2025年現在、小学校一年生のご長男をはじめ3人のお子さんを子育て中の女優・菊川怜さん。公立小学校から中学受験を経験し、難関私立中高一貫校、東京大学に進学した菊川さんですが、ご自身のお子さんたちの進路についてはどう考えているのでしょうか。ご自身の経歴を振り返りながら、現代の子どもたちの教育について思うことを伺いました。


疑問も持たずに、敷かれたレールの上を歩いてきた

――この春ご長男も小学校に入学され、これから進路や将来について考えることも増えてくると思います。

自分が親になってから初めて、気がついたことがたくさんありました。私はつくづく、「敷かれたレールの上を、何の疑問も持たずに進んできたんだな」って感じます。それは、決して、悪い意味ではなくて。疑問や不満を感じる隙もないほど、与えられた環境に恵まれていた、ということです。

一方で、私はずっと「勉強をすること」自体を目的として走り続けてきたので、大学入学後に初めて「あれ、私ってどんな仕事がしたいんだろう? 何が一番好きなんだっけ?」と立ち止まったわけです。そんな時に、たまたま芸能のお仕事と縁があって。芸能界に入ってからもお仕事や人間関係に恵まれてきたので、振り返るとこれまであまり凸凹とした道を通ってこなかったんだな、と思います。

――ご両親が菊川さんに対して、進路や将来をアドバイスしてきたことはなかったのでしょうか。

自然の中で能天気に育ってきた幼少期だったのですが、母親と一緒に家庭学習とピアノだけはやっていました。これは、大人になってから初めて母に聞いたのですが、私がピアノにハマれば、音楽の道も考えていたみたいです。

後から「ピアノで音楽の学校に行かせるのもいいかなと思っていたのよ」と聞かされて驚きました。小さな頃、そんなふうに「やらされていた」という感覚が全くなかったので。

勉強も、隣についてみっちり厳しく鍛えられた、というようなことはなくて。私が勉強好きで、進んで取り組める子だなと感じたから、きっとここまでの道を用意してくれたんだと思います。子どもからは見えない部分で種を蒔きながら、強制することなく、上手に誘導してくれていたんだな、と感じます。


大事なのは、子ども自身が好きなことなのか、やりたいことなのか

――学校や習い事、現代の子どもたちにはたくさんの選択肢があって、何をするのか迷うこともありますよね。

本当にそうですよね。学校も多様化していますし、習い事もたくさんの魅力的な選択肢があるので、あれもこれも子どもたちのためになるのではないかと、ついつい欲張りたくなります。今の時代は情報も多いし、新しいものが次々出てきますから、それについていくのも必死です。

でも、忘れちゃいけないのは、子ども自身が好きなことなのか、やりたいことなのか。大人はどうしても先のことばかりを見て、多くを与えてしまいたくなりますけど、子どもにとったら目の前のことに興味が持てるか、楽しいと思えるかがいちばん重要なんですよね。

あとは、結局子どもがどうなるかっていうのは誰にもわからない。子育ては本当に正解がないものだと思っていて。たくさん習い事をさせてあげるのも素晴らしいことだけれど、何にもやらないのも、それはそれでいいかもしれないじゃないですか。もしかしたら「お母さんが忙しくってどこにも連れて行ってくれなかったから、自分で工夫して遊んで独創力と想像力がついて、大きな発見をした」とかいうことが、あるかもしれないし。

――目的地を先の方に置くのではなく、目の前の「好き」や「興味」に寄り添いながら子ども主体で進む道を考えるということですね。

我が家のことでいえば、3人のきょうだいの興味や関心、成長ペースはそれぞれ。性格も得意なことも違うので、個性や相性を考えながら、本人が好きなものに取り組ませてあげたいなと思っています。

あとは、「やってみたらその子に合わなかった」っていう場合もあると、距離を保って考えられるようにしないとなって。どんな習い事や塾、どんな先生が子どもに合うだろうと一生懸命に探してきて、お金を払ったり送り迎えしたりお弁当を作ったり、そういう目に見えない部分のサポートや調整って、すごく大変なことですよね。でも、だからといって成果や継続を求めて期待しすぎてしまうと、親子ともにしんどくなってしまう。

あまり肩肘張らず、自分にも子どもにも無理のない範囲で、今できることをやらせてあげたいなと思っています。


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自分が通ってきた道を積極的に勧めるようなことはしない


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