重度のうつ病治療に、新たな選択肢が生まれようとしている。ブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)を開発するMotif Neurotechは4月27日(米国時間)、頭蓋骨に埋め込むブルーベリー大の脳インプラントについて、米食品医薬品局(FDA)から、初の臨床試験実施に向けた承認(IDE)を取得したと発表した。電気刺激で症状の改善を目指す。

2022年に創業したヒューストン拠点のスタートアップMotif Neurotechは、脳信号の読み取りと解釈に挑むBCIスタートアップだ。ニューラリンク、ParadromicsSynchronなど同分野の企業が、まひのある人々の意思疎通やコンピューター操作を支援する機器を開発する一方で、Motif Neurotechが目指すのは、薬物治療で十分な効果が得られなかったうつ病患者への新たな治療法だ。

Motif Neurotechのインプラントは、脳を覆う保護膜である硬膜のすぐ上、頭蓋骨内に埋め込まれる。標的となるのは、高次認知機能を担う脳内ネットワーク「中央実行系ネットワーク(CEN)」で、重度うつ病では低活動状態になるとされる。このインプラントはCENに特定の刺激パターンを送り、CENの活性化を促す。

こうした脳刺激治療を病院ではなく、自宅で受けられるようにするのがMotif Neurotechの狙いだ。共同創業者で最高経営責任者(CEO)のジェイコブ・ロビンソンは、「頻繁な電気刺激によって神経可塑性を引き出し、うつ病患者のCENのつながりを強められると考えています」と語る。「その結果、朝ベッドから起き上がり、友人に連絡し、ジムへ向かう。そんな当たり前の日常を、再び取り戻せるかもしれません」

Motif's blueberrysized stimulator device is designed to turn on the brain's central executive network which is under...

Courtesy of Motif

電気刺激治療の変遷

うつ病治療に電気刺激を用いる試み自体は、目新しいものではない。Motif Neurotechのアプローチは、その最新形にすぎない。1930年代に始まった電気けいれん療法(ECT)は、抗うつ薬で効果が得られない患者に対し、いまも使われている。

脳内に電極を埋め込む深部脳刺激療法(DBS)も実験的に用いられることはあるが、米食品医薬品局(FDA)の承認は受けていない。より穏やかな刺激法として知られる経頭蓋磁気刺激法(TMS)は2008年に承認された。高い効果が期待できる一方、一般には週5回の治療を6週間続けるなど、長い通院スケジュールが必要になる。

2021年の研究によると、米国では12カ月間に約900万人の成人が重度うつ病の治療を受けていた。そのうち約300万人は、少なくとも2種類、多くはそれ以上の抗うつ薬を試しても症状が改善しない「治療抵抗性うつ病(TRD)」に該当するとされた。

帽子型デバイスで受ける在宅治療

Motif Neurotechの装置は、脳外科手術を必要とせず、20分ほどの外来処置で埋め込むことができる。ライス大学在学中にロビンソンが開発したワイヤレス磁気電気技術で駆動し、刺激を受ける際に患者がかぶる帽子型デバイスで充電される。

この外部デバイスに組み込まれた部品は、患者ごとに処方された刺激量のデータをインプラントへ送信し、あらかじめ設定された治療を受けられるようにする。ロビンソンによると、少なくとも治療初期には、患者はこの帽子を1回10〜20分ほど、1日のうちに数回装着することになるという。

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