人生の教科書にしたい名著を集めて。モチベーションがアップするコミックガイド

(全9枚)

働く女性に寄り添ってくれる8作品を厳選。いまの自分にフィットする一冊に、きっと出合えるはず。

背中を押してくれるマンガという処方箋

「どの作品も自分の中にインストールされていて、何度も脳内で反芻してきた“人生の教科書”のような存在です」と語るのは、選者であり、マンガ研究者のトミヤマユキコさん。単なるエンタメにとどまらず、心や行動に変化をもたらしてくれるのが、マンガの大きな魅力だそう。

「“他人事”として始まったストーリーが、いつの間にか“自分事”になっていく。その接続がシームレスな作品ほど、登場人物の思考や感情が自分の人生と自然にリンクしていき、結果としてスキルアップにつながったり、心が元気になったりします。読み手には、マンガにやさしくほぐされたい“マッサージ”派と、ビシビシ鍛えられたい“筋トレ”派がいるのかなと思います。アプローチは違いますが、どちらも読者に前向きな変化をもたらしてくれるはずです」

とにかくやる気を出したいときに『起承転転』雁須磨子いくつになっても新しい出会いがあり、新しい自分に出会える!

東京での役者業に区切りをつけ、独身・無職で地元に戻った主人公・葉子。新たな場所での出会いや周囲との交流を通じ、人生を再スタートさせていく。「売れない役者をやめ、32年いた東京から故郷の福岡に戻る50代女性の話なので、読んでいて気落ちするかと思いきや、“女の人生、50代からでもなんとかなりそうだぞ”と、じわじわ勇気が湧いてきます」。1巻 \1,320/太田出版

『はいからさんが通る 新装版』大和和紀職業婦人として自立していくヒロインの姿に励まされる。

大正時代を舞台に、明るく自由奔放な17歳の女学生・花村紅緒と、許婚の伊集院忍が繰り広げる波瀾万丈の物語。「恋愛マンガのイメージが強い作品ですが、婚約者の伊集院忍が亡くなったと聞かされたヒロインの紅緒が、その知らせを信じず、ひとりで伊集院家を守っていくと決めてからの就活エピソード(まるでスポ根!)を見ていると、とても勇気づけられます」。全8巻各 \605/講談社

これから進むべき道に迷ったときに 『後ハッピーマニア』安野モヨコ仕事、結婚、不倫、離婚…。女の人生、ハッピーはどこに?

’90年代の恋愛漫画の金字塔『ハッピー・マニア』の続編。40代になった主人公のカヨコが夫・タカハシから離婚を切り出され…。「女の人生、こうすれば正解ということはなく、その寄る辺なさといかに共存していくかを示してくれる。ゲラゲラ笑っている時間がかなり長いのに、なぜか最後は、長いものに巻かれずに生きるぞと心に誓いたくなる…本当に不思議な作品です」。全6巻 \990〜/祥伝社

『林檎の国のジョナ』松虫あられ生きづらさを抱える現代人に刺さる、癒しと再生の物語

息苦しい毎日を送っていたアリスが、すべてをリセットして祖母の家に身を寄せることに。「東京でアパレル店員として働いていたアリスが、いろいろあって仕事を辞め、祖母の家がある青森で、ひょんなことから支援クラスの先生に。山あり谷ありの人生、偶然に身を委ねつつ、よりよい居場所を探すアリスの生き方や働き方もアリなんじゃないかと思わせてくれます」。1〜2巻各 \770/双葉社

知識欲を満たしたいときに『本なら売るほど』児島青本の価値や流通など、本の裏側が見えてくる教養マンガ

街の古本屋「十月堂」を舞台に、本をめぐるさまざまな人々の物語が描かれる。「研究者をやっているので、古書店は本当にありがたい存在なのですが、知らないことが結構あるんですよね。第1巻の時点で、“本をこよなく愛する人間がやるほっこり商売”みたいな薄っぺらいイメージを思いきり壊してくれて、これは信用できるマンガだ…!となりました」。1〜2巻 \792〜/KADOKAWA

『東東京区区』かつしかけいた下町の実情と歴史を探索する地元発見冒険譚

サラ、セラム、春太というそれぞれルーツも年齢も異なる3人が東東京を歩き、新たな街の魅力を見つける。「マンガ版“ブラタモリ”とでも呼びたい教養マンガ。気軽に読めるお散歩マンガでありつつ、土地とそこに住まう人々の歴史を多角的に知ることができます。本作を読んだ後は、自分が暮らしたり働いたりしている街を見る目がきっと変わるでしょう」。1巻 \1,210(電子書籍)/リイド社

少し休んでまた明日から頑張りたいときに『とびだせ!つづ井さん』つづ井自由に生きる主人公の日々にくすっと笑えて元気がもらえる

地方の実家を出て、東京で一人暮らしを始めるつづ井さんの新生活を描いたエッセイマンガ。「お仕事を通じてつづ井さんと知り合う機会に恵まれたのですが、本当にマンガのまんま、嘘がない方で、ますます好きにならざるを得ない状況です!人生の中で無理なく楽しみを見つける方法をそっと示し続ける彼女のマンガは、いま少ししんどい人をもやさしく包摂するものだと思います」。1〜3巻各 \1,210/文藝春秋

『孤独のグルメ』原作・久住昌之 作画・谷口ジローひとり飯の至福からハズレまで。ときに哀愁も漂う、リアルが魅力

輸入雑貨商の井之頭五郎が、仕事の合間に立ち寄った街で自由に食事を楽しむ様子を描いた、ドラマ化もされた人気作。「原作だとごはんに失敗している回も結構あって、それがたまらなくいいんですよ。ハズレ回でしか吸収できない心の養分がある(笑)。たとえハズレでも、またお腹は減りますし、新しい店との出合いもあるわけで。ふっと心が底上げされるような効果を感じています」。全2巻 \715〜/扶桑社文庫ひとり飯の至福からハズレまで。ときに哀愁も漂う、リアルが魅力。

教えてくれた方トミヤマユキコさん

マンガ研究者、ライター。日本のマンガや文芸について執筆するかたわら、大学ではマンガ研究者として調査、研究している。著書『「ツレ」がいるから強くなれる!バディ入門』(大和書房)が発売中。

写真・田尻陽子 取材、文・岡井美絹子

anan 2492号(2026年4月15日発売)より

WACOCA: People, Life, Style.