風邪薬や胃薬など「市販薬」の自己負担額が来年から増える? OTC類似薬の保険給付見直しへ

「市販薬」の自己負担額来年から増える?OTC類似薬の保険給付見直しへ

「薬の代金が今後変わるかもしれない」というニュースに不安や疑問を感じている人もいるのではないでしょうか。5月29日、「健康保険法等の一部を改正する法律案」が成立しました。今回の改革では、将来にわたって医療保険制度を維持するため、OTC医薬品で代替できる一部の医療用医薬品について、保険給付の見直しが行われます。この内容について中路先生に伺いました。

中路 幸之助

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

医療保険制度改革について

編集部

医療保険制度改革について教えてください。

中路先生

2026年5月29日に「健康保険法等の一部を改正する法律案」が成立しました。この医療保険制度改革は、高齢化の進展に伴って増加する医療費に対応しながら、将来にわたって医療保険制度を安定的に維持することを目的としています。
同改革では、現役世代を中心とした保険料負担の増加を抑えつつ、世代を問わず誰もが制度に納得し、安心して利用できる仕組みづくりを目指しています。その一環として、市販薬(OTC医薬品)で代替できる一部の医療用医薬品(OTC類似薬)について、保険給付の見直しが行われます。たとえば鼻炎や胃痛、風邪症状、肩こりなどの日常的な症状に使用される一部の薬では、従来の自己負担額に加え、薬剤料の4分の1に相当する追加負担が発生する予定です。
一方で、子どもやがん患者さん、難病患者さんなどについては、負担が過度にならないよう配慮措置が検討されています。

OTC医薬品とは?

編集部

OTC医薬品について教えてください。

中路先生

OTC医薬品とは、薬局やドラッグストアなどで、医師の処方箋がなくても購入できる医薬品のことです。一方、医療用医薬品は主に医師の診察を受けたうえで処方される医薬品を指します。
さまざまな呼び名がありましたが、2007年から「OTC医薬品」という呼称に統一されました。OTC医薬品は、風邪や頭痛、胃の不調など、さまざまな症状の改善に役立つます。また、自分自身で健康管理を行う「セルフメディケーション」の実践を支える重要な存在です。軽い症状への対応や健康維持のために、OTC医薬品の特徴を正しく理解し、上手に活用して健康管理に役立てましょう。

内容への受け止めは?

編集部

今回の内容への受け止めを教えてください。

中路先生

医療現場の視点から見ると、今回の見直しは「限られた医療資源を、本当に必要とされる医療へ適切に配分する」という方向に沿ったものとして理解できます。医療資源には人的・経済的な制約がある以上、その有効活用を図る取り組み自体は重要であり、一定の合理性があるといえるでしょう。
一方で、懸念される点も存在します。とりわけ、自己負担の増加を避けようとする心理が働くことで、本来であれば医療機関を受診すべき症状であっても受診を控えてしまう、いわゆる「受診控え」が生じる可能性があります。例えば、一見すると市販薬で対処可能と思われる軽い風邪様症状であっても、その背後に肺炎やその他の重篤な疾患が潜んでいる場合もあります。

そのため、症状が長引く場合や、これまでと様子が異なると感じる場合には、費用面を理由に受診をためらうのではなく、速やかに医療機関を受診することが重要です。また、患者さん自身に「自分が配慮措置の対象に該当するかどうか」をあらかじめ理解しておいてもらうことも大切です。

具体的には、小児やがん・難病の患者さんに加え、それ以外の場合でも医師が継続的な使用の必要性を認めたケースなどでは、追加的な負担を求めない仕組みが検討されています。このような制度の内容を正しく把握しておくことで、不必要な不安や誤解を避けることにつながります。判断に迷う場面では、自己判断で薬剤の中断や変更を行うことは避け、まずはかかりつけ医や薬剤師に相談することが望まれます。専門家の助言を得ることで、より安全で適切な対応が可能になると考えます。

本制度については、単に「負担が増えるもの」としてとらえるのではなく、ご自身の症状の程度を見極めながら、軽度の症状にはOTC医薬品を活用しつつ、判断に迷う場合や不安がある場合には医療機関を受診する、といった「薬の適切な使い分け」を考えるよい契機ともとらえられます。医療とのよりよい関わり方を見直す機会として前向きに活用してみてはいかがでしょうか。

編集部まとめ

医療保険制度改革では、OTC医薬品で代替できる一部の医療用医薬品について保険給付の見直しが行われる予定です。背景には、増え続ける医療費の中で、医療保険制度を将来にわたって維持するという目的があります。制度の変更によって薬の選び方や負担額に影響が出る可能性もありますが、軽い症状への適切な対応やセルフメディケーションの考え方を知るよい機会ともいえるでしょう。日頃から自分の体調に関心を持ち、必要に応じて医師や薬剤師に相談しながら、上手に医薬品を活用していくことが大切です。

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