分採用できている」と回答した企業は18%にとどまっている。

特に近年は、原発建設を経験した熟練技術者が第一線を退きつつある。データ上の従事者は増えても、現場を支える地方の中小サプライヤーの高度な溶接・加工技能は細り、暗黙知の技術継承は断絶の危機にある。

今、求められるのは実効性のある育成策だ。国、大学、研究機関が連携し、デジタル技術を活用した訓練や熟練技術者の知見を継承する仕組みづくりが不可欠である。

設備への投資だけでは原子力は動かない。設計、建設、保守、廃炉まで担う人材があって初めて、安全で安定した電力供給が成り立つ。人材は一朝一夕には育たない。改正法を契機に人への投資も進めたい。

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