
AIのイメージ。2025年1月撮影。REUTERS/Dado Ruvic
[ワシントン 20日 ロイター] – 「人工知能(AI)か死か」――。それは先週、国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事が米首都ワシントンで開催されたIMFと世界銀行の春季会合のパネルディスカッションで語った言葉だ。ゲオルギエワ氏はAIがもたらす変革の力を巡って世界中の企業、産業、経済が直面している課題に対する認識をこう表現した。
同氏の発言は株式市場にも当てはまる。
米国のビッグテック株は第1・四半期に大きく動揺し、価格の再評価に見舞われたが、ここ3週間で猛烈な回復を見せている。AIの生産性ブームに対する市場の確信は、かつてないほど強まっているようだ。
しかしながら、この回復は極めて不均衡であり、わずか一握りのビッグテック企業によってけん引されている。実際、チャールズ・シュワブのリズ・アン・ソンダース氏によると、52週ぶりの高値水準で取引されているS&P総合500種の構成銘柄は全体の10%未満に過ぎない。
S&P総合500種のハイテク(情報技術)セクターの時価総額は現在、指数全体の約35%を占め、昨年10月に記録した過去最高の36%に迫っている。情報技術と通信サービスを合わせたセクターの時価総額は昨年10月の過去最高の46%まであと1ポイント足らずとなった。
そのため集中リスクが突然、再び議論の的となっている。
天井知らずのAIを巡る楽観的心理が少しでも下向きに転じれば、市場全体にとてつもない影響を及ぼす可能性があるだろう。そして、世界のエネルギー価格が過去5年間で最大の上昇幅となっている状況で、今や極めてエネルギー集約型のセクターとなったビッグテックに対する超強気の収益見通しが暗転し得るのではないかという懸念がある。

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<電力需要の拡大>
BNPパリバのエコノミストらは、AIが今後数年間にわたってネガティブなショックを全て「余裕で」打ち消すと見ている。しかし短期的に、つまり今年と来年は、ネガティブなショックの方がより重みを増す可能性が高いという。
「もしも現在公表されている(AIに対する)設備投資の計画が完全に実行されれば、電力価格が大幅に上昇しAI導入に伴うプラスの生産性効果を損なってしまう可能性があるだろう」と彼らは先週報告した。
エネルギー需要側の数字もまた驚異的だ。
モルガン・スタンレーのエネルギーアナリストチームは昨年11月、2028年までの米国のデータセンター総電力需要を69ギガワット(GW)と推定し、44GWが不足する可能性があると警告した。同チームは現在、その需要が80GWに達し、潜在的な不足分は55GWに拡大すると見ている。参考までに、10GWは中規模の原子力発電所10基分が生産できる電力量に相当する。
AI主導のエネルギー需要が拡大し供給が制約される状況で、ビッグテックが負担しなければならないコストは疑いなく想定以上に高くなる。こうした事情は市場がハイパースケーラーに対して期待している膨大な利益を食いつぶす可能性があるだろう。
あるいは、S&Pグローバル・ビジブル・アルファのリサーチ責任者のメリッサ・オットー氏が先月ロイターに語ったように、こうした事情がビッグテックの設備投資計画を完全に妨げる可能性さえもあるだろう。
「もしも設備投資額が縮小されたり、エネルギー価格の上昇が実際に収益に反映されていなかったりすれば、それが株式市場の調整をもたらすきっかけになると思う」とオットー氏は述べた。
それでもエネルギー価格の急騰は結局、AIという絶対的な力が突き進むにつれてすぐに忘れ去られるような短期的な懸念となるかもしれない。また、地政学的な緊張が高まれば、ビッグテックは実際に恩恵を受ける可能性もあるだろう。世界秩序の分断化はAI軍拡競争をひたすら過熱させるだけだからだ。
さらに、もしJPモルガンのニコラオス・パニギルツォグル氏の見方が正しく、投資家がベンチマークとなるハイテク・セクターの上場投資信託(ETF)「QQQ」の売り持ちを大量に保有しているならば、AIトレードが短期的にさらに加速する余地さえあるのだ。
「AIか死か」という言葉はたぶん今後数年間、投資家たちのモットーになるだろうし、それには十分な理由がある。しかし、もしもエネルギー価格高止まりがさらに長期化すれば、この革命、そして株式市場は期待されているほど速く前進しないかもしれない。
(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。


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