5月26日、Googleは新たな健康管理デバイス「Google Fitbit Air」を発売した。最大の特徴は、スマートウォッチやスマートバンドに当然のように存在するディスプレイを完全に排除した点だ。手首にはわずか約12グラムのバンドだけが残り、価格は1万6800円。この異色のデバイスは、24時間365日の「着けっぱなし」を前提に設計されており、健康トラッキング市場に新たな選択肢を提示する。同時に、従来の「Fitbitアプリ」は「Google Health」へとリブランドされ、Geminiを基盤とするAIコーチ機能が中核に据えられた。

Fitbit Airの本体質量は約5.2グラム、専用バンド装着時でも約12グラムと、一般的なスマートバンドと比較しても圧倒的に軽い。この軽さが、睡眠時を含めた常時装着を可能にする最大の武器だ。複数のレビューが指摘するように、就寝時に時計型デバイスを着けることに抵抗があるユーザーでも、Fitbit Airなら「着けていることを忘れる」ほどの装着感で睡眠データを取得できる。

搭載センサーは心拍数、血中酸素飽和度(SpO2)、心拍変動(HRV)、皮膚温変動、呼吸数を計測可能。不整脈(AFib)の兆候を検知する「不規則リズム通知(IRN)」にも対応する。水深50メートルまでの耐水性能を備えるが、これは表面コーティングによるもので永続的ではない点には注意が必要だ。

バッテリー駆動時間は最大7日間。5分の充電で約1日分の駆動時間を確保できる急速充電にも対応しており、出張や旅行時の充電忘れにも柔軟に対処できる。Engadgetの実測では、睡眠トラッキングを含めて1日あたり約15%のバッテリー消費で推移した。ただし、画面を持たないデバイスとしては、競合のWhoopが2週間の駆動時間を謳う点と比較するとやや短い印象は否めない。

画面がないことの代償として、時刻や通知の確認、ワークアウトの開始・停止操作は全てスマートフォン側の「Google Health」アプリに依存する。フィットネス利用においては、10分以上のウォーキングやランニングを自動検出する機能が搭載されているが、短時間のヨガやスイミングなど動きの少ない運動では自動検出が働かず、手動操作が必要になる。正確な運動記録を求めるアスリート層には、画面付きの「Fitbit Charge 6」など従来製品の方が適しているとの評価が各所で一致している。

Fitbit Airの真価は、むしろパッシブな健康管理と、新たに刷新されたGoogle Healthアプリとの連携にある。アプリは「今日」「フィットネス」「睡眠」「健康」の4タブ構成で、タイル状のUIにより重要な指標へ素早くアクセスできる。さらに、月額1580円(年額1万3000円)の有料プラン「Google Health Premium」に加入することで、Geminiを基盤とする「Google Health コーチ」が利用可能になる。

AIコーチは、睡眠データに基づく朝の体調評価、日中の活動に応じたパフォーマンス分析、夜間の振り返りレポートを1日3回のタイミングで提供する。チャット形式での対話も可能で、食事写真を送信すれば自動でカロリーと栄養素を推定記録する機能も備える。Engadgetのレビューでは、AIが過去の食事履歴を参照して「昨日と同じミューズリーと牛乳を記録して」といった曖昧な指示にも正確に対応した事例が報告されている。

一方で、AIの不完全さも明らかになっている。Engadgetのテストでは、高強度インターバルトレーニング終了直後の心拍数上昇を「ウォーキング」と誤認識するケースや、手動編集していないワークアウトに対して「セッションを更新しました」と表示する不自然な挙動が確認された。Googleは臨床専門家と協力して安全性テストを実施し、独自のSHARPフレームワーク(安全性、有用性、正確性、関連性、パーソナライゼーション)でAI応答を評価していると説明している。

注目すべきは、複数デバイスの同時ペアリングに対応した点だ。従来のFitbitアプリでは1アカウントにつき1デバイスまでという制限があったが、Google HealthアプリではFitbit AirとPixel Watchを同時接続し、データを自動統合できる。日中はスマートウォッチ、就寝時はFitbit Airという「デュアルウェア運用」がついに実用的になった。アナログ時計愛好家にとっても、手首にはお気に入りの時計を着けながら健康データを取得できる選択肢として映るだろう。

競合環境を見ると、画面なしのフィットネストラッカーとしてはWhoopが先行しており、2026年3月には5億7500万ドルの資金調達で評価額100億ドルに達している。Amazonの「Halo Band」やZepp Healthの「Helio Strap」など過去の類似製品は市場に定着しなかったが、GoogleはAIとソフトウェアの強みを活かし、ハードウェア単体ではなくエコシステム全体での差別化を図る。

価格面では、本体1万6800円に加えてAIコーチ機能のサブスクリプションが必要な点が購入のハードルとなる。ただし、Fitbit Air購入時には3カ月分の無料体験が付属し、Google AI Pro(月額2900円)の契約者は追加料金なしでHealth Premiumを利用できる。1万円未満のスマートバンドが多数存在する市場で、画面なしデバイスにこの価格を見出すかどうかは、ユーザーが「着けっぱなし」の価値をどこに置くかにかかっている。

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