胃ろうをしたら一切口からの食事は楽しめないのか。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)で体が動かない人が気管切開したら、どうやってコミュニケーションを取るのか。

そう考えたとき、すぐに答えが出るだろうか。なかなか答えを言えないのは、実際胃ろうを造設した方や、ALSで気管切開した方の「生の声」を聞くことが少ないからではないか。

ニャンちゅうの声を30年つとめた津久井教生さんの著書『ALSと笑顔で生きる 声を失った声優の「工夫ファクトリー」』は、まさにそんな「生の声」がつづられた一冊だ。津久井さんがALSだと判明する前から告知、そして体が動かなくなっていくときの生活もリアルに描いたノンフィクションであり、実用エッセイでもある。

ALSとは意識がありながら体が動かなくなっていく神経の病気で、明確な治療法のない難病である。津久井さんがALSという病気に向き合い、笑顔を忘れずに人生を楽しむことを忘れずに生きていく様子は、多くの人からも「生きる勇気がわいてきた」「津久井さんから元気をもらった」という声が寄せられている。

5月23日の「難病の日」に本書より抜粋の上お届けする前編では、突然盛大に転んだ日のことをお伝えした。太ももに違和感を抱き、明らかに歩きにくくなったという。後編ではもう一つ感じた「異変」についてお届けする。

もう一つの「異変」

2019年3月、突然盛大に転び、明らかに「太もも」に違和感を抱くようになりました。

また、体重にも変化がありました。2019年3月の朗読劇の出演前は体重が65キロありました。実はこの体重は自分の中で最高数値であり、よくここまで増やすことがあります。身長162センチの私にとってはちょっと太めなのですが、この方が声を出しやすいため、朗読劇での絶叫に備えて、意図的に増やしたのです。

朗読劇を行うメンバーたちと 写真提供/津久井教生

そしてちょっと体の異変を感じていた私はこうも考えました。毎年重度の花粉症で苦しむ私は、その時期に食が細くなって体重が減少する傾向にあります。それは避けたいと。しっかりと舞台の稽古をしながら、声を出しながら動きながら体を作っていき、体重を増やそうと。なんだか格闘家のようですが、自分で悦に入っていたのでした。

スタジオに向かう途中で突然転んでしまったのもこの頃でしたが、「新しいブーツが合わないのかな」に加えて「ちょっと体重増やしすぎちゃったかな」なんて思っていたくらいです。ALSの初期症状とは気がつかず、良い感じで朗読劇やライブをこなしながらも、花粉症などの影響もあって例年通り体重は62キロ台になりました。

そのまま5月の仕事も、ちょっとした司会などのイベントも順調にこなしていきました。6月も声出し中心の仕事でビジュアル的なものはなかったので、体重を維持しようとしていたところ「教生さん、痩せました?夏に向けてのダイエットですか?」と言われ始めました。あれっそうかな?と思って体重をはかってみると、3キロ減。60キロを割って59キロ台になっていました。何もしていないのになぜ痩せるのだろうと思いました。

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