「カウンセラーは、例えば『誰かが着ている衣装は何でできているの? どんな色なの?』ということに集中させて、体をうまく動かせないといった自分のことではなく、意識をそちらに向けさせるようにしています。私はよくほかの人の衣装をじっと見ます。そうすると不安やパニックで鼓動が上がってしまわず、落ち着いた意識に戻りやすくなりますね。筋力トレーニングと一緒で、精神的にも日々トレーニングしていくことが大切なのではと思っています」

「どうしても本番が近づくと心に余裕がないなと思うことがあるのですが、そんな時は、本番で気がかりになりそうな要素をあらかじめクリアにしておくようにしています。私の場合なら、トウシューズの履き心地を念入りに確かめたり、心配な膝を重点的にケアする身体づくりをしたり。心が乱されないよう瞑想を取り入れながら練習を重ねることで、本番を心から楽しめるように工夫していますただ好きなYouTubeを見ながらゴロゴロする時間が、私は一番必要で好きな時間でもあります」

今後のキャリアで高田が目指していきたいところは、自らの経験を生かして人々を助けていくことだった。ここにも彼女の無私の精神が感じられる。

「私はたくさんの方に助けられて今も踊ることができています。自分もいつか誰かにとってそんな存在になれたらいいなと思っています。個人的に心理学を勉強したい気持ちもあるのでオンラインで受講できる大学を探したいですね」

日々のレッスンで心身の淀みを流し、クリアな状態を保つこと。プレッシャーを乗り越え、己の足裏でしっかりと床を掴む高田茜の強さは、そうした飾らない毎日の積み重ねから生まれている。

話を聞いたのは……

Akane Takada 高田茜

©Andrej Uspenski

高田茜
英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル。2016年「VOGUE JAPAN Women of the Year」にも選ばれている。手脚の長い華奢な身体、囁くように話す彼女だが、バレエへの情熱と、強い責任感を感じさせる言葉には、世界で戦うプリンシパルの輝きがにじみ出る。悲劇のヒロインを演じるドラマティック・バレエや、複雑な動きを求められるコンテンポラリー作品などに定評がある。

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