出所:共同通信イメージズ出所:共同通信イメージズ

 EVの普及とともに、自動車メーカーが保険事業に参入する動きが広がっている。中国EV大手の比亜迪(BYD)が2025年に保険事業を本格展開するなど、メーカーと保険の関係は変わりつつある。こうした潮流の先駆けとして米テスラの自動車保険に注目するのが、2025年12月に著書『AIで拡張する社会: 「知性」「労働」「経済」の未来予想図』(東洋経済新報社)を出版した、野村総合研究所未来創発センター未来社会・経済研究室長の森健氏だ。テスラの事例から見える新たな経済原理や、AI時代の競争を左右する概念「深さの経済」について同氏に聞いた。

人員削減にとどまらない「AI時代のリスキリング戦略」

──著書『AIで拡張する社会 「知性」「労働」「経済」の未来予想図』では、AIによる雇用への影響について論じています。英国の大手通信企業BTやスウェーデンの家具大手IKEAでは一部業務の「AIへの移行」を公表しているとのことですが、具体的にどのような取り組みを進めているのでしょうか。

森健氏(以下敬称略) BTは2030年までに約5万5000人規模の人員削減を計画し、その一部をAIや自動化に置き換える方針を示しています。

 ただし、すでに進んでいる人員減少が全てAIによるものか、構造改革によるものかは現時点では判然としていません。AI導入が雇用に与える実際の影響を見極める上でも、今後の動向を注視する必要があります。

 一方でIKEAの取り組みはより象徴的です。同社では顧客対応の約半分をAIチャットボットが担うようになり、その結果、コールセンターの人員をインテリアデザインなど付加価値の高い業務へと再配置しています。これが収益にも寄与し始めています。

──AI活用は単なる人員削減ではなく、人材の再配置による価値創出と捉えるべき、ということですね。

森 そうですね。AIでコストを削減すること自体が目的ではなく、定型業務をAIに任せることで人的リソースを創造的な領域に振り向け、その結果として新たな価値や収益機会を生み出すことが重要です。IKEAはその方向性を明確に示している事例だと思います。

WACOCA: People, Life, Style.