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2026年05月21日 AM09:10
北海道大学は4月13日、口腔ケア製品に広く用いられる殺菌成分セチルピリジニウム塩化物水和物(CPC)の臨床的抗ウイルス効果を検証したと発表した。この研究は、同大大学院歯学研究院の樋田京子教授、間石奈湖助教(研究当時)、同大大学院歯学院博士課程(研究当時)の武田 遼氏、同大総合イノベーション創発機構ワクチン研究開発拠点の澤洋文教授、同大人獣共通感染症国際共同研究所の大場靖子教授、佐々木道仁准教授、藤田医科大学の樋田泰浩教授らの研究グループによるもので、札幌市保健福祉局の秋野憲一氏、水田むつみ氏らの協力のもと実施された。研究成果は、「Journal of Oral Biosciences」にオンライン掲載されている。

画像はリリースより
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世界的に未曾有のパンデミックをもたらした新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はワクチンや治療薬が普及した現在も完全制圧に至っておらず、医療逼迫や社会経済活動の停滞を引き起こすなど社会問題となっている。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、感染に重要な役割を持つアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)、膜貫通型セリンプロテアーゼ(TMPRSS)を発現する口腔粘膜や唾液腺の上皮細胞に感染し、口腔内で複製され、ウイルスが唾液中に放出されると考えられている。このように、SARS-CoV-2は、会話、咳、くしゃみなどにより飛沫感染することが報告されており、その感染・伝播には口腔が重要な役割を担っている。
また、SARS-CoV-2が飛沫やエアロゾルを介して感染すると、肺胞上皮細胞に感染・複製され、肺胞障害を引き起こすとされ、SARS-CoV-2を含む唾液の飛沫の吸い込みとCOVID-19重症化の関係も報告されている。したがって、SARS-CoV-2の感染・重症化予防には、口腔内ウイルス量を減弱させることが重要である。
CPC使用による唾液中SARS-CoV-2のRNA量および感染性の評価
セチルピリジニウム塩化物水和物(CPC)は市販の洗口液やスプレー等に殺菌成分として含まれ、広く普及している。CPC は無味無臭に近いため、ポビドンヨードやクロルヘキシジン等に比べて、適用が広く、製剤に利用しやすいというメリットがある。これまで、CPCは低濃度でもSARS-CoV-2の抑制効果を示すことを報告してきたが、臨床での有効性は十分に検証されていなかった。研究グループは、札幌市の協力を得てCPC製剤(トローチ、含嗽剤)使用前後のSARS-CoV-2感染者の唾液を解析し効果を検証した。
研究は、以下の手順で行った。
1)COVID-19患者34例を対象に、以下の7時点で唾液を採取した。
T1:起床時
T2:CPCトローチ使用後
(この間に食事、歯磨き)
T3:CPC 洗口液使用直後
T4–T7:CPC 洗口液使用30分後、1時間後、2時間後、3時間後
2)唾液中のウイルスRNA量(qRT-PCR)及び一部感染性(プラークアッセイ)を評価した。
CPCトローチでSARS-CoV-2のウイルス量と感染力が有意に低下
CPCトローチの使用により、COVID-19患者の唾液中に含まれるSARS-CoV-2のウイルスRNA 量は有意に低下した。さらに、ウイルスの感染性についても減少が確認され、CPC トローチが唾液中のウイルス量だけでなく感染力にも影響を与える可能性が示された。一方、CPC含有洗口液の使用では、ウイルスRNA量に有意な変化は認められなかった。
「今回の研究により、CPCトローチは口腔内のSARS-CoV-2量及び感染性を一時的に低減させる可能性が示され、対面での会話や医療現場、公共空間などにおける感染拡大リスクの低減に寄与する新たな手段となり得ることが示唆された」と、研究グループは述べている。今後、より長時間効果が持続する徐放性製剤の開発や、大規模な臨床試験による有効性の検証が進めば、口腔ケアを基盤とした感染対策の一環としての実用化が期待される。(QLifePro編集部)
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